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中野 ひろし ブログ

地域の伝統芸能と観光ガイドの可能性

2026/5/29

全国若手市議会議員の会OB会研修
地域の伝統芸能と観光ガイドの可能性

 

全国若手市議会議員の会OB会の研修で、大分県宇佐市を訪問しました。

今回の研修では、地域の伝統芸能を観光に活用する取り組みと、これからの観光ガイドに求められる役割について学びました。


 

講師は、地域の伝統芸能を継承しながら、観光を通じた地域活性化に取り組んでおられる小野氏です。

小野氏は、観光協会での経験を経て、2020年10月に「フィールプロダクトカンパニー」を設立されました。新型コロナウイルス感染症の影響で観光業が大きな打撃を受けていた時期に、あえて観光を通じた地域づくりへ踏み出されたとのことです。

地域の文化資源や生活そのものを観光コンテンツに転換し、地方から発信していく。その姿勢に、大きな刺激を受けました。


 

特に印象に残ったのは、観光ガイドの位置づけです。

これからの観光ガイドは、名所旧跡を説明するだけの存在ではありません。

地域の歴史、文化、食、交通、人、行政、事業者、そして来訪者をつなぐ存在です。

講演のスライドでは、観光ガイドを地域観光の中心に置き、交通、人、食、歴史という4つの分野をつなぐ役割が示されていました。
 

交通でいえば、町並みや生活、旅行会社。
人でいえば、地域、行政、有識者。
食でいえば、特産物、土産、郷土料理。
歴史でいえば、まつり、文化、自然、景観。
 

これらを別々の観光資源として見せるのではなく、地域全体の物語として結び直す。

そこに観光ガイドの本当の役割があります。
 

小野氏は、観光ガイドを「観光ストラクチュアルホール」と表現されていました。地域と来訪者、行政、事業者、文化資源をつなぐ結節点という意味です。

観光で地域課題を解決しようとするなら、観光ガイドが人と人のネットワークをつくれなければ、観光戦略そのものに大きな欠陥が生じる。

この言葉は、現役ガイドとして非常に重く受け止めました。

 

私自身、おおず歴史華回廊案内人倶楽部の副会長として、また現役のガイドとして、大洲の町並みや歴史、文化をご案内する活動に関わっています。

大洲には、大洲城、肱川、臥龍山荘、盤泉荘、古い町並み、商家、寺社、郷土料理、祭り、そして地域の暮らしがあります。

どれも大切な地域資源です。

しかし、それらを一つひとつ紹介するだけでは、大洲の本当の魅力は伝わりません。

 

なぜこの場所に城下町が形成されたのか。
なぜこの町並みが残っているのか。
肱川の流れは、暮らしや産業にどう関わってきたのか。
地域の人々は、何を守り、何を次の世代へつないできたのか。

 

こうした背景を言葉にして初めて、来訪者にとって大洲の風景は「見た場所」から「記憶に残る場所」へ変わります。

今回の研修で、ガイドの仕事は説明ではなく、地域の価値を翻訳することだと改めて感じました。


 

講演では、宇佐の神楽を活用した高付加価値の旅行商品についても紹介がありました。

外国人富裕層向けに、宇佐の神楽を深く体験する6泊7日の旅行商品を造成し、参加者が神楽の所作を学び、実際に地域の神社で奉納するという内容です。

単なる見学ではありません。

稽古を重ね、食事制限も含めて神楽に向き合い、地域の祈りの文化に深く入っていく体験です。


 

観光客として外から眺めるのではなく、地域文化の内側に入る。

この発想は、これからの観光を考える上で非常に重要です。

 

大洲市にも、これに通じる取り組みがあります。

それが、大洲城の城泊事業です。

大洲城に宿泊するという体験は、単に珍しい場所に泊まるということではありません。

城下町の歴史、肱川とともに発展してきた地域の成り立ち、木造復元天守を支えてきた市民の思い、歴史的町並みの保存と活用、そして地域の食や文化を一体として体験していただく取り組みです。

私は、大洲城の城泊事業は、文化財を「保存するだけ」の時代から、「守りながら活かす」時代へ進む象徴的な事業だと考えています。

 

