2024/2/16
競馬、行けいば~。

認定NPO法人サラブリトレーニングジャパンの第二弾である。岡山県加賀郡の吉備中央町という人口1万人ほどの小さな町だ。歳入は約120億円で財政状況は健全な自治体である。
つい先日、経済産業省のデジタル田園都市国家構想のレクを受ける機会があった。特区の中でも一般的な特区ではなくより高度な革新的事業連携型国家戦略特区のデジタル田園健康特区の代表例として吉備中央町が長野県茅野市と石川県加賀市と共に指定されていることが説明された。デジ田というと地方創生事業の道の駅を想像するが吉備中央町の特区の指定は医療分野である。岡山県の高原地帯に位置する吉備中央町は発病後に救急車を呼んでも病院への搬送に時間がかかる。そこで救急車の中での救命救急措置の範囲を拡大しエコー検査やアドレナリンの静脈注射などを行えることを特区として規制緩和を受ける。特区では岡山大学と連携し母子手帳の電磁化や予防医療のAI活用などで官学が協働することとした。
吉備中央町は令和3年に公表した第二次総合計画でメンタルヘルスタウン構想を策定しこれまで蓄積してきた医療体制と医療情報を活用した健康管理体制を構築することを目指している。吉備中央町の健康特区指定やメンタルヘルスタウン構想に恰も親和性が高いように見せかけて同調することで各制度を資金調達のツールとして利用したと疑われる事業者いる。それこそが認定NPO法人サラブリトレーニングジャパンであり、関連する岡山乗馬倶楽部である。総務省はこの事業をふるさと納税制度の具体例としてHPに次のように掲載している。
『馬との触れ合いを中心としたセラピーリゾート事業を広く国民に対し行い、社会教育の推進及び社会福祉の増進、地域振興並びにスポーツの振興に寄与することを目的としています』
『多くの現代人が抱えるストレスを解消する、癒しのまちづくり「メンタルヘルスタウン構想」の実現に向けて、吉備中央町に訪れた人にとって心の癒しとなり、ひいては、動物愛護の観点から、生きものに優しい町づくり、命を大切にする町づくりが期待できる』
という説明を附して、行政として高く評価していることが感じられる。総務省のHPによると事業資金の8割以上がふるさと納税による寄付であることが明かされている。
一見すると素晴らしい事業であるように思える。引退した競走馬に有意義な一生を送って欲しい。総務省HPによると毎年7000頭の競走馬が生産され5000頭が引退するとのこと。確かにその行く末を想像すると怖くて聞けない。これを知ると一頭でも救われて欲しい気持ちになるのは多くの国民が同じであろう。だから、頭ごなしにこの取り組みを否定するつもりはない。素晴らしい取り組みであればあるほど、税金や税控除対象になる寄付を受けて行う事業であるからこそ、公明正大であり高潔でなければならないし、疑う余地がないくらいのガラス張りの運営を求められるのではないだろうか。
残念なことにサラブリトレーニングジャパンに関してはいくつかの不正や不当が疑われる声が寄せられている。前回に書いた記事では行政のメンタルヘルスタウン構想に乗じてサラブリトレーニングジャパンがホースセラピー事業に取り組むとして総務省地域循環創造事業交付金2500万円を受け取っている。確かに交付金で施設整備を行っているが肝心のホースセラピーはほとんど行われていない。それは診察を行う予定であった医師が名言している。整備した施設は他の事業に流用されているのではないかという疑いがある。
寄せられている声はホースセラピーに関してだけではない。サラブリトレーニングジャパンが引き受けた引退馬の半数以上がサラブリトレーニングジャパンの理事長や理事がオーナーである馬であることに関してだ。
NPO法人法第 45 条には「役員、社員、職員若しくは寄附者若しくはこれらの者の親族等に対して特別の利益を与えていない」及び「特定の範囲の者に便益が及ぶ活動の占める割合が 50%未満」、第 23 条の「特定の者と特別の関係がないものとされる基準」に違反しているのではないかという指摘がされている。
サラブリトレーニングジャパンは2016年設立以降158頭の引退馬を受け入れている。当NPO法人の理事長の角居勝彦氏が所有する1頭、理事であるO氏所有の24頭がサラブリトレーニングジャパンに引き取られている。その他、当該NPO法人への寄付者から52頭、一般財団法人ホースコミュニティなど角居勝彦氏が関係する団体から引き取った15頭を加えると92頭が理事や理事の関係団体と寄付者がオーナーである引退馬を引き取っている。それらは58%にも上りNPO法人法第45条の基準を大幅に超えていると思われる。
