2026/4/11
兵庫県 川西市議会議員(薬剤師) #長田たくや です。
妊娠中には禁忌の降圧剤(ARB)によって、胎児に腎障害が起こったという医療過誤のお話です。ニュースで取り上げられているものの、以前からも報告されている事案です。

参照:妊婦禁忌のアジルサルタン投与で新生児に腎障害、賠償金86万円支払い

「ARBは血圧を下げる薬ですが、胎児においては腎機能維持や発生に不可欠なRAASを遮断してしまうため、重篤な障害を引き起こす可能性があります。」と…こちらの説明をかみ砕いて説明していきます。
■ ARBとは何か
人間の血圧を上げるシステムに、RAAS(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン system)が知られています。
簡単に言えば、「アンジオテンシン」という生体内物質を中心とした血圧上昇メカニズムです。
ARBという降圧剤は、アンジオテンシンが結合する受容体をブロックするということです。

引用:第一三共エスファ株式会社
【RAASの流れ(参考程度に。スルーしても大丈夫)】
肝臓や肥大化した脂肪細胞から、アンジノテンシノーゲンという453個のアミノ酸がつながったペプチドが産生されます。
そして腎臓からレニンが分泌され、アンジノテンシノーゲンをアミノ酸10個に削って、アンジオテンシン1となります。
このままでは何も起こりませんが、アンジオテンシン変換酵素(ACE)がアンジオテンシン2に変えることで反応が起こります。
アンジオテンシン2受容体(AT1受容体)に反応すると
血管→収縮する(血圧上昇)
副腎→アルドステロン※を分泌する
※アルドステロンは、腎臓から水を再吸収(つまり、尿を減らして体内に水分を保持する)をします。つまり、血圧を上げるように働きます。
RAASのスタートである腎臓から分泌される「レニン」は、腎臓に入る血流圧とナトリウムの量を感知して、分泌を制御しています。
つまり、「血圧が低いなあ…」、「ナトリウムが少ないなぁ…」と体が感じるとレニンを出して、血圧をあげることで生命維持しようと働きます。
■ 胎児はRAASの影響を受けやすい
大人にとってのRAASは体液や血圧の調整をメインとしていますが、胎児にとっては臓器発生のメカニズムに強く影響していると言われています。
ARBが投与されると、RAASが機能しなくなり、腎血流維持機構が破綻、臓器形成(ネフロン、尿産生)にも影響が及びます。羊水が減少し、肺、四肢、頭蓋骨等の成長ができず、障害や最悪の場合は死に至るとされています。
1982年に、日本初のアンジオテンシン変換酵素阻害薬(カプトプリル)が発売されました。当時は「妊婦への投与の安全性は確認されていない」とされていましたが、1992年になって「投与してはいけない」とされました。
有害性が確実にわかるまでに、10年間もかかっているのです。4月から始まる妊婦へのRSウイルスワクチン…、このような歴史を知っていると、「治験で安全だったからぜひ打ちましょう!」なんて言えないや…。
初めてのARB「ロサルタン」が発売されて以来、ARBは爆発的に処方が増加し、降圧剤の第1選択薬に至ります。記憶に新しい「ディオバン事件」、こちらもARB「バルサルタン」という成分になります。国の機関(PMDA)から幾度と注意喚起がなされていましたが、ARB/ACE阻害薬が原因の胎児病の報告は後を絶ちませんでした。

引用:一連の臨床研究論文不正問題。 医療保険財政に与えた影響は?
それだけ処方される母数が多いということです。その証左に、多くの製薬会社がARBを開発・発売しています。
現在処方できるARB一覧
・ロサルタン(ニューロタン®)
・カンデサルタン(ブロプレス®)
・バルサルタン(ディオバン®)
・テルミサルタン(ミカルディス®)
・オルメサルタン(オルメテック®)
・イルベサルタン(イルベタン®)
・アジルサルタン(アジルバ®)→今回のニュース
参入している製薬会社が多いということは、それだけ処方数が確保できるということですね。
■ 妊娠期の高血圧
妊娠期に血圧が上がることがあります。
日本産婦人科学会のページでは、原因は不明とされています。

引用:日本産婦人科学会
ただ、もう少し詳しく調べてみますと、胎盤での酸欠状態が原因と考えられているようです。
なぜそうなるのか…まではわかっていないようですね。食事とかも影響しているのではないかなぁ。

引用:妊娠高血圧症候群
妊婦さんの10~20人に1人の割合で起こるとされ、リスクが高いのは、もともと糖尿病、肥満、年齢が高い(40歳以上)など。不妊治療の進歩で高リスク層の妊娠が増える中、血圧の数値だけで薬を選ぶ医療の弊害が出ているのではないでしょうか。
そもそもARBを妊娠可能な年齢に処方すること自体を、安易に考えない方が良いと思います。
近年は、降圧剤の合剤が多く出されており、一見、ARBなのかわかりにくいものも多くあります。
というか、そこまで血圧を下げないといけないものかね…。
当ブログ参照:【医療】 血圧基準値大戦争 【仁義なき戦い】
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
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ホーム>政党・政治家>長田 たくや (ナガタ タクヤ)>【医療】 妊婦禁忌のARBで胎児に腎障害 —なぜ起こるのかをRAASの説明ともに―