2024/1/20
金井たかしの「江戸川区情報」(筆者金井たかし(高志)のプロフィールを見る)江戸川区議会議員・弁護士
この2023年の年末に町会・自治会の役員の方々とお話をした際に、町会・自治会がお手伝いをしている神社や寺院のお焚き上げについての苦情があることを伺いました。
また、先日、「アベマプライム「毛筆を使わず…国立小で不適切指導/どんど焼き中止」(みんなでしゃべるとニュースはおもしろい)に出演をさせてもらいましたが、どんど焼きに対する苦情についてテーマとなりました。
そこで、お焚き上げやどんど焼きに対する苦情について法律家の視点から考えてみたいと思います。

まず、お焚き上げは、神社などで古い神札やお守りなどを焼くことです。そして、どんど焼きは、小正月に行われる火祭りの行事で、松の内まで飾っていたしめ縄や松飾り、昨年にもらっていたお守りなどを持ち寄って燃やすことです。
江戸川区に長年住んでいますが、私の知る限りでは、江戸川区内ではどんど焼きはあまり行われておらず、12月31日の大晦日のお焚き上げがよく行われているものと思います。
まず、お焚き上げやどんど焼きが法律的に規制されているかどうかです。廃棄物処理法は、焼却設備を使用せず廃棄物を焼却することを禁止しています。ただ、その施行規則で、風俗慣習上や宗教上の行事のための廃棄物の焼却(大文字焼き、どんど焼き等)は許されています。
また、東京都の条例(「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」)でダイオキシン類による健康や環境への被害を防止するために、廃棄物等の焼却を禁止していますが、その条例の施行規則で伝統的行事及び風俗慣習上の行事のための焼却行為は許されています。
このように政的な法律等の規制の対象ではなく許されているものですが、焼却行為によって発生する煤煙、悪臭などの周辺の生活環境への問題が、私人間の紛争問題として民事的に違法かどうかは別に問題となります。
一般的に人々が社会生活をするうえで多少の煤煙等を発することは避けられないことから、煤煙等を発することは一律に違法とはされていません。社会生活上一般に受忍すべき範囲を超える場合に違法とされることになっています。これは受忍限度論と呼ばれるものです。
お焚き上げやどんど焼きは、一年に一度の行事の出来事であり、その煤煙等の発生は短時間であり、昔から地域社会の神社や寺院の行事の一部として長い間受け入れられてきたものです。
以上から考えれば、お焚き上げやどんど焼きの煤煙等については、もちろん、その実施される規模にもよりますが、通常は、社会生活上一般に受忍すべき範囲内の煤煙等であり、違法なものではないと考えられます。
ただ、お焚き上げとどんど焼きの際に、お飾りなどについているゴム類などが焼却され悪臭が出ることで近隣から苦情が出ることは否定できませんので、そのような問題が発生しないように、焼却する物をきちんと分別するということが必要になると思います。
以上を踏まえて一般的に言えば、お焚き上げとどんど焼きに対する近隣の住民からの煤煙等についての苦情、法的に言えば、お焚き上げとどんど焼きを差し止める、また、慰謝料(損害賠償)を請求することについては法的な根拠はないことになります。
お焚き上げとどんど焼きを行っている神社や寺院としては違法なことをしていませんので、法的には近隣の住民からの苦情に対応する義務はないものです。また、お焚き上げやどんど焼きを中止する法的な義務はないものです。
法的に義務がないことを前提として、神社や寺院がその判断で、その地区の住民と良好な近隣関係を保つために話し合いをし、お焚き上げやどんど焼きの際に燃やすものを分別する、また、時間を短縮するなどの対応をすることはありえます。
しかしながら、法的な理由のない少数の住民から苦情で伝統的な行事であるお焚き上げやどんど焼きが中止されることまでは行き過ぎと考えられます。お焚き上げやどんど焼きの煤煙等の問題については、伝統的な文化を次世代に承継するという視点から、対応を考えていくべきと思います。(筆者金井たかし(高志)のプロフィールを見る)
金井たかし(高志) 江戸川区議会議員・弁護士(元 武蔵野大学法学部・大学院教授 元LINE(株)監査役)
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