上野 がく ブログ

【4案レビュー】2024年9月1日鎌倉市役所新庁舎の基本設計プレゼンテーション(速報版)

2024/9/11

1 はじめに

2024年9月1日に鎌倉市役所新庁舎の基本設計の委託先を決めるため、4チームによるプレゼンテーションが実施されました。上野がくは聴きに行くつもりだったのですが、台風10号(サンサン)の影響により、公開は取りやめとなってしましました。その後、鎌倉市役所ホームページでプレゼンテーションの動画(速報版)が公開されました。そこで、このブログでは、上野がくが重要だと思う観点を中心に4つの提案内容を紹介していきます。なお、残念ながら動画では、各チームが用意してきたスライド映像がよく見えないため、設計が分からなかった部分があります。また、提案概要書にデザインが描かれているのですが、鎌倉市に権利がないということで、市民はインターネット上に公開することができません。それでもイメージを持ってもらいたくて、提案概要書を基に、上野なりにがんばって外観を描いてみました。参考になれば幸いです。

 

2 上野がくの重要ポイント

(1)職員の執務スペースが十分に確保されていること:現庁舎は執務スペースが狭いということが移転の一つの理由になっています。職員が仕事をしやすい環境をつくることが、市民サービスの向上に繋がるのです。

(2)市民が市役所に相談に行った際に、プライバシーを守って相談できるスペースが十分に確保されていること:今回の提案概要書では、市民の相談に対して、画面越しでの対応やロビーの開かれた場所で対応をすることを想定している提案があります。市役所は市民が困って最後に行く場ですので、対面であってこそ、市民の不安や悲しみを伝えることができます。

 

3 公募型提案実施の目的

新庁舎等の整備に向けて、デジタルトランスフ ォーメーション(デジタル化による変革等をいい、以下「DX」という。)等を踏まえた新庁舎等のあり方を具体的に検討するとともに、基本設計を実施するに当たって、豊かな創造性、 高い技術力及び豊富な知見・実績等を有する事業者を選定することを目的とします。 委託業務は、「鎌倉市新庁舎等基本設計及びDX支援業務委託」です。契約上限金額 294,965,000 円です。

 

4 審査会

7月の1次審査では、4チームとも通過しています。今回の2次(最終)審査では、有識者による審査会がプレゼンテーションの内容を総合的に審査して、最優秀提案者と次点者を選定します。委員は8人で、①オフィス・働き方、②防災、③環境、④建築計画・まちづくり・都市デザイン、⑤建築意匠、⑥住環境・省エネルギー、⑦造園・都市計画、⑧DX・働き方の専門家が就いています。今回のプレゼンテーションでは、委員が提案者に的確な質問をしていましたので、いいメンバーに恵まれたと感動しました。委員の皆様にこの場で感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

5 4チームの提案内容

(1)SAチーム あたらしい生活文化の拠点をつくる (動画で見る限り、隈研吾氏のチームでした)

・設計の概要

4階建て(これまで庁舎の設計では4階しかやってない。今回の敷地で奇跡的にハマった)

木造と鉄筋のハイブリッド構造

施設
1階 入口にヤグラ広場(4階まで吹き抜け)、食堂、売店、スタジオ、図書館、多目的室、Fab、消防車庫
2階 窓口、執務室、研修・講習会スペース
3階 窓口、執務室、災害対策本部、高機能消防指令センター
4階 議場、会議室、執務室、市民テラス、消防見学テラス

Fab…「Fabrication=ものづくり」と「Fabulous=楽しい、愉快な」の2つの意味が含まれた造語で、あらゆるものづくり行為の総称

1階は仮置きで設計した。市民のスペースが全部入る。市民とのワークショップで決めたらいいと思っている。2階は市役所の窓口になる。執務室は2、3階が中心で壁のないレイアウト。設計の重要ポイントは、天井高と低層構造である。天井高を高くとっている。1階は6m、その他は5mである。他の部分は、意見で変えてもいいと思っている。

 

・審査委員との質疑

質疑1 執務室の面積

(質問)庁舎としては面白い輪郭をしていて、いわば四角かったオフィスのイメージが、この輪郭ですごく同じ机でも違う景色が出るのかなと思うので、例えば執務室の要求に対しての面積は十分か。

