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金井 たかし ブログ

校則の改定手続き 

2021/6/4

校則の改定手続き

 現在、各地の学校で校則を見直す動きが広まっていることが報道されています。このことは大変よいことであると思います。ただ、文部科学省は、校則を見直すことを学校に対して呼びかけをしていますが、校則を見直すために手続きについて、積極的に提示をしているわけではありません。

 また、現在、校則改定の動きがある中で、いくつかの課題が提起されています。すなわち、「生徒の意見をどのように集約するかについて、例えば生徒の発達段階に応じた対応が必要となるであろうし、あるいは、生徒の中のマイノリティの意見をいかに表出するかも難題であろう。さらには、規律事項によってはむしろ生徒の参加を消極的に理解することが適切な場合もあろう。」との指摘がなされています(佐藤修一郎「学校生活における生徒の自律と校則についてー裁判例と若干の考察―」白山法学14号(2018)47頁)。

 そのような課題があり、また、学校において、具体的にどのように校則を改定するかの手続きに慣れていることは、ほとんどないと思います。そこで、法律の専門家である弁護士からのアドバイスを受けつつ、校則改定の手続きのルール作りを進めることが必要であると思います。

 弁護士として、企業組織内のルール作りに長年関与してきた経験から、ブラック校則を見直すための手順としての試案を提示しておきたいと思います。(この部分は、主に、私の弁護士としての経験に基づく試案にすぎませんので、他の関係者の方のご教示をいただきながら、改訂をしていきたいと思います。)

1 校則を見直す目的は何であるかの確認

(1)現行の校則におけるブラック校則と呼ばれる、時代に合わず、生徒の人権の過度の制約となっている条文を改定することが中心目的となります。そこで、その前提として、生徒及び保護者の視点で問題となる条文を洗い出し、整理することが必要になります。その際に、どのような理由で、現在の学校の状況に合致していないのか、ということを整理することが重要になります。また、その場合に、どのくらいの割合の生徒・保護者が問題視しているか、という問題点の重要度を考えることも大切と思います。

 このブラック校則の問題点を洗い出すことについては、全生徒と全保護者へのアンケート調査を行うことが必要になります。

(2)校則の改定に生徒たちを関与させることで、自分たちの決まりは、自分たちで作って、自分たちで守るという民主主義の基本を身につけさせ、自ら判断し行動できる生徒を育成することも二次的な目的となります。

2 アンケート調査結果に基づきブラック校則と言われる条文の制定理由を調査

 ブラック校則と言われている条文について、その校則が制定された時点における制定理由を調査します。これは、学校の教員の役割となります。ただ、文書管理規程等に基づき関係文書が廃棄されていることも多いと思われ、制定時の制定理由を調査することができない場合も多いと思われます。そのような場合には、生徒・保護者・教職員で、その条文の制定理由(法律学的には、校則の立法事実・立法趣旨というもの)を考えてみることが必要です(制定時期がわかるのであれば、時代背景を考えて、どのような理由で、その校則の条文が規定されたものであるかを考えてみることが重要になります)。

 全生徒と全保護者に対するアンケート調査結果について、校則改定委員会を設置して、それを協議・検討することになります。

 熊本市教育委員会「校則・生徒指導のあり方の見直しに関するガイドライン」(2021月3月)(以下「熊本市ガイドライン」と呼びます)では、校則改定委員会について、先進校の例として、以下のように記載されています。(先進校の例としては、校則改定委員会について「ドリーム委員会」の名称が付されています。)
「生徒会執行部(4名)
 生徒会執行部以外(6名)
 保護者(5名)
 教師(5名)  計 20名
・委員長はPTA会長
・副委員長は生徒会長、教頭」
 このようなメンバーで校則改定委員会を構成することが先進校の例として記載されていますが、生徒、保護者、及び教師の3つのグループから、何人の代表者(委員)を選出するか、また、どのような方法で代表者(委員)を選出するかという前提条件の検討も必要になると思います。この点、熊本市ガイドラインでは、「学校外から広く意見を聴くため、各学校の判断で、学校評議員等を加えても構いません。」また「協議にあたっては、教職員と児童生徒、保護者などの人数のバランスを考慮します。」とされています。

