2026/8/13
| 小森さだゆき | 高槻市議会議員
ニュースや法改正の議論でたびたび話題に上る「国旗損壊罪」。日本の国旗(日章旗)を不当に傷つけたり汚したりする行為に対して、新たに罰則を設けるべきか否かという議論です。
一見すると「国の象徴を守るのは当然ではないか」と思われるかもしれませんが、法律を新しく作る際には必ず「立法事実(=なぜその法律がどうしても必要なのかという客観的な理由)」が問われます。
今回は、この国旗損壊罪をめぐる議論を通して、法律ができるために必要な立法事実について分かりやすく解説します。
実は、現在の日本の刑法には「外国国旗損壊罪(刑法92条)」が存在します。外国の国旗を公然と損壊・侮辱した場合には、罰則が課される仕組みになっています。これは、外国との友好関係を維持し、外交上のトラブルを防ぐという明確な目的があるためです。
一方で、自国である「日本国旗」を損壊する行為そのものを直接処罰する単独の刑法規定は、現在の日本には存在しません(器物損壊罪や軽犯罪法などが個別に適用されるケースはあります)。
この「外国の国旗は守られるのに、なぜ日本の国旗は守られないのか」という不均衡を正すために、日本国旗に対する損壊罪を新設しようという法案の議論がなされてきました。
法律を新しく作り、国民の行為に罰則を科す(刑罰を設ける)ためには、非常に厳しい立法事実の検証が求められます。
国旗損壊罪の新設において、議論となる立法事実は主に以下の3つの点です。
実際に日本国内で、日本国旗が不当に損壊される事件がどれほどの頻度で起きており、それが社会秩序にどのような深刻な悪影響を与えているかという現実のデータです。
既存の「器物損壊罪」(他人の所有物を壊す罪)や「軽犯罪法」、あるいは「威力業務妨害罪」などでは対処しきれない法的限界が本当に存在するのかどうかという点です。
憲法第21条で保障されている「表現の自由」とのバランスです。単に政治的な主張や抗議活動として行われる行為に対して刑事罰を科すことが、憲法上適切と言えるかどうかという慎重な議論が必要になります。
「国の象徴を大切にすべきだ」という感情や道徳観は非常に大切です。しかし、実際に「刑罰という最も強い国家権力」を行使する法律を作るとなると、感情や理念だけでは法案を通すことができません。
社会的に放置できない実害が起きているか、現行の制度では解決できない「法の穴」があるか、そして新しい規制を設けることが社会全体にとって合理的かといった「立法事実」を一つひとつ客観的なデータと論理で積み上げていくことこそが、適切な法改正や条例制定を実現するための唯一の道筋です。
国旗損壊罪をめぐる議論は、単なる政治的対立ではなく、「どのような根拠があれば新しい法律を作ってよいのか」という法治国家の根幹を問いかける好例と言えます。
これからも、一つひとつの政策や法案に対して「確かな立法事実があるのか」という視点を大切にし、現実的かつ合理的な論議を進めてまいります。
| 小森さだゆき | 高槻市議会議員
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