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川崎市が小児医療費の助成を18歳まで拡大し無償化することは良いことなのか?

2025/9/17

表題について最初に結論を言えば、良いとは思いません。税金が効率的に使われなくなり、市や市民全体の負担が、必要以上に増えることが予想されるからです。子供向けの福祉施策は必要とは思いますが、受益者負担があるのとないのとでは大きく違ってきます。小児医療費の負担軽減が悪いと言っているのではなく、受益者負担分をゼロにするのがまずいのです。

念頭にあるのは、去る8月25日の定例会見で福田紀彦市長が、来年9月から18歳までの保険診療の医療費の自己負担分を無償化する方針を示したことです。現在の、通院1回当たり500円の負担金もなくすとしています。

ご承知のとおり、「無償化」と言っても天からお金が降ってくるわけではないので、働いている人の財布からお金を抜いて、それを財源とするわけです。つまり、誰かの負担を誰かに移したということになります。

子供のいる家庭を支援できれば、少子化対策になってよいではないか、そのための負担は構わないだろうという考えもあるでしょう。ただ、それは本当に子供のいる家庭が純粋な受益者となるという前提があってのことです。

直接の受益者は医療機関です。働く人の財布から抜き取ったお金をお医者さんに渡すことで、子供のいる家庭が間接的な受益者となります。文字通り、負担の付け替えで済むなら問題ありません。

しかし、実際は医療費全体が増えることが予想されます。自己負担分がなくなれば、確実に医療機関を受診する人が増えるからです。

川崎市では2023年9月に通院医療費の助成対象年齢を小学校6年生までから中学校3年生までに拡大しました。令和6年事務事業評価シートから対象者の増加と全体費用の増加を見ることができます。制度拡充前後の2022年度と2024年度を比べると、対象者は11万8148人から18万3005人に増えました。それに対して事業の決算額は42億6382万3000円から66億9314万9000円に増えました。対象者も決算額も50%程度の伸びなので、1人当たり費用は大きくは変わっていません。

この時は助成対象年齢の拡大だけで、無償化ということはありませんでした。私が懸念するのは、自己負担分がなくなることで、対象者1人あたりの費用も大幅に増加するのではないかということです。

2023年10月に同様の施策を行った鎌倉市の助成件数のデータがあります。これはほぼ受診数に対応しているはずです。無償化実施前のR4年度には256,056件、実施後のR6年度には394,725件という数値が出ています。

鎌倉市のウェブサイトからは一人あたりの受診数というデータは見つからないのですが、鎌倉市の年齢別人口からおおよそ推計することができます。計算してみると、R4年度では対象である15歳までの子供1人あたりの受診数が9.86件、R6年度では18歳までの子供1人あたりの受診数が12.91件というデータが出てきます。つまり、1人あたりの受診数が3割ほど増えているのです。受診者数はインフルエンザの流行などの要因でも変動するので、2年分だけのサンプルでこれが無償化の影響だと断定することはできませんが、川崎市でもこれだけの増加はあり得るということです。

このことは、小児医療費全体の増加につながります。その負担の財源は突き詰めれば働いている人の財布の中からです。子供がいる家庭の多くは働いている人がいるので、そこに負担が向かうでしょう。

いくらか費用がかかっていたものが、0円になることで、子供を病院に連れて行く心理的ハードルは一気に下がります。従来なら市販の薬などで治療していた軽い病気やけがでも、子供を病院に連れて行く人が出てくる結果、小児医療機関は混雑します。

このことが、果たして子供がいる家庭にとっても恩恵と言えるのかどうかです。よく言われることですが、無償化は決して無償ではありません。税金を使う以上は、巡り巡ってあなたを含むどこかの誰かが負担を肩代わりしています。

心理的ハードルなしに子供を医療機関を受診させることができるのが市民のメリットなわけですが、それにより予想される少子化の歯止めや、子供の健康は、費用に見合ったものになるのでしょうか?

確実に言えるのは、市と市民全体の負担は増えます。お医者さんは儲かります。小児医療費の無償化を実施していない横浜市から川崎市に移ってくるお医者さんが出てくるかもしれません。そして、横浜市も川崎市に追随せざるを得なくなるでしょう。

このような自治体間の競争には歯止めをかけるべきではないかと思います。福田市長は子供や家庭向けの施策は頑張っているとは思いますが、施策は持続可能なものでなくてはなりません。

とはいえ、9月議会で条例を通すそうなので、市長選挙が行われる頃にはもう決まっているということになります。一度決まったものでも撤回させるべきなのか、あるいは始めたところで税負担の増加が予想以上なら中断することに含みを持たせるのか。いずれにしても、一度決まったことをやめるのは不可能ではないですがとても難しいので、悩ましいところです。

私の懸念が外れるに越したことはありません。

寄附・ご連絡は https://tatsuhiko.miya.be/ からお願いします。

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著者

宮部 龍彦

宮部 龍彦

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川崎市

肩書 IT技術者 / 示現舎編集長
党派・会派 事務事業評価で税金の使い道を正す党
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