中島 ゆうたろう ブログ

東京都→3県への税源移転は妥当か —23区内格差4.5倍 vs 都県間1.4〜1.7倍の二重基準

2026/4/25

3県知事の偏在是正要望と、その違和感

2026年4月23日、埼玉・千葉・神奈川の3県知事が自民党税制調査会の小野寺五典会長と面会し、「税源の偏在是正」を文書で要望した。「子供施策をはじめ行政サービスの地域間格差は看過し得ない水準」というのが3県知事の主張で、東京都に集中する税収を地方に再分配すべきだという論である。

政府・与党は今年度内に検討を進め、令和8年度税制改正大綱に偏在是正の方向性を盛り込む見通しだ。江東区議として、この議論には根本的な違和感がある。論点を整理したい。

 「看過し得ない格差」の実態:都県間は1.4〜1.7倍

3県知事の要望書を読んでも、具体的にどの施策がどう違うのか、財源移転で何を実現したいのかが一切示されていない。「格差がある→看過し得ない→是正すべき」という抽象的三段論法だけで、政策論として評価可能な具体性が欠けている。

数字で検証してみる。総務省「地方財政統計年報」等を基に、一人当たり個人住民税を比較すると、東京都と3県(神奈川・千葉・埼玉)の差は約1.4〜1.7倍。3県平均比で1.4倍、最も低い埼玉県との比較で1.7倍の差にとどまる。これが3県知事が「看過し得ない」と呼んでいる格差の実態である。

23区内の格差は、都県間よりはるかに大きい(4.5倍)

では、東京都内ではどうか。一人当たり特別区民税(個人分)で港区と足立区を比較すると、港区が約36.8万円、足立区が約8.1万円。一人当たり約4.5倍の差がある。これは都県間格差(1.4〜1.7倍)の2.6倍以上のスケールだ。

同じ東京都内、同じ特別区財政調整制度の下でなお、これだけの税源格差が存在している。一般会計予算規模では、都区財政調整交付金による平準化が働き、港区と足立区の一人当たり予算額の差は約1.5倍まで圧縮されるが、それでも1.5倍の格差は残る。

なぜ「23区内で偏在是正せよ」という議論は起きないのか

特別区民税で4.5倍、一人当たり予算で1.5倍の格差が同じ都内に存在しているにもかかわらず、「港区は税収が多すぎる、足立区や江東区にもっと回せ」という議論はほとんど存在しない。

なぜか。各自治体がその税収に応じた行政サービスを住民に提供することが、地方自治の本来の姿だと、暗黙のうちに共有されているからだ。港区に税収が集中するのは港区の経済活動の結果であり、それを港区民に還元するのは地方自治の本旨に適う。特別区財政調整で一定の平準化は行うが、それ以上の介入はしない。この原則が、都内では機能している。

偏在是正論は、地方自治の原則を「都道府県間だけ」停止する提案

ここで、見方を変えてみたい。

23区内で当然のこととして受け入れられている格差(税収4.5倍、予算1.5倍)よりも、都県間の格差(個人住民税1.4〜1.7倍)の方が、はるかに小さい。23区内では誰も問題視しない格差より小さい格差について、なぜ3県知事は「看過し得ない」などという強い表現で訴えるのか。

答えは一つしかない。23区内の格差は「地方自治の当然の帰結」として認められているが、都県間の格差は46道府県が東京から金を取るための政治的な口実として扱われている、ということである。偏在是正論は「地域間格差の是正」という美名の下で、46道府県が数の論理で東京の税収を奪うという提案にほかならない。

偏在是正は、東京都と3県の双方から個性を奪う

各自治体が自らの税収を基盤に独自の行政運営を行うことが、都市の個性と魅力を生み出している。港区は港区民の税収を原資に港区民のための施策(屋上田んぼ付き公立小学校、手厚い子育て支援等)を提供し、それが港区という都市の魅力を形作っている。

偏在是正は、この構造を都県レベルでも壊す。東京都は都税収入が他県に流出すれば、ニューヨークやロンドンと比肩する国際都市としての特色ある行政サービスを支える財源的余裕を失う。一方、3県も国から降ってきた財源で運営される自治体になれば、自らの産業基盤や地域特性に根ざした独自施策を構想する動機を失っていく。「県の税源は自県で育てる」という意識が薄れ、中央に依存する受動的な県政へと変質する。

地方自治とは、地域が自らの経済基盤で地域運営を行う制度である。偏在是正は、都県双方を「中央が再分配する財源で運営される存在」に変えていく。東京都の個性も、3県の個性も、ともに削がれていく。

3県に必要なのは、自県の魅力を磨くこと

3県知事がすべきは、東京の税収を取ることではなく、自県の魅力を磨き、県民の満足と流入人口を増やし、自県の税源を育てることではないか。偏在是正という議論は、地方の独自性と自立を放棄する議論である。3県知事が本当に県民の行政サービス水準を引き上げたいなら、「東京都の金を寄越せ」ではなく、「自県の経済基盤をどう強化するか」を語るべきだ。

江東区議として

江東区は基準財政収入額で23区中7位の財政力があるが、それでも特別区制度の中で財政調整交付金を年714億円受けている。偏在是正が進めば都税収入が減り、都区財政調整原資が縮小する。結果として、江東区のような財政調整交付金を受けている区にこそしわ寄せが来る。偏在是正は、この交付金原資を直接削る議論である。

私はこの議論を、江東区民の利害の問題としても、地方自治の原則の問題としても、看過できない。偏在是正の議論が具体化する過程で、区民生活への影響を注視し、区議会でも取り上げていく。「看過し得ない」という情緒的フレーズで押し切られることなく、地方自治の本旨と都市の個性を踏まえた、筋の通った議論が行われることを、議会の場からも求めていく。


詳細な数字検証と論理展開はブログで論じています。

[偏在是正は地方自治と都市の魅力を壊す — 江東区議が検証する税源移転論]

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選挙 江東区議会議員選挙 (2023/04/23) [当選] 3,125.076
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