長田 たくや ブログ

【くすり】 リンと腎臓、そして食生活 新薬フォゼベル®が示す新しいアプローチ 【テナパノル】

2025/10/31

こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。
透析しなければならないほど腎臓の働きが低下すると、体内のリンをうまく排出できなくなります。
その結果、血管や骨に悪影響を与えるため、透析患者さんにはリン吸収抑制薬が処方されます。
今回は、2024年に登場したまったく新しいタイプの薬「テナパノル(フォゼベル®)」をご紹介します。


知られていない透析の話

■ 動脈と静脈をつなぐ!?
人工透析を受けるためには、まず腕の血管を手術しないといけません。「シャント」と言います。透析をするために、静脈の血流量を増やすために実施します。血管が弱くなってくると、とても太い人工血管を挿入します。
学校でも勉強した記憶がなかったので、初めて知った時はかなり衝撃的でした。

引用:蓮田一心会病院

透析となるのは、糖尿病患者が多いです。糖尿病は生活習慣ですね。私はこの手術のことをお話するだけで、糖尿病患者さんの治療意欲は高まるんじゃないかと思っています。

リンの排出ができない

■ 食事による影響
腎機能が低下すると、「リン」という成分が排出しにくくなります。つまり、血中のリンが増加してしまうのです。リンはカルシウムと結合する性質があるので、リン酸カルシウムとして組織に沈着したり(動脈硬化)、カルシウム濃度の低下を受けて体が反応して、骨を溶かそうと副甲状腺(PTH)が働いてしまいます(骨粗しょう症)。

引用:リン代謝機構

リンは非常に影響があるのですが、食事中に多く含まれています。食物に含まれる有機リンは消化してからの吸収なので、急激な上昇はありませんが、加工食品にほぼ必ず添加されている無機リンは、ダイレクトに吸収されてしまいます。

■ 食品添加物でのリンの役割
無機リンは「pH緩衝剤」としての化学的役割を持ちます。つまり、酸性物質やアルカリ性物質が混ざっても、pHを変化させない、安定させる役割を果たしているのです。

引用:UltraBem

pHを緩衝して腐敗や変色を防ぐ――これがリン酸塩の基本的な役割です。
賞味期限を延ばすために必要だけど、この大量のリンが腎機能が悪い人にとっては大きなデメリットになってしまうのです。

薬物療法

■ これまでの医薬品
食べ物のリンが悪いのだから、それを吸収しないように事前にキャッチすれば良いと言う発想に至ります。

(Aグループ):金属元素がリンと結合
カルタン®(沈降炭酸カルシウム)
リオナ®(クエン酸第二鉄水和物)
ホスレノール®(炭酸ランタン水和物)
ピートルチュアブル® (スクロオキシ水酸化鉄)

(Bグループ):ポリマー樹脂で静電気的にキャッチ
キックリン®(ビキサロマー)
フォスブロック®/レナジェル® (セベラマー塩酸塩)

これらは、リンと結合して体が吸収する前に、糞便と一緒に出すのがコンセプトです。しかし、鉄などの金属が絡むため、どうしても便秘が生じやすくなります。

■ 新しい医薬品:テナパノル
2024年に日本で登場したのがテナパノル、商品名をフォゼベル®です。まずこの構造式をご覧ください。ラスボスみたいな大迫力!

リンは英語で、フォスフォラス:Phosphorusですので、商品名には「フォ」や「ホス」などが付きやすいですね。フォゼベルも、新規(novel)作用機序のリン(phosphate)吸収阻害薬から命名されています。”キックリン”とか”ピー(P)トル”は日本語らしくて良いですよね^^

リンを結合させるのではなく、こちらは腸管に直接作用して、リンの吸収を抑えるという全く新しいコンセプトの薬剤です。

■ NHE3阻害薬
腸管にNHE3※という関門があります。テナパノルは、これを阻害します。このNHE3自体に、リン吸収との直接的な関係はありませんが、この機能を邪魔することで、細胞間のスキマが狭くなります。リンは細胞の隙間から濃度依存的(濃いところから薄いところへ流れるイメージ)に吸収されていると考えられており、この通路が狭くなることで吸収が抑えられます。

テナパノルにより細胞内の水素イオンが排出できず、酸性に傾くことで起こる現象と考えられています。

引用:リン代謝機構

※、Na+/H+ exchanger isoform 3:細胞外のナトリウムと細胞内の水素イオンを交換するトランスポーター

なお、おもしろいことに、この構造式の両サイドの部分がNHE3に作用するとのこと。青の部分だけでも良いのですが、そうするとこの薬剤自体が体に吸収されてしまうのです。そうすると体中のNHE3が機能しなくなるため、副作用リスクが高まります。そこで、このようにつなぎ、大きな分子にすることで、体に吸収されないように工夫をされています。

薬効だけなら青部分だけでOK。しかし、体に吸収をさせないために巨大に。

とても興味深いですね。

ただねこの薬…5mg、10mg、20mg、30mg錠と、規格がやけに多い。調剤する時に難しくなるし、なによりも場所を取る(笑)
薬局泣かせの医薬品です。
通常であれば等倍されるものですが、40mgでなく30mgなのは、おそらく効果の頭打ちがあったものと予想されます(降圧剤のブロプレス®も同じような規格)。


新しい医薬品(テナパノル)について書きました。そもそも、加工食品などを極力食べなければ良いというお話なのですが、まぁ、便利なものは手放せない気持ちもよく分かります。カーナビなしでは運転が怖くてできないようなものです。

だからこそ「食育」が大切だと思います。知識を知ったうえで、どう行動するかが大切ですね。
「知れば、変わる。変えられる。」

余談ですが、星のカービィのラスボスに「マルク」というキャラがいるのですが、この構造式を見た時にマルクが浮かびました。開発元のArdelyx社は、きっと星のカービィSDXからインスパイヤされたんやね(><)

引用:ニコニコmugenwiki

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
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著者

長田 たくや

長田 たくや

選挙 川西市議会議員選挙 (2022/10/16) [当選] 1,680 票
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肩書 参政党の市議会議員で薬剤師でもあります
党派・会派 参政党

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