2022/6/23
葛飾区 保育所へ誤支給5.1億円(金井たかしの「江戸川区情報」)
江戸川区で誤支給の問題が発生していましたが(NHK NEWS WEB 首都圏 NEWS WEB 2022年6月17日「江戸川区 非対象の85世帯にコロナ給付金を誤給付」)、2022年6月10日に、江戸川区の隣の葛飾区において保育所への補助金を4年間にわたり合計5億1000万円を誤支給していたことが分ったという報道がなされました。その後、6月17日に葛飾区から人件費分は返還を求めないという方針が発表されています(NHK NEWS WEB首都圏 NEWS WEB「東京 葛飾区 私立認可保育所への補助金誤支給は総額5億円余」)。

(写真は本件の誤支給の保育所とは関係はありません)
この報道記事を見て、弁護士の立場から法律的に考えてみました。保育所には条例で定められた補助金の金額以上の金額を受領する法的な理由がありませんので、その金額につき保育所は葛飾区に返還をする義務があるものです(民法703条・704条)。これは「不当利得」というもので、法律上の原因がないにも拘らずお金を受領しているということで、そのお金を返還する義務があるといことです。なお「『不当』利得」という言葉には善悪の意味はなく、単に「法律上の原因がない」利得という意味です。
他方、葛飾区は、保育所に対して、過払いがされた補助金の返還請求権(法律的には「不当利得返還請求権」といいます)を持つものです。6月17日に葛飾区長は保育所へのこの不当利得返還請求権につき人件費に使われた分は返還を求めないと述べたことが報道されています。
しかし、返還を求めない、すなわち請求権を放棄するということについて考えると、地方自治体が金銭債権(本件では不当利得返還請求権)を放棄することにつき、その元となっているお金が税金であることからすれば、簡単に放棄することはできないもので、地方自治法や条例で定められている手続きを踏まないといけないものです。
地方自治法の条文では、地方自治体の債権の場合、議会の議決に基づかなければ債権を放棄することはできないものとされ、例外的に政令または条例に特別の定めがある場合には議会の議決は不要とされています(地方自治法96条1項10号)。なお、葛飾区には「葛飾区の債権の管理等に関する条例」があります(今回の件でこの条例の適用の有無が問題になるかもしれません)。
今回、新聞などで、葛飾区の方針として、人件費に使われた分につき保育所に対する返還請求権を放棄するということが報道されていますが、弁護士の立場からすると、どのような手続きがなされて、葛飾区の方針の発表がなされたのか手続きを知りたいものです。法的には5億1000万円の金額(全部または一部)を葛飾区長の一存で放棄できるものではないはずだからです。
葛飾区には、どのような理由で5億1000万円の返還請求権(保育所に対する不当利得返還請求権)を放棄するのかについて法律・条例の手続きに則った過程を区民に説明をする必要があると思います。
以上のようなことを考えていましたところ、6月23日に開かれた葛飾区議会の保健福祉委員会で、葛飾区側は人件費として適切に使われたのであれば、返還を求めずに対応することができないか検討する方針を示したことが報道されています(NHK NEWS WEB首都圏 NEWS WEB 2022年6月23日「保育所補助金“5億円誤支給” 葛飾区 返還求めず対応検討方針」)。返還を求めずに対応できないかを検討する方針ということが報道されたのですが、ただ、従前の葛飾区長による説明内容と多少の違いがあるように思われます。23日の説明のほうが法的には妥当な説明と思います。
この葛飾区の誤支給の問題については、葛飾区として保育所に返還請求をするのか否か、また、返還請求をするとすれば、どの部分の金額を請求して、どの部分の金額の請求を放棄するのか、など検討する内容がいくつかあると思います。葛飾区議会で議論される際には様々な意見がでるものと思われますので、その内容について適時に公開してもらいたいものです。(筆者金井たかしのプロフィール)
「金井たかし 江戸川区の政策研究(金井たかし公式HP)」 (東京都江戸川区)
弁護士 金井高志(金井たかし)
(江戸川区在住 弁護士 武蔵野大学[江東区]法学部・大学院教授)
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