(回答)特に、市民の幸福度、満足度が高くなりやすくなるためには、職員の方のモチベーションを上げていかないといけないと思っています。ですから、特に豊富にして、執務空間を広くして、執務に集中できる場所と、市民とじっくり交流できる場所を、メリハリをもって整備しようと考えたのがこの構想です。形につきましては、執務空間の中で、整然と机が並んだ従来型の執務室よりも、少し歪んだといいますか、要は執務の形がパターンがいっぱいあって、職員の方々との出会い、きっかけによって職員間のコミュニケーションが生まれて、それで新しい発想が生まれて、そういった執務空間になっていただければなと思って、今回、提案をしております。

(上野がくの意見)執務に集中できる場所であり、職員が出会う場所というのは、想像しにくいという印象です。執務スペースの面積についての具体的な回答がありませんでした。

 

質疑2 行政サービスと市民来庁の変化

(質問)鎌倉市において進むDXがどういう変化をもたらすのかということに関して、プレゼンの資料を拝見する限りでは、「書かない、待たない、行かない」というような点は書かれているのですが、職員の働き方、鎌倉市の行政サービスはどういうふうに変わるという前提を置いているか、また、市役所にお越しになる鎌倉市民の目的が、どういう変化があると考えているか。

(回答)これは市長さんの役割だと思います。今のARも含めた技術進化を考えるとならざるを得ないので、それを現行とすり合わせていくかだと思います。

(上野がくの意見)今回の委託業務は、設計とDX支援を両方任されているのに、DXでスペースが減るかはわからないと言ってしまっているのは不安です。

 

質疑3 執務スペースから市民スペースへの変更可能性

(質問)確かにDXが進むと執務スペースが少なくても良くなるのではないかと思う反面、この低層プランで行くとあまり安易に市民スペースが拡大していくようになっているとはにわかに信じがたいと思ったが、どう考えたか。

(回答)DXは業務が合理化されて人員縮小になるが、逆のこともありえる。市役所の業務が市民と混ざるという話もあるので、一概には決めつけてやっているつもりはありません。ただ要するに、フレキシブルですということを言いたいということです。今でも市役所ブランチ(支所のことか)がありますけれども、そのブランチの方の充実みたいなものが重要になってきて、市役所自体はそれのターミナル(終点)みたいな格好にどんどんなっていくのかな、イメージとしてはそんなふうに思っています。

私たちチームとしてはDX支援というものを通して、まず市民へのサービスの向上、幸福を高めることを考えるものです。職員の方が、現在の庁舎のように、6メートルのスパンの中で、同じく机を一緒に並べられてやって、市民のご対応、それから施策だとか、条例作りについて集中する場、それが同じ空間であっていいのかな、というのが私たちの思うスタートでした。集中する執務の場所では、 より短時間、効率的に執務を進めていただき、時間を短縮することによって、そういう時間を市民の方々と対面での対話、 市民への満足するような対話に、より時間を割いていただく。そういったメリハリのある働き方になってくれればなと思って、こういう提案をいたしました。

(上野がくの意見)現庁舎の課題を画一的な作りにあるとの認識ですが、提案しているオープンな作りだと執務に集中できる理由の説明がありません。係と係の間を余程広い間隔を取らない限り、周りと声が混ざり合って、集中しにくいと思います。

 

質疑4 DXによる市役所の新しい使い方を職員と市民に導く方法

(質問)職員と市民とDXという新しい働き方も、もしくは役所の使い方も変わっていく中で、どのように誘導しようと考えているか。

(回答)これは、これからその部署、市民方々の意見を伺って、何を求めたかどうかというのを受け止めた上で、いろいろ予定が進む話かなと思います。私も、某組織を統括することがあって、うんざりすることも多いんですけど、そうかと思って、最近気がついたことは、食い物ですね。食というのが、ひとつのコミュニティと、媒介物になるような気がして、やはりひとつは、この鎌倉には食文化もありますので、食を媒介にして、一般市民とどう交流するか。そういう楽しいことを考えながら、空間を考えるといいのかなと。そこのつながりが、いざというときに役に立つというふうには考えています。

すでにいくつかこういうような団体がこういう活動をしたら面白いんじゃないかというのを持っていますので、直接そういう方々とつながっていきながら、ワークショップですとか、いくつか取り組みを行って、アイデアを具体的にしていきたいというのが主な前からの考え方です。

(上野がくの意見)食べ物の話は、よく分かりませんでした。また、団体とやり取りをしてこれから具体化していきたいということで、現時点での考え方が示されませんでした。DXの活用についても、具体的な内容が示されませんでした。

 

(2)FUチーム 鎌倉ONE

・設計の概要

提案書の図では平屋建てかと思われたが、5階建てとのこと。

行政サービスや市民の情報共有のプラットフォームとして鎌倉版アプリを提案

機能
1階 消防機能、展示、行政サービス、キッズスペース、図書機能、多目的ホール、四周には軒下空間
2階 窓口カウンター、相談ブース
中2階 免震層、倉庫
3階 執務スペース、高機能消防指令センター、災害対策本部
4階 執務スペース
5階 議場、議員関連諸室、屋上庭園

