2024/9/23
こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。
今日は薬のお話です。昨年、話題になった認知症の新薬「レケンビ®(レカネマブ)」を紹介します。
【お話しの流れ】
・高い薬価について
・どうやって効くのか
・特徴的な副作用
■ レケンビ®
名前の由来は、一般名であるレカネマブ(Lecanemab)と、健やかさ・美しさ(健美)をイメージした「QEMBI」を組み合わせて「LEQEMBI」としたそうです。
【衝撃の価格(薬価)】
1バイアル200mg:45,777円、500mg:114,443円
投与方法は点滴で、2週間に1度。18か月投与が原則(継続も可能)
投与量は10mg/kg。例えば体重50kgなら1回500mgを投与します。
月あたり約2回 × 18か月=36回なので、薬代だけで約412万円です。
(500mgバイアル114,443円×36本≒4,119,948円)
一方、既存の認知症医薬品であるアリセプト®錠は、5㎎1錠87円なので、20年間服用し続けても、87×365×20≒63.5万円です。
【高額な理由】
製造開発費に加えて新規作用機序による「画期性加算」が薬価に上乗せされているためと思われます。総じて、~マブ(-mab)と語尾が付く抗体医薬品は高価です。
【使える病気】
適応は、アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)~軽度の認知症の進行抑制のみ。
サポートが必要な中・高度の認知症には使えず、レビー小体型認知症などの別タイプにも使用できません。
画期的とされたのは、これまでの薬とターゲットが違う点です。従来はアセチルコリン(神経伝達物質)に着目していましたが、レカネマブは脳にたまるアミロイド(老人斑の原因)を除去する抗体医薬品なのです。

2021年アメリカでは、レカネマブより先にアデュカマブ(アデュヘルム®)が承認されます。
より以前の2014年には、バピネウズマブやソラネズマブが開発され、アミロイドβは減らせたものの症状の改善は示せず、「アミロイド仮説は違うのでは?」という議論になりました。
一方、アデュカヌマブは、老人斑となる前段階の複合体である「プロトフィブリル」に対して効果を示していました。この違いにより臨床効果を発現したようです。なお、本剤は日本では承認されていません。

このプロトフィブリルという中途半端につながったものが、神経に対する毒性を持っているのでないかと言われているようです。レカネマブのターゲットもプロトフィブリルで、アメリカに続くように日本でも承認されました。

■ レカネカブの効果
ではレカネマブは本当に効くのかという話です。下図をご覧ください。
(A)が臨床症状です。
(B)がアミロイド蛋白の量変化です。
アミロイド蛋白は顕著に減少していますが、臨床症状は0.5ポイント差。認知機能低下を5.3カ月先送りできる程度※だそうです。
画期的であっても、根本治療ではありません。

えっ?それだけの治療のために400万円以上かかるの?
※これを患者・家族に理解しやすい数字に置き換えて計算した結果では、レケンビを投与されていた人では、偽薬を投与されていない人と比べ、あるレベルまでの認知機能低下を5.3カ月先送りできるという試算結果になります。(ドクターメイトより)
■ 特徴的な副作用
レカネマブは点滴なので、投与後のinfusion reaction(頭痛・発熱・悪寒など)が約26%報告。
加えて、本剤特有の副作用としてアミロイド関連画像異常(ARIA)があります(既存の認知症薬ではみられないタイプ)。

ARIA-E:ARIA-浮腫/滲出液貯留(12.6%)
ARIA-H:ARIA-微小出血及びヘモジデリン沈着(13.6%)
ARIAは臨床症状を伴わない場合も多いですが、このような副作用は私も初めて知りました。頻度も小さくはないです。
ApoE遺伝子ε4型の保有や脳血管病変があると起こりやすいとのこと。

■ 投与終了したらどうなる?
さて、レカネマブについて次のような臨床報告がありました。
参照:デュアル アクションを有する「レケンビ」による3 年間の継続治療が早期アルツハイマー病当事者様に顕著なベネフィットを継続的にもたらすことを示す新たな臨床データ
その本文中で気になったのが以下のデータです。

プラークが除去されてもアルツハイマー型認知症は進行し続け、治療を中止すると悪化の速度がプラセボと同じ速度に戻ることを示しています。
18カ月まで治療し、2年間は無投薬期間を設けた結果、プラセボと悪化スピードが変わらなかったというデータです。再開すると差が維持されて、ともに認知症が進行していくのです。
気になるのは、2年以上経過した場合、プラセボとレカネカブ群の線が交わらないのかということです。結局、永遠に投与するのだとしたら、既存の認知症医薬品と何も変わらないじゃないか。
■ イギリスでは保険適応外
イギリスではレケンビに保険を使うべきではない判断。
参照:エーザイ認知症薬、英国で承認受けるも保険適用外に(NIKKEI FT the world)
エーザイと米バイオジェンが共同開発した早期アルツハイマー病患者の症状の進行を抑える治療薬「レカネマブ」について、公費で医療を提供する英国イングランドの「国民医療制度(NHS)」では、患者への使用が推奨されないこととなった。医薬品の費用対効果を評価する英国立医療技術評価機構(NICE)が判断を下した。
ほんとにNICE!な判断ですね。
なぜ日本にはこのような機構がないのだろうか。いや、日本にも、同じような費用対効果を検討する枠組み(例:医療技術評価機構、中医協)がありますが…ほとんど機能していないじゃん!
■ 生活介入とどちらが有効か?
会話(おしゃべり会)・計算(ドリル)・運動など生活介入にも認知症へのエビデンスがあります。レケンビと生活介入の費用対効果を真正面から比較してほしい。結局、血糖値の管理が精神・認知機能に効く面もあるのでは?と私は考えます。
参照:生活習慣への介入による認知症・アルツハイマー病予防のエビデンス
アメリカのイーライリリー社よりドナネマブというライバル薬も早々に承認されたようです。同じような薬価がつくと思われます。どこまで日本の医療費が食われていくのやら…。
参照:イーライ・リリー製認知症薬「ドナネマブ」了承 厚生労働省部会、国内2例目 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
誰しも認知症にはなりたくですし、治るならば薬に頼りたい気持ちもよく分かります。しかし、アミロイドを除去しても、根本治療にはならず、そもそもアミロイドが真の原因かも未確定な中で、公費投入を決める…そのメリットは本当にあるのだろうか。
今回はイギリスの対応を見習うべきだと思います。本当に暗い気持ちになりますね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
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