たかはし 秀行 ブログ
身寄りなき高齢者支える 社会福祉法等改正法が成立
2026/7/10
身寄りなき高齢者支える
社会福祉法等改正法が成立
2026/07/10 公明新聞より
先月、社会福祉法などの改正法が成立し、頼れる身寄りのいない高齢者らに対する支援が強化される。改正法の内容や実際の支援現場の取り組みを解説するほか、支援強化の意義や課題について、日本総合研究所の岡元真希子主任研究員の見解を紹介する。
■24年で約290万人/死後事務含む包括的な支援を社協に義務付け
頼れる身寄りがいない高齢者や認知症などの影響で判断能力が十分でない人でも安心して生活を続けられるよう支援を充実させることが法改正の主な目的だ。そのため、日常生活から入退院や入所、死後の手続きまでを包括的に支援する新たな仕組みを法制化し、「第2種社会福祉事業」に位置付けている。
具体的には、①定期的な見守りや金銭管理②身元保証が求められる病院や介護施設の入院・入所手続き、費用支払いの代行③死後の葬儀・納骨や家財処分、行政への届け出――といった支援を各都道府県の社会福祉協議会(社協)に義務付け、具体的な業務は各市区町村の社協が担うことを想定。十分な資力がない人は、無料や低額で利用できるようにするほか、民間事業者などの参入も促す。
改正法制定は、高齢者人口がピークを迎える2040年ごろを見据えたものだ。65歳以上の一人暮らしの高齢者は増加傾向にあり、25年の約816万人から50年には約1084万人に達するとみられている【グラフ参照】。とりわけ、3親等内の親族がいない「身寄りのいない高齢者」の増加は顕著で、24年の約286万人から50年には約448万人まで増加するとの民間推計もある。
このほか改正法では、単身世帯の急増に伴う社会的孤立や福祉人材不足、災害時の支援などに対応する内容を規定。包括的支援体制の強化や介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格更新廃止による研修時間や経済的負担の軽減、災害時の迅速な対応に向けて国による人材登録制度の導入などを進める。
公明党は昨年6月、誰も取り残されない地域共生社会の実現に向けた単身者支援を政府に提言。今年2月の参院代表質問で竹谷とし子代表が頼れる身寄りがいない一人暮らしの人への支援強化を求めたほか、法改正を巡る委員会質疑で死後事務などの支援制度における人員体制の構築など、実効性ある制度設計を求めてきた。
■(足立区で先進例)前年上回るペースで利用増
身寄りのいない高齢者への支援は各地の社協などで進められており、東京都足立区も先進地域の一つだ。
社会福祉法人・足立区社会福祉協議会の「権利擁護センターあだち」では、契約した高齢者の生活支援から施設や病院に入る際の身元保証、亡くなった後の対応まで包括的に担う「高齢者あんしん生活支援事業」を展開している【表参照】。
入院すれば日用品を届け、病院から求められれば保証人欄にサインして入院に立ち会うことも。このほか、預貯金の払い戻し、郵便物の確認や区役所の手続きの代行まで幅広く支援する。亡くなった際は、あらかじめ作成した公正証書遺言に基づき財産の遺贈、家財処分、葬儀や納骨などの死後事務支援も行う。
利用できるのは、区内に居住する65歳以上の一人暮らしで、「支援可能な親族がいない」「不動産収入がなく、負債がない」などの条件を満たした人。将来の事態に備えて75万円を預託し、年会費1万2000円などを支払う。
社協の担当職員2人で1人の高齢者を担当する。緊急時に備えて自宅の鍵を預かり、休日や夜間も当番制で対応。月に1回は利用者に電話し、半年に1回は訪問して体調などに変化がないか確認する。
区社協では05年から事業を開始。「入院や施設入所の際に保証人がいないことを理由に断られた」といった相談が増えたことがきっかけだった。事業開始以来、契約数は年々増加傾向にあり、25年度時点で88人が契約を継続。今年度もこれまでを上回るペースで申し込みがあり、「間もなく契約数は100人を超える見込み」(区社協福祉事業部・花本洋子課長)だ。