市民窓口
開庁時は窓口カウンターを適切に配置し、窓口はプライバシーを確保した相談ブースに変化します。さらに、将来には市民活動のスペースへと変わっていくでしょう。こちらが開庁時の窓口カウンターが市民の活動へ変化するイメージになります。

執務スペース
職員の働き方です。ワークスペースはDX化によって、あらゆる場所でリモートワークが可能になり、より自分らしく働きやすく快適な執務空間となります。鎌倉ONEアプリは、市民への情報発信だけでなく、リモートワークを組み込むツールにもなります。同じプラットフォームであらゆるデバイスからアクセス可能にすることで、場所を選ばずに作業が可能になります。

コンパクト化

DXによるセキュリティや予約システムの整備によって、職員の空間と市民の空間をシェアします。このように、我々はDXを活用して空間のシェアを行い、建物の面積を1割程度削減します。これによってコンパクトな市庁舎を実現し、 同時にイニシャルコストの削減にも寄与します。

 

・審査委員との質疑

質疑1 提案概要書とプレゼンテーションの内容の違い(全文掲載)

(質問)もう一つは一番、先ほどの市民からのご意見とあったんですが、市民のご意見の中で、この1枚の市民展示のFU案は、非常に説明がちゃんとできていない。他の案には立面図があるのに、(FU案は)よくわからない。もっと出してほしかった。ということで不満とか非難とかという意見もあったと思いますが、特に評価につながることではないんですけれども、それらは作戦だったのかどうかというと、今ちょっとお話ししてもらいたいと思います。

(回答)パネルの話からしますと、ちょっと情報不足であったことは大変申し訳なく思っております。ただ、私たちが一番やりたかったことは、軒下に市民が集まってくる、で、その市民を受け入れる器であるということをお知らせしたかったということと、それから1階は市民のコミュニティの場として、とても大切だというふうに思いまして、そこの絵を重点的に説明をした次第でございます。とにかく情報不足のところは申し訳ございませんが、今日のご説明でご容赦いただければと思います。

(質問者受け止め)はい、ありがとうございました。最初のプレゼンの内容が少し不十分だというふうな話については、意図的なものではなくて、本当に説明したいところを重点的に説明したいということで、市民の方にも理解いただけるといいなと思っております。

(上野がくの意見)まず、審査委員の皆様には、市民が疑問に思っている点を質問していただき、感謝いたしております。FUチームの対応には納得できません。問題は後出しジャンケンだということです。提案概要書は公開されており、それに対する市民からの意見も、提案者はお互いに内容を見ることができます。これが許されるなら、一次審査の後に、ライバルの案と市民の意見を踏まえて、提案内容を都合よく変えることができるわけです。このプレゼンテーションでは5階建てとして提案されたのですが、一次審査での提案概要書には、平屋建てか公園と思わせるような平面イラストが掲載されており、2階以上の構造がまったく記載されていませんでした。FUチームの説明では、1階の四周に大きな軒下があり、そこが市民活動の場になるとのことです。しかし、提案概要書では建物の周囲ではなく、1階フロア全体に渡って人々が活動している様子が描かれています。また、少なくとも5棟の小さな建築が描かれています。とても同じ建築とは思えません。募集要項の失格事項に該当する可能性もありますので、二次審査の対象とするかどうか、鎌倉市役所で慎重に判断してもらいたいと思っています。

(参考)資料 鎌倉市新庁舎等基本設計及びDX支援業務委託公募型プロポーザル募集要領

第12 失格

次のいずれかに該当する場合は失格とします。

(4)提出された書類等に虚偽の記載があった場合

(9)前各号に定めるもののほか、提案に当たり著しく信義に反する行為等、審査会会長が失格であると認めた場合

 

質疑2 アプリの具体的な実現方法

(質問) 鎌倉アプリの具体的な内容と実現方法、市民や職員が使いやすいものにするための工夫について教えてほしい。

(回答) 鎌倉アプリはネイティブアプリ(スマホやタブレットに直接インストールして使うアプリ)として、ウェブサービスから使えるものを目指す。職員の現状の業務を理解し、優先順位をつけて進める。ワークショップやモックアップ(試作品)を使い、ユーザビリティ調査を行いながら進める。