もちろん、文化財の活用には慎重さも必要です。

歴史的価値や地域の誇りを損なうような使い方であってはなりません。観光客に消費されるだけのコンテンツにしてしまえば、地域に本当の意味での価値は残りません。

だからこそ、文化財を活用する観光では、地域の歴史を正しく伝え、来訪者と地域をつなぐガイドの役割がますます重要になります。

 

大洲城に泊まる。
大洲の町を歩く。
肱川の流れを眺める。
臥龍山荘や盤泉荘に込められた美意識に触れる。
古い町並みの中で、地域の暮らしや商いの歴史を感じる。


 

これらが一つの物語としてつながったとき、大洲での滞在は単なる観光ではなく、地域文化に触れる深い体験になります。

宇佐の神楽体験と大洲城の城泊事業は、形は違います。

しかし、根底にある考え方は共通しています。

 

地域に長く受け継がれてきた文化や歴史を、ただ見せるのではなく、来訪者に深く体験してもらうこと。

そして、その体験を通じて、地域の価値を守り、次の世代へつないでいくことです。

地域の伝統芸能や祭り、祈りの文化、歴史的建造物は、単に外部から人を呼び込むための素材ではありません。

地域の人々が長い時間をかけて守ってきたものです。

 

だからこそ、観光に活用する場合にも、消費されるだけで終わらせてはいけません。地域の誇りを守り、担い手を支え、次の世代へつないでいく仕組みにしなければなりません。

 

大洲の歴史や文化は、観光客に見てもらうためだけのものではありません。

市民自身が地域の価値を再認識し、子どもたちに伝え、地域の未来を考えるための土台でもあります。

観光は、外から人を呼び込む取り組みであると同時に、地域の内側にある価値を見つめ直す機会でもあります。


 

宇佐神宮についての説明も、非常に興味深いものでした。

宇佐神宮は、単なる地域の大きな神社ではなく、日本の国家形成や歴史と深く関わってきた神宮として紹介されました。

 

725年に一之御殿が造営され、2025年に1300年の節目を迎えたこと。八幡信仰の始まり、日本書紀、大化の改新、遣隋使、古事記、平城京など、日本の歴史の流れと重ねながら説明を聞くことで、宇佐神宮の意味が立体的に見えてきました。

 

同じ場所を訪れても、背景を知っているかどうかで見え方はまったく変わります。

建物を見るのか。
歴史を感じるのか。
地域の祈りや営みまで受け止めるのか。

 

その違いを生み出すのが、ガイドの力です。

 

今回の研修を通じて、観光ガイドは単なる案内役ではなく、地域の価値を編集し、来訪者に伝え、人と人、資源と資源をつなぐ存在であることを再確認しました。

 

大洲市でも、観光振興、文化財活用、歴史的町並みの保存、インバウンド対応、関係人口の拡大など、取り組むべき課題は数多くあります。

大洲城の城泊事業は、そうした課題に向き合う中で生まれた、全国に誇れる文化財活用の取り組みです。

ただし、事業そのものが注目されるだけでは十分ではありません。
 

大切なのは、その背景にある大洲の歴史、文化、町並み、市民の思いを、どう伝えていくかです。

その中で、現場で地域を案内するガイドの役割は、今後ますます重要になります。

 

大洲には、大洲にしかない歴史、文化、景観、暮らしがあります。

その価値を、誰かが見つけてくれるのを待つのではなく、私たち自身が言葉にし、物語として伝え、次の世代へつないでいく。

それが、これからの大洲観光に必要な視点だと感じています。
 

私自身も、おおず歴史華回廊案内人倶楽部の副会長として、そして大洲市議会議員として、今回の学びを今後の観光振興、文化財活用、地域づくりに活かしていきます。
 

観光は、地域を外へ開く窓であり、同時に地域の価値を見つめ直す鏡でもあります。

今回の研修は、現役ガイドとしての自分の活動を見つめ直す、貴重な機会となりました。


 

関係者各位に心より感謝申し上げます!


 

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著者

中野 ひろし

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肩書 大洲市議会議員 現職です
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