今回の法改正について花本課長は「重要な意義ある政策」と述べつつも、今後社協が担う業務の見通しに懸念を示している。
区社協では現在の事業で既に人員が手いっぱいの状態。新制度がスタートすれば、一層大きなニーズが発生することが予想され、今の人材と資金力ではとても対応できないという。「支援の対象や範囲など今後の具体的な形が全く見えないことに、現場の社協は大きな不安を抱えている。国は早く詳細を示して支援してほしい」と訴える。
■日本総合研究所 岡元真希子主任研究員に聞く
■「家族頼み」の福祉転換/サービス利用への障壁減らす
――今回の支援強化をどう評価しているか。
今回の改正法は、支援対象や支援の範囲を大きく広げる踏み込んだ内容になっている。「死後事務」が含まれた点は画期的だ。これまでは生きている間の支援に重点が置かれていたが、葬儀・お墓や家財処分に関する高齢者の不安は大きく、支援者の負担も大きい。超高齢社会で増え続ける身寄りのいない高齢者の状況を個人の問題ではなく、社会全体の課題として捉えたことは大きな前進と評価できる。
――わが国の福祉のあり方を変えるものではないか。
古くは、1978年版「厚生白書」で、老親と子の同居を「福祉における含み資産」と表現するなど、「家族頼み」が日本型の福祉と言われてきた。同居家族のいない高齢者が徐々に増える中、2000年の介護保険制度創設を機に、「社会全体で支える福祉」への転換が始まった。しかし、介護サービスを利用するには、事業者との契約などの場面で本人の意思を代弁したり、手続きを支援する人が必要であり、その役割を主に家族が担ってきた。
介護保険などの利用手続きを支援する現行事業が、今回の法改正により、入院・入所や死後事務まで拡張された。家族がいないことによって発生していたサービス利用への障壁を軽減し、頼れる親族の有無にかかわらず誰もがサービス・制度を利用するための礎となると期待される。
――今後、社協の存在が重要性を増すのではないか。
全国あまねく存在する社協は、新たな事業の重要な担い手として期待されている。ただし、現行事業の利用者は約5万人にとどまる。これに対し、子がいない高齢者は現時点で約500万人、未婚率の上昇などにより50年には1000万人を超えると推計され、社協だけで引き受けるのは、ほぼ不可能である。社協の体制強化を進めると同時に、監視体制を強化した上で民間の「高齢者等終身サポート事業者」も活用すべきだ。
さらに、親族との関係修復を図り、その力を借りることや、友人・知人に頼る可能性も探るべきだ。本人が信頼する人を生前に「葬祭執行者」として指定し、その旨を自治体に登録することによって、血縁関係がなくても円滑に葬儀を執行できるような仕組みのある地域もある。
――このほか懸念される課題は。
主に2点ある。一つは、利用者が認知症などで判断能力が低下した場合の対応だ。元気な時に契約した内容のまま支援を続けてよいのか、成年後見制度の利用申し立てをすべきか、それを誰が判断するのかなどはまだ曖昧である。
もう一つは、手術などの際に患者に求められる医療同意のあり方だ。厳密には医療同意は本人しかできないが、説明と同意があったことを書面に残すことが通例であり、説明を受けた旨のサインを家族がすることは多い。身寄りのいない高齢患者の場合、現場では医療機関と関係者が臨機応変に対応している。都度の判断は現場の負担が大きいため、役割分担に関する一定の合意形成が重要になるだろう。
事業の詳細についてはまだ決まっておらず、全国一律の同じやり方で実施できるとも限らない。各地の地域資源の状況も踏まえて、今後丁寧に検討していくことが重要だ。
おかもと・まきこ 1998年、東京大学卒。同年、日本総合研究所入社。2007年、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻(人間の安全保障プログラム)修士課程修了。専門は高齢者福祉・介護保険、社会福祉など。
八千代市議会議員 たかはし秀行