2025/11/13
こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。
最近話題の“トランス女性のスポーツ参加”ですが、実は国際スポーツ界はここ20年で大きく揺れ動いてきました。なぜルールが変わり、なぜ今、常識への“揺り戻し”が起きているのか。その背景を簡単にまとめてみました。

■ 歴史の流れを少し整理しておきましょう
1968年より、国際オリンピック委員会(IOC)は女性選手を対象に、性別検査が義務化されていました(リンク)。
ソウル五輪(1988年)に出場したスペインのハードル選手、マリア・パティノ氏は、外見的特徴と社会的性別は「女性」でしたが、1985年の神戸ユニバーシアード大会における遺伝子検査で「Y染色体(男性特有)」の存在が確認されました。
この方は、いわゆるトランスジェンダーではなく、性分化疾患(DSD)の1つ「完全型アンドロゲン不応症(CAIS)」でした。XY遺伝子を持ち、精巣も有しますが、アンドロゲン(男性ホルモン)の受容体が機能せず、男性としての発育が起こりませんでした。そのような例もあって、性別に関する取り扱いが非常にややこしくなっていました。
こうした背景もあり、1990年代には、女子選手全員に対する強制的な性別検査は国際大会で順次廃止されていきます。
■ IOCストックホルム合意
こうした議論を経て、2003年に「国際オリンピック委員会(IOC)」は、性転換後アスリートの出場規則をまとめた「ストックホルム合意」を発表しました。
条件は次のとおりです。
①思春期以前に性転換している場合、女子カテゴリー参加を認める。
②思春期以降の場合は、性転換手術後2年以上が経過し、適切なホルモン治療が継続されていること。
この合意に基づき、2004年のアテネオリンピックからトランス女性のオリンピック参加を正式に認めたのです。
参照:IOC approves consensus with regard to athletes who have changed sex
当時は「継続的なホルモン治療」とされていましたが、血中ホルモン濃度などの具体的な数値基準はありませんでした。また、性転換手術は必須要件とされていました。
■ 性転換手術の削除
2009年、世界陸上で金メダルを取ったセメンヤ選手は、外見的にも生活上も女性として扱われていました。しかし、海外メディアの報道では精巣を有することについて指摘もあり、女性基準を大きく超えるテストステロン値(男性ホルモン)が確認されたことは国際陸連も認めています。ただし、詳細な医学的情報(染色体や性腺など)は公式公開されていません。
この事例を機に、「女性カテゴリーの基準をテストステロン値で定めるべきだ」という議論が一気に加速します。
2011年、IAAFが「女性の競技参加資格に関する高アンドロゲン症ルール」を発表しました(リンク)。
2015年、IOCはIAAFの基準を踏襲して、トランス女性の参加要件を以下のように変更しました(リンク)。
① 性転換手術要件を完全に削除
② 条件はテストステロン値(10 nmol/L以下を12か月維持)のみ
③ 2003年の手術・2年要件は廃止
ところが2019年、IAAFは、「やっぱり10 nmol/Lではあかんわ。5や、5 nmol/Lにするわ!」と、これまた根拠はあやふやに半分まで数字を減らしたのです。

■ 科学と政治のスピード差と、IOCの丸投げ
科学研究は時間を要します。実は、テストステロンの量も根拠が薄く、エビデンスが弱いものでした。しかし、基準設定の判断には、政治的背景や世論にも左右され、かつ、”大会”という時間的制約もあります。そのため、科学研究の結果と齟齬が生じ始め、批判の対象にもなっていました。
2021年、IOCは、「公平で、包摂的、そして性自認や性の多様性に基づく差別のないIOCの枠組み」を作成しました。そこで、IOCとしてはテストステロンの基準値を設けず、”各種競技団体に考えてね、でも差別とかしないでねと、「丸投げ状態」”の文書を発表しました。
読んだ時に、「お花畑宣言か?」と思ったほど、人権や差別といった言葉しか出てこなかったです。理想だけを掲げて、現実対応は現場に丸投げといった印象を受けました。

■ IAAFの方向転換(お花畑→現実)
IAAFは、世界陸連(World Athletics)に名称変更されました。
そして2023年、”今までなにやったん?”という発表をします。
①12歳以降のトランス女性の出場禁止
②12歳以前に医学的な移行を行ったトランス女性は出場可能。ただし、血清総テストステロン濃度が 2.5 nmol/L 未満であり継続されていること
急な方向転換。それは基準を緩めた結果、様々なスポーツ競技で怪我人が続出したこと(当たり前)、科学的エビデンスが積みあがってきたことが理由です。
12ヶ月間、血清中総テストステロン値を10 nmol/L以下に抑制するという規制。これが男性のパフォーマンス上の優位性を排除するかどうかは、これまで精査されていません。治療開始から12ヶ月後でも除脂肪体重、筋面積、筋力の低下は通常約5%にとどまっています。筋力の優位性はわずかにしか損なわれなかった。→つまり無意味
参照:Transgender Women in the Female Category of Sport: Perspectives on Testosterone Suppression and Performance Advantage
世界ラグビーは2020年に、国際水泳連盟は2022年に、次々とトランス女性の参加禁止を発表し、とうとう世界陸連もそうせざるを得なくなったのです。
つまり、昔の理想や妄想が、現実によって覆されたということです。

■ そして現在に至る
IOCが、「トランス女性の出場禁止を検討する」というニュースが報じられました。

いかがでしょうか。IOCも丸投げお花畑状態ではいられないとなったのでしょう。
それでもなお、トランスジェンダーの権利を守れという声がありますね。でも、女性アスリートの声を聞かなくても良いのでしょうか。
多数が1つの競技をするからルールがあるのであって、そこに過剰な権利主張があると競技は崩壊しますよね。差別ではなく、”合理的配慮”が必要なだけであって、そこには多くの男性や女性の権利を侵害する上で成り立ってはいけないのです。それが分断を生み、差別を生むのです。
参考資料:
トランスジェンダーおよびインターセックスのスポーツ大会への参加条件緩和肯定度
スポーツと性別の世界
Chapter 8 - IOC transgender athlete policies and history
これからは、あまりに行き過ぎたLGBT思想、ジェンダー思想が、「常識」や「伝統・文化」、そして「生物科学」への揺り戻し始めた時代なのだと感じました。確かにアンドロゲン不応症などは不憫であることは間違いないですが、その特異例を基準にしてしまうことで、全体が歪んでしまうことも厳しい現実として認めるべきではないでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
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