長田 たくや ブログ

【くすり】 血小板ちゃんは意外と複雑② 【抗血小板薬】

2025/5/2

こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。
前回①の続きです(リンク)。

長いので結論から申します。
人間は生命維持のため止血システムを持っています。例え血小板内で1つの止血経路がダメになっても、異なる経路から止血をすることができる安全装置が備わっています。人間の体って不思議で複雑ですね。


■ 4つの受容体
今日は4つの経路(受容体)を書きます。

図を見てもわかるように、血小板は止血することが役割なので、止血できる3つのルートを持っています。
一方、ブレーキも必要なのです。全部が固まってしまうと細い血管を次々と詰まらせてしまいますね。抑制するルートが1つあります。
つまりはバランスが大切。人も自然も、細胞レベルでそうなのです。

■ ADP(P2Y12)受容体
抗血栓薬で中心的な役割を果たします。
ADP(アデノシン二リン酸)が血小板にくっつくと、アデニル酸シクラーゼという酵素を抑えこみます。アデニル酸シクラーゼが抑えられると、環状AMP(cAMP)が減ります。cAMPは通常、小胞体からのカルシウムイオンを放出を抑える働きをしていますが、それが減ることでカルシウムイオンが飛び出てしまい、血小板が活性化されて血栓が作られます(下図の左)。

薬でADP受容体にフタをしますと、アデニル酸シクラーゼはcAMPをどんどん生み出します。cAMPは小胞体を安定化させるので、止血できません。そのフタ役が以下の薬たちです。

引用:左図は日本止血学会より

【医薬品について】
チクロピジン(パナルジン®):
小腸から吸収され肝臓を通るときに、有毒な代謝物を発生してしまい、血栓性血小板減少性紫斑病という嫌な副作用が発生します。

クロピドグレル(プラビックス®):
肝臓を通ることで初めて薬効を示すようになるよう設計されており、チクロピジンのような嫌な副作用が軽減されています。したがって、クロピドグレルがメイン処方の座に君臨しました。

しかし、弱点がありました。肝臓にある”CYP2C19”という酵素がなければ、効果が発揮しにくいことがわかったのです。残念なことに、日本人はCYP2C19の活性が低い人が多い人種とされています。

プラスグレル(エフィエント®):
これはCYP2C19の影響を受けにくいとされ、安定した効果を発揮できるとされています。つまり日本人向きですね。

チカグレロル(ブリリンタ®):
最新の薬剤です。チエノピリジン系とは構造が全く異なりますよね。これには大きな違いがあります。
チエノピリジン系は、血小板にくっついたら絶対に離れないのにたいして(非可逆性)、チカグレロルはついたり離れたりできる薬なのです(可逆性)。チカグレロルの構造は、ADP(アデノシン)の形にそっくりなのです。つまり、ADPと競い合って受容体にくっつくので、勝ったり負けたりが起こるわけです。安全性の面で優れているとされています。

■ PGI2受容体刺激薬
プロスタグランジンI2(PGI2は、血小板のブレーキ役です。血を固まりにくくさせます。

(止血)
ADPで刺激➡アデニル酸シクラーゼ抑制➡cAMP減少

(血が固まりにくい)
PGIで刺激➡アデニル酸シクラーゼ活性➡cAMP増加

PGI2を薬にすれば簡単なのですが、PGI2は実に不安定な物質なのです。そこで、飲み薬で服用できるように改良したのが、ベラプロスト(ドルナー®)です。

■ ホスホジエステラーゼ阻害薬
血小板内のcAMPが減る=止血(凝血)、cAMPが増える=血がサラサラになる。
cAMPが重要な役割を果たしていますが、これを分解してしまう酵素があります。ホスホジエステラーゼ3(PDEⅢ)と言います。cAMPも増えすぎると困るので調整役が備わっているのです。

ホスホジエステラーゼの機能をストップさせれば、cAMPが分解されずに増え続けるので血がサラサラになるのです。

抗血栓薬のホスホジエステラーゼ阻害薬は以下の2種類があります。なおホスホジエステラーゼは現在11種類もあるとされていますが、そのうち3、4、5番が医薬品に利用されています。血栓に関するのは、3番(PDEⅢ)になります。

■ セロトニン拮抗薬とトロンボキサン拮抗薬
タイトル通り、血小板ちゃんは複雑><。

血小板は活性化すると、セロトニントロンボキサンA2という物質を出します。それが自分もしくは他の血小板にくっつくと、今度はcAMPではなく、イノシトール三リン酸と言う物質が、小胞体からカルシウムイオンをぶちまけます。
また、ジアシルグリセロールという物質は、細胞膜に作用してカルシウムが通る口を開けてしまいます。つまり、外部からカルシウムイオンを取り込むのです。
その結果、血小板が活性化してしまい血栓をつくります(下図の左)。

セロトニンとトロンボキサンA2の受容体にフタをする薬があります。
ただし、トロンボキサンA2を邪魔する薬は、抗血栓効果が弱いため臨床使用されません(アレルギー性鼻炎薬として使用)。開発もされていましたが中止となっているようです。

さて、抗血栓薬をまとめてみました。血小板ちゃんは核すらないような細胞のカケラで、止血(かさぶた)を作るだけの存在ですが、そのプロセスには多くの物質が関わり、それらのメカニズムから医薬品が開発されているのです。


血栓(かさぶた)は、生命維持にとって非常に重要ですが、血管が詰まってしまい逆に命を奪うこともあるのです。それに対抗する医薬品が、抗血栓薬です。この薬を使うと血栓を作られにくくはなりますが、時間をかければ止血はできます。多数の止血ルートがあり、セーフティネットとして機能しているのがわかります。

しかし、薬剤の高用量や、多剤併用などで止血機能が著しく低下すると、ちょっと頭を打っただけで出血が止まらずに、死にいたることもあります。非常にリスクがある薬剤なのです。近年の薬は改善されていますが、血小板の止血メカニズムは変わりはありません。服用している方は十分な注意が必要です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
ご意見・ご感想はこちらまで↓
takuya_nagata_1026@yahoo.co.jp
•━━━━━━• ∙ʚ🐤ɞ∙ •━━━━━━•
各種SNSもフォローを宜しくお願いします。
エックス(旧ツイッター)
Facebook
インスタグラム
LINEオープンチャット(ニックネームで参加可能)
•━━━━━━• ∙ʚ🐤ɞ∙ •━━━━━━•

この記事をシェアする

著者

長田 たくや

長田 たくや

選挙 川西市議会議員選挙 (2022/10/16) [当選] 1,680 票
選挙区

川西市議会議員選挙

肩書 参政党の市議会議員で薬剤師でもあります
党派・会派 参政党

長田 たくやさんの最新ブログ

ホーム政党・政治家長田 たくや (ナガタ タクヤ)【くすり】 血小板ちゃんは意外と複雑② 【抗血小板薬】

icon_arrow_b_whiteicon_arrow_r_whiteicon_arrow_t_whiteicon_calender_grayicon_email_blueicon_fbicon_fb_whiteicon_googleicon_google_whiteicon_homeicon_homepageicon_lineicon_loginicon_login2icon_password_blueicon_posticon_rankingicon_searchicon_searchicon_searchicon_searchicon_staricon_twitter_whiteicon_youtubeicon_postcode