2025/11/20
こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。
10月に新規承認された薬に気になるものがありました。「フジケノン®」というお薬です。藤本製薬という小さな製薬会社ですが、薬剤師ならば誰もが知っている「ヨーデル®」という便秘薬を作っています(めっちゃ覚えやすい名前ですよね)。

「1日12万円の薬が承認されたって本当?」
じつはその薬、40年前からあった成分と同じもので、昔は“1カプセル21円”でした。
今回の新薬フジケノン®をきっかけに、まずは胆汁の仕組み。そして、ドラッグ・リポジショニングについてお話します。
■ 胆汁を知っていますか?
胆汁は食事中の脂肪の分解を助けると学校で習いましたよね。
胆汁は肝臓で合成され、胆管を通って胆のうにて保管・濃縮されます。食事が十二指腸を通ったら、胆のうから胆汁が分泌されて、すい臓と連携して消化にあたります。

この細い管に、石がつまることを「胆管結石」といいます。図をみたらわかるように、胆管の出口を塞いだらどうなりますか?出口はそこしかないので、胆汁やすい臓からの消化液までもが逆流することになります。怖い病気ですよね。
■ 胆汁は、分泌されては吸収されている
食事の度に胆汁を分泌していたら、もったいないじゃないか!ってことで、実は小腸にて回収されるのです。これを「腸肝循環」と言います。

■ 胆汁はコレステロールからつくられる
胆汁は、肝臓にてコレステロールから合成されます。
まず、一次胆汁酸が合成・分泌され、小腸内で二次胆汁酸に変わります。

なぜここまで説明したかと言いますと、
今回の新薬「フジケノン®」とは、一次胆汁酸であるケノデオキシコール酸そのものだからです。
■ 脳腱黄色腫症とは
脳腱黄色腫症は、難病指定されている希少疾患です(リンク)。日本では60例が報告されています。
この病気は遺伝子が原因で、コレステロールから一次胆汁酸が作れないという病態です。結果、脳機能への影響や、アキレス腱が腫れるような所見があります。

対症療法として、ケノデオキシコール酸を補充してやれば良いということです。
■ オーファン・ドラッグ
希少疾患に対しては開発費の回収が難しいため、薬価にインセンティブが上乗せされています。
これを希少疾患用医薬品(オーファン・ドラッグ)と言います。
したがって、このフジケノンというお薬。めちゃくちゃ高いです。
1包125mg:22,043円

服用維持量は、750mg。つまり、1回2包を1日3回に分けて服用します。
なんと、1日約13万円…
■ 同成分の薬がすでに販売されていた
実はこのケノデオキシコール酸という化合物。”新規化合物”ではありません。
同じ藤本製薬より「チノカプセル®」という名前で、1984年から販売されており、むしろ古い薬です。
ちなみに、1カプセル125mg:21.8円
ね?格差がすごいでしょ?

■ なぜそうなった?
チノカプセルの適応疾患は、「コレステロール系胆石の溶解」です。
冒頭に説明しました、胆のうや胆管にできた石を溶かす薬です。この石は、胆汁がドロドロして、濃くなりすぎると塊ができてしまう。ケノデオキシコール酸は、サラサラしているのです。つまり、「ドロドロした胆汁をサラサラしたケノデオキシコール酸で置き換えていこう!」という戦略です。
ちなみに、ケノデオキシコール酸はガチョウの胆汁から発見され、ギリシャ語の “khēn(ガチョウ)” が語源となっています。
チノカプセルも、ガチョウの学名(Gr. Cheno)にちなんで『チノ』と名付けたそうです。

なお、メタボだと石ができやすく、そのメカニズムも2017年に解明されたようです。わりと最近ですね。
参照:メタボだと胆石が増えるメカニズムを解明 東北大学
■ 何が起こった?
薬価が、なんと1000倍アップ。一体何が起こっているのでしょうか。
ドラッグ・リポジショニング(リンク)は、既存薬にあらたな薬効をみつけていく研究手法を言います。これもその一貫なのです。ある程度、臨床試験をパスして、すみやかに販売できる制度となっています。ただ、臨床試験を組むというのは、なかなかにお金がかかるため、「新薬」としてあらたに登録され、薬価が算定されるのです。
今回の場合、脳腱黄色腫症の患者さんに、チノカプセルを服用しても全く同じ効果が得られます。個人的には、国が適応を認めてあげたらそれで良くないか?と思うケースですね。なお、チノカプセルは販売中止が決定しています(リンク)。原薬が確保しづらいためとの理由ですが…ソウナノカー。
■ 過去にはこのような例もあった
希少疾患の場合は、採算が合わないから高薬価になるというのは理屈としてはわかります。理解はできるけど、納得しづらいですよね。
もっとひどいな!と思ったのが、エクセグラン®という「てんかん」のお薬です。
エクセグラン錠100mg:15円
この薬は少量服用すると、パーキンソン病にも効くことがわかり、同成分でトレリーフ®という名で新薬として販売されました。
トレリーフ錠25mg:618円
当時、これはさすがにやりすぎやろ!と感じました。国が治験して、適応拡大させた方が医療保険の節約になるんじゃね?と思ったくらいです。そこまですると社会主義となるのかもしれないけども。
どちらもゾニサミドというまったく同じ成分の薬です。当時、よくエクセグラン錠が0.25錠で処方されていました。15円の四分の一で治療可能というわけです。ものすごいコスパが良いですよね。しかし、現在ではそれが禁止されている模様。
参照:「エクセグラン」が添付文書で適応外使用を“禁止”
医薬品のコストというのは、原価や製造費だけという単純なものではないことがわかります。
承認のための膨大なデータ。それを集めるための試験コスト、副作用をフォローするためのコスト、物流コスト、様々なコストがかかっています。昨今、ジェネリック医薬品の事故や不祥事が相次いでいますが、さすがに最低薬価が1錠5.9円は安すぎます。
参照:令和5年度薬価改定について
逆に抗がん剤や抗体医薬品は、効果の割には高すぎる薬価です。ワクチンにしてもそうです。抑えるべきものが抑えられず、安定すべきものが壊されていないでしょうか。普段使いできる薬ほど、適正な価格とすべきですよね。
チノカプセルの代わりは、ウルソ®というお薬が担います。これは超有名なお薬で、サプリメントとして販売してもいいんじゃいかと思うくらいのものです。次回は、ウルソ®について書こうかな。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
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