2025/8/8

8/8「両院議員総会」で見えた“続投”と“前倒し” 8月8日午後、自民党本部で開かれた両院議員総会は、参院選大敗の総括と今後の党運営が主題となり、石破茂首相は「日米関税合意の実行」や「農業・防災政策の継続」を理由に陳謝とともに続投の意向を明言した。
総会では総裁選の前倒しを求める声が相次ぎ、総裁選挙管理委員会が国会議員と47都道府県連の賛否を確認する手続きに入ることで一致した。開催は14時半すぎ開始で約2時間。人事(内閣改造・党役員人事)については「今の時点で考えていない」と否定している。
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石破氏の具体発言には「対米関税合意は実行で課題が多く、産業従事者の不安を和らげたい」「農業や防災をどう進めるか、引き続き日本国に責任を持つ」が含まれる。総裁選の前倒しの是非は、党則に基づき過半の要求が必要(いわゆる“リコール規定”、2002年制定以来未発動)で、都道府県連の約3割が退陣・刷新を求める文書をまとめたとの報道もある。首相は「党則に沿って運営」とし、前倒しの要件遵守を示唆した。
首相動静が物語る“対外・安全保障”と“経済”の二正面対応 8月7日の首相動静を見ると、防衛・外務・財務・経産など横断的に局長級が集中的に入邸しており、TICADや欧州・中東、北米など多地域の外交アジェンダと、経済財政諮問会議を同日にこなす過密日程だった。特に外務・防衛・経産・財務の連続面会は、通商・エネルギー・安保を束ねる“総合調整”の色合いが濃い。夕刻には村上総務相、武藤経産相とも相次ぎ面会している。
“下振れ→持ち直し?”の揺らぐ足もと 7月の主要世論調査を概観すると、NHKは7月4–6日調査で31%(先週比-3pt)、共同通信は7月21–22日で22.9%(前月比-9.6pt)と下押し。一方、毎日新聞(7月26–27日)は29%(前月比+5pt)と持ち直しを示し、同調査の「次の首相」でも石破氏が20%でトップとなった。参院選大敗と続投のミスマッチを巡る評価の錯綜が読み取れる。
2024年総裁選の構造を復習 2024年9月の総裁選は、1回目で過半数に達せず、上位2名の決選投票へ。決選は国会議員が再投票し、都道府県連に47票(各1票)を割り振る特則となる。最終的に石破氏が215(議員189+都道府県26)、高市氏が194(議員173+都道府県21)で逆転勝ちした。党員票の総量では高市氏がわずかに上回ったが、決選での議員票と都道府県票の積み上げが勝敗を分けた。
都道府県別の党員・党友票では、高市氏が大都市部(東京・大阪・愛知など)を中心に18都府県でトップ、石破氏は地方を中心に24道県でトップ。決選の47都道府県票配分では石破26、高市21と、地方基盤の厚さが石破を押し上げた。
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分散した権力、県連と中堅・若手の反乱 政治資金問題を機に派閥の解体が進んだ自民党では、従来の「派閥領袖=票読み」回路が弱体化。都道府県連の意向や中堅・若手の動きが相対的に重くなる中、参院選大敗後に「石破おろし」が顕在化した。とりわけ、茂木敏充前幹事長が動画投稿で退陣を迫ったことを契機に、北関東選出の中堅・若手らが責任論を拡散。
石破側は対米関税合意を“政策遂行の大義”として続投を正当化しており、党内の多数派形成はなお流動的だ。党則6条による前倒し発動は過半要件が高く、県連の3割が刷新文書をまとめるなど裾野は広がるが、実際の可決は不透明である。
「公明以外」の選択肢は現時点で否定的 石破首相は過去に「公明以外の連立は今、想定していない」と述べており、与党の枠組みは自公が基本線。国民民主の玉木代表は参院選後に「石破政権と組むことはあり得ない」と明確に否定している。立憲民主は内閣不信任のカードを状況に応じて構える構えを見せ、維新も政権との距離を取りつつ攻勢を強める。自公の過半割れ局面では、法案ごとの協力打診や個別政策連携が現実的シナリオだが、恒常的な「政界再編」にはなお時間がかかるとの見方が多い。
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「バランス・オブ・パワー」「賃上げと投資」「防衛財源」 施政方針演説(2025/1/24)で、石破氏は「バランス・オブ・パワー」を掲げ、日米同盟を軸に同志国連携を拡大しつつ、自助努力としての防衛力強化と危機管理の総合化をうたった。経済は「賃上げと投資が牽引する高付加価値型の成長経済」「投資立国」をキーワードに、官民投資と規制改革を合わせ技で加速する青写真だ。
防衛財源は“いつから・どの税か”が焦点。自民党の整理では、令和8年(2026年)から段階的に税制措置を進め、所得税は付加税1%と復興特別所得税を同率引き下げで家計負担を増やさない設計、たばこ税は2026年4月から加熱式の適正化、2027年から3段階の引き上げを想定。法人税は安定財源の一角として位置づける。実施時期の「年内決着」発言などは調整過程だが、方向性は“持続的・安定財源”の確保にある。
防衛畑の“政策通”と素顔 1957年生まれ。衆院当選13回。第102・103代内閣総理大臣、第28代自民党総裁。防衛庁長官・防衛相、農相、自民党幹事長・政調会長など要職を歴任した。安全保障政策に通じる一方、戦闘機や軍艦のプラモデル、鉄道旅行、料理(カレー)やラーメン振興など、多彩な“オタク気質”も知られている。人物像の多面性は、地方重視の政治姿勢とも重なる部分がある。
第1次から第2次へ、変更点と継続の線 第102代内閣(2024/10/1)は、皇居での親任・認証を経て正式発足。初入閣13人の“刷新”と、林官房長官などの“重厚さ”をミックス。第2次(2024/11/11)は与党過半割れ後、総辞職と再指名を経て組閣し、法務に鈴木馨祐、農林水産に江藤拓、国交は公明の中野洋昌を新任、他は再任で安定性を前面にした。基本方針は、日米同盟を軸に安保強化、デフレ脱却を最優先、将来の「防災庁」設置、地方創生交付金倍増など。
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“前倒し”の行方と政局の三つの山
“政策遂行の正統性”と“党内民主主義の正統性”の衝突 石破首相は、対米関税合意の実行、農業・防災の継続、国難対応という「政策遂行の正統性」で続投を主張する。一方、参院選大敗と主要選挙での連敗を受ける「党内民主主義の正統性」は、前倒し論や刷新要求として結晶化しつつある。派閥解体後の“票の流れ”は、都道府県連や中堅・若手により分散し、従来の与党力学では捉えにくい。支持率は荒れ模様だが、毎日調査の“次の首相”で依然石破が首位という矛盾する指標も見える。結局、8月末の総括報告書と、総裁選管の集計が当面のクライマックスであり、そこで“政策優先”と“党内手続”の折り合いをどこに付けるかが、秋の政局の薄明かりを決めるはずだ。
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