質疑3 執務スペースが足りなくなる可能性

(質問) 建築デザインをコンパクトにすることの利点と問題点、DXが進むことで場所が足りなくなる可能性について教えてほしい。

(回答) コンパクトなデザインの利点は、空間をシェアすることで柔軟に対応できること。ピロティ(建物の1階部分を柱だけで支えた空間)やバルコニー、吹き抜けを活用する。周辺の行政施設も市庁舎の一部として考える。建設コストの上昇に対応するため、コンパクトな設計を採用。

 

(3)WAチーム 市民を守り・つなぐ・やさしい・丘陵型庁舎

・設計の概要

6階建て

施設
1階 キリドマ、図書館、ホール、市民多目的室、コワーキングスペース、テラス、カフェ、消防車庫
2階 アジサイロビー、執務スペース、個別相談ブース、ワークラウンジ、ワークテラス、テラス
3階 アジサイロビー、執務スペース、個別相談ブース、ワークラウンジ、特別職諸室、防災機能諸室、高機能消防指令センター、消防見学テラス
4階 アジサイロビー、執務スペース、個別相談ブース、ワークラウンジ、屋上庭園
5階 アジサイロビー、執務スペース、会議室、ワークラウンジ
6階 議場、展望ロビー、機械室

キリドマ…「切り通し」と「土間」の特徴を併せ持つ。玄関口となる通路状の広い空間。

アジサイロビー…あじさいの花形をした組合せ自由な机と椅子のある多用途スペース

2階~5階までの各階にコンシェルジュカウンター

2階~4階までの各階に8部屋の個室ブースがある。

 

・審査委員との質疑

質疑1 DX支援業務のビジョン

(質問)DX支援業務において、ビジョンを持ちながらリアリティを持って行動することの重要性について、これまでの実績や経験からどのようなビジョンを持っているのか。

(回答)DXという言葉が先行し自治体が追いつけない部分がある。国が示したデジタルの今後の姿を職員に理解させることが重要。ワークショップで職員の意見も聞くが、どちらかというと職員に啓発を行って変化を促す議論する。

(上野がくの意見)この回答には感銘を受けました。プレゼンテーションという場で言いにくいことにもかかわらず、DXはなかなか進まないと現実を踏まえた説得力のある回答でした。

 

質疑2 コンシェルジュサービス窓口が多い理由

(質問)DX化する割には、各フロアにコンシェルジュを置く窓口を開設する意図を教えてほしい。

(回答)これまでの他自治体での経験から、窓口が急にゼロになることはないと考え、各階に窓口を設けるのが親切と考えた。時代の流れに応じてフレキシブルに対応し、市民スペースが拡大する場合にも対応しやすい空間を作る。

(上野がくの意見)しばらくは市役所に市民が来ることを前提としながら、DX化の将来も見据えて対応可能な設計というのが無理がないように感じました。

 

質疑3 人流センシング解析によるレイアウト変更の実現可能性

(質問)将来的にレイアウト変更を行うための人流センシング解析(人の流れを解析する技術)の実現可能性と、職員が長期的にデータを分析しアクションを起こす方法について。

(回答)センシング機器の価格は下がっており、またデータ解析も市販のツールで可能で、費用負担は少ない。職員がツールの使い方を習得し、一定期間ごとにデータを見直すだけでよく、作業負担は少ない。建物維持管理のためのシステムとして、データを見える化できるツールを提案する。

(上野がくの意見)職員がレイアウト変更を上司に提案するためには、数値的な根拠が必要です。そのためのツールまで準備してあるというのは、職員からしたら嬉しいのではないでしょうか。

 

(4)KAチーム 歴史と未来をつなぐ「鎌倉 散策の森」

・設計の概要

7階建ての交流棟と3階建ての防災棟

交流棟

施設
1階 図書館、学習センター、ホール、市民多目的室
2階 受付、市民ラウンジ、サービスロビー、執務スペース
3階  
4階 執務スペース
5階  
6階 屋上庭園
7階 展望ロビー

※スライド資料を見ないと不明な点があります。

防災棟

施設
1階 カフェ、管理室、消防署の緊急車両車庫
2階 執務スペース、消防仮眠室、消防署会議室
3階 災害対策本部機能、執務スペース
屋上 消防訓練見学スペース、ウェルネスガーデン

新しい時代の窓口

ここから始まる新しい時代の窓口提案である。まずは、DXによるオンラインサービスを主体とした窓口システムを構築する。各所相談への対応をAIやリモート対面サービスにより、施設に行かずに済むサービスをまず整える。さまざまな事情から施設を訪れる来庁者は、2階のサービスロビーに向かう。職員と市民を隔てる固定のカウンターはなく、総合コンシェルジュとワンストップサービスで市民一人ひとりに向き合うマンツーマンサービスを提供する。待ち時間を無駄にせず、手続き後の資料受け取りは交付ロッカーを利用する。