3 ブラック校則の制定理由が現在も妥当するかを検討=改定の必要性の有無の検討

 校則改定委員会において、ブラック校則と言われて、問題視されている条文の制定理由が、現時点でも、残っているかどうかの確認・検討を行います。ブラック校則と言われている条文の制定理由について、現在では、その制定理由には正当性・合理性がない、すなわち、学校の教育目的の達成のために必要かつ合理的な範囲内においてその条文が制定されていない、ということであれば、そのブラック校則の条文は改定が必要であるということになります。

 熊本市ガイドラインでは、以下のように記載されています。
「①~③に該当する規定については、各学校において必ず改定してください。④の規定については、各学校において見直して下さい。①生まれ持った性質に対して許可が必要な規定(例)地毛の色について、学校の承認を求めるもの 他 ②男女の区別により、性の多様性を尊重できていない規定(例)制服に男女の区別を設け、選択の余地がないもの 他 ③健康上の問題を生じさせる恐れのある規定(例)服装の選択に柔軟性のないもの、選択の余地がないもの 他 ④合理的な理由を説明できない規定や、人によって恣意的に解釈されるようなあいまいな規定」

4 ブラック校則の改定内容を決める

(1)改定すべきブラック校則の条文について、どのように条文を改定すべきかの案を作成する。この場合、改定されるブラック校則改定案について、学校が教育目的を達成するために必要かつ合理的範囲内であるかどうかに留意しなければなりません。

 改定案の作成の際に、どのような理由で、どのように改定しているかを明確に文書として残す。どのような理由であるかについては、校則の条文の制定趣旨として極めて重要な意味を有するものであることから、それが整理されて記載された文書は、保存年限を決めずに、文書保管をしておくことが大切です。

(2)ブラック校則の条文の改定案について、生徒・保護者から意見を集める。

 全生徒・全保護者から改定案に対するコメントを出してもらうことが好ましいと考えられます。この場合、集める方法をどのようにするかを検討する必要があります。コメントを出してもらうにあたり、改定すべき校則についての説明会をリアルで実施する、また、リアルで実施しない場合、SNSを使用して意見を集めることが考えられます。そして、説明会の実施やSNSの使用により集めることができた意見を整理します。
(これは、地方自治体におけるパブリック・コメント制度と同様な手続きとして位置づけることができます。)

(3)集められた意見を整理し、それに基づいて校則の条文の改定案を作成する。そして、それを制定権限を有する校長(学校)に提案する。

 この点、「熊本市教ガイドライン」において、先進校の事例として、「提案内容について、委員の立場の代表者の過半数(生徒5・保護者3・教師3)を得た場合、校長へ提案」と記載されています。ここでは、生徒、保護者、また、教師の3つの立場の代表者委員のそれぞれにおいて過半数の賛成を得られる場合に、校長に対して提案をすることができるとされています。
 校則改定委員会において、校長への校則改定の提案をする際に、どのような決議方法を採用するかについては、各学校において検討をしなければならないものと考えられます。

5 校長の承認手続き
 校則改定委員会により校則改定についての提案がなされた場合に、校長がそれを承認すれば、学則に反映されるものとなります。
 この点、熊本市ガイドラインでは、「校長は、協議の結果を尊重することを基本とするが、協議での結果と異なる決定をする(校則制定の有無や校則の内容)場合は、教職員や児童生徒、保護者へその理由を説明してください。」と記載がなされています。
 この点、校長は、校則の制定・改定権限を有するものですから、校則改定委員会の提案には法的拘束力はなく、校長は、その提案に従わない場合でも、違法の問題は生じません。「コンプライ・オア・エクスプレイン」(提案を了承するか、了承しない場合には、その理由を説明する)の手法によることになると思います。すなわち、校則改定委員会の提案の中に、その学校の個別事情等に照らして、校長として了承し、校則を改定することが適切でないと考える条文の提案があれば、それを「了承しない理由」を十分に説明することにより、一部の校則の改定案の提案を了承しないことが認められると考えられます。

 

地方自治体・学校の法律問題に関する調査・研究

自治体スクールコンプライアンス研究所

http://www.jsc-i.jp  代表 金井高志

 

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肩書 弁護士・武蔵野大学(江東区所在)法学部教授
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