(上野がくの意見)第一に市民は市役所に来ないと考えて設計すると理解しているようです。例外的に来庁したらその方には対応する形です。書類はロッカーに入れておくから、持って行ってくださいという対応は気になります。単純な窓口業務は、今でも支所で済んでしまいます。市民が本庁に行くのは政策企画をしている担当者と固有の話をしたいからです。本庁と支所は機能が違うのです。

 

職員の働き方

職員の働き方提案。開庁時は多様な働き方に対応するABW(Activity Based Working、その時々の仕事の内容に合わせて、働く場所を自由に選択する働き方)スペースを提供する。時間が経過するにつれ、DXの進展によりペーパーレス化とゼロトラスト(内部者か外部者にかかわらずセキュリティ認証を行う考え方)が確立されるため、物理的なセキュリティ区画が不要になる。これにより、余剰なワークスペースが市民と職員の共用空間となり、職員のウェルネスと市民サービスを両立させる環境が整う。

 

・審査委員との質疑

質疑1 セキュリティ区画が不要となる理由、執務スペースが減る理由

(質問)クラウドシフトやゼロトラストの導入で、空間的なセキュリティ区画が不要になる理由が不明。データ移行による職員の負荷軽減は理解できるが、執務スペースの合理化理由が不明。

(回答)クラウドシフトとゼロトラストにより、場所を限定せずにシステムへのアクセスがセキュリティで守られる。紙ベースのものもデジタル化され、物理的なセキュリティが不要になる。職員がどこでも働けるようになり、執務スペースも不要になる。

 

質疑2 執務スペースがコワーキングスペースになる意味

(質問)ABWスペースがDXによってコワーキングスペースになる意味合い、市民が使う側の意味合いが難しい。新しい市庁舎で市民が集う意味合いについての考えを教えてほしい。

(回答)市民と共に働く場所が市民にとって価値があるかは大きな問題であり、徐々に変化を進める必要がある。リモートワークが進む中で、市役所にコワーキングスペースがあることで、鎌倉が働きやすい街になる可能性がある。要望に応じてワークスペースを柔軟に対応することが重要。

(上野がくの意見)パソコンで作業しているときに、データは安全であっても、視覚的、聴覚的な情報として空間に公開されることになります。現在、テレワークの運用では、職員は一般の人に画面を見られないようにすることを条件として課されているのです。そのため、職員と市民との共用スペースが実現できるとは想像しにくいです。また、共用スペースにいるときは、職員間の会話ができないことも問題ではないかと思います。僕は市役所とは、第一に職員が仕事をする場であること、第二に市民が職員に相談・対話をする場所であると考えています。一般の方が仕事をする場所というのは、たとえば駅の周辺に公的施設として検討してもいいのかもしれませんが、市役所に作る必然性はないと考えます。

 

6 おわりに

4つの提案はいかがでしたか。ここでは、執務スペースの確保と相談スペースの確保の2点から意見を述べてきました。他にも、外観、環境負荷、緑化、費用など様々な観点があると思います。あくまで一つの考え方とご理解ください。今後のスケジュールですが、鎌倉市役所は9月24日に業者決定の通知を出し、10月下旬に仮契約を締結します。

また、9月下旬にスライド資料と手話を追加した動画を公開するそうです。決定した後に公開しても盛り上がりにくいと思います。今回の新庁舎の基本設計というのは、市民の理解を深めるために行っていると理解しているのですが、鎌倉市役所がやっていることがチグハグに思えてなりません。基本提案書に対する市民意見募集の際には、7月半ばから8月半ばまでという連日酷暑の中で展示しましたし、基本提案書も一般に広く公開できない条件(写真撮影も不可)でした。市役所移転が必要か否かの議論に集中しすぎていて、出来上がるものへの関心が低い現状を、上野がくは心配しています。基本設計委託に3億円、また市庁舎の移転費用合計で170億円かかります。実際にお金をかけるのは、新しい庁舎そのものなのです。市民一人ひとりが新しい庁舎を理解し、設計の希望を述べる機会を得ることが、新庁舎の正当性に繋がっていくのではないでしょうか。

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著者

上野 がく

上野 がく

肩書 鎌倉市議会議員(1期)、総務常任委員会副委員長、会派「鎌倉前進の会」所属、元神奈川県職員、町内会役員(防災部長)、防災士
党派・会派 無所属

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