指摘は更に続く。サラブリトレーニングジャパンのふるさと納税に寄付した者がオーナーになっている引退馬を当該NPO法人が引き取ることが地方税法第314条の7第1項第1号の「特別の利益が当該納税義務者に及ぶ」に該当するのではないかということである。要は、引退馬を飼養することは多くの費用を必要とする。引退馬を引き取るNPO法人にふるさと納税することで優先的に馬を引き取ってもらうことで納税義務者は馬の飼養負担が軽減されて利益を得ることができ、さらに寄付金控除も受けられるということになる。それを防止する法令に抵触しているのではないかという指摘である。
少なくとも前述の内容を踏まえるとサラブリトレーニングジャパンの受け入れる引退馬の選定基準には疑義があるのは確かであろう。毎年数千頭の引退馬がいる中で理事や理事の関係する先、寄付者の馬が半数以上選ばれることは偶然であるはずがない。NPOを設立し、ふるさと納税の交付金や寄付金を受けることで、それまで多額の費用がかかっていた自分たちの所有する引退馬の経費を削減したとしたら制度を悪用した行為のように思える。サラブリトレーニングジャパンの理事には山本雅則吉備中央町長や元吉備中央町職員2名も名前を連ねている。ふるさと納税からの交付金がNPO法人サラブリトレーニングジャパンの収入の8割に上る。その資金の大部分が委託費として理事が務める企業に支払われている。
総務省は「ホースセラピーは実施されている」という上辺だけの回答でごまかそうとする。岡山県庁はチャリティーでは決してない馬のオークションを特定非営利活動であると断定する。その根拠は定款だという。あまりにお粗末である。参議院調査室だけが客観的な回答をしている。山本町長が当該NPO法人の理事になっていることが長の兼職にあたるかどうかに関してである。NPO法人が吉備中央町の請負行為を行っており報酬を法人から長が得ていたらアウトだと個人的には理解した。
いずれにせよ、当該NPO法人の事業のロジック、資金の流れ、共に釈然としない。理事や理事の関係者に係る馬の費用を公益の名のもとに調達するロジックをNPOやふるさと納税と絡めて構築したに過ぎないように映る。
今回、記述した新たな疑義に関しては行政に問うた後に回答が得られたのでここに記す。
問 引退した競走馬を飼養するには馬のオーナーは多額の費用を要します。
特定NPO法人が自分の所有する引退した競争馬を引き取ってくれたら経済的に労力的にも非常に助かるとのことです。
例えば、特定NPO法人がふるさと納税を利用して引退馬を引き取って世話をする費用を募った際に、それに寄付した者がオーナーになっている引退馬を当該NPO法人が優先的に引き取ることが地方税法第314条の7第1項第1号の「特別の利益が当該納税義務者に及ぶ」に該当するのかしないのかの判断もしくは見解をお聞かせください。
また、ふるさと納税等で募った寄付金を利用して引退した競走馬を引き取って再調教して譲渡するという事業を行う認定NPO法人が、理事や理事の関係する団体、寄付者から引き取った馬が全体の引き取った頭数の58%にも及ぶ場合は、NPO法人法第 45 条には「役員、社員、職員若しくは寄附者若しくはこれらの者の親族等に対して特別の利益を与えていない」及び「特定の範囲の者に便益が及ぶ活動の占める割合が 50%未満」、第 23 条の「特定の者と特別の関係がないものとされる基準」に違反するのかどうかの判断もしくは見解をお聞かせください。
参議院総務委員会調査室の回答
特定NPO法人によるふるさと納税の利用について、地方税法の観点からは、当室より回答いたします。お示しいただいた地方税法第314条の7第1項第1号については、国税においても、所得税法第78条第2項第1号(寄附金控除)に同旨の規定があり、
基本的に同じ考え方となっております。その趣旨を、大蔵省(当時)の政府委員は以下のように説明しています。
>…寄付をした者にその特別の利益が返るものを指定寄付とすることは適当ではな
いのではないか、
>こういう趣旨であらためて入れたわけでございます。おっしゃったような業者が
出しまして業者が利用できる、これはだめなんです。
>あるいは聞くところによりますと、寄付はいたしましたが実は自分の銅像ができ
たというような話もあるわけでございます。
>そんなようなことをひとつ排除する意味でここに書いたわけでございます。
○第55回国会衆議院大蔵委員会(昭和42年5月18日)
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=105504629X01419670518&spkNum=158¤t=1
ただ、大変恐れ入りますが、御依頼の件を含む個別の事案について、
同条に該当するかしないかお示しすることは難しいところでございます。
【坂本コメント】
総務委員会調査室の回答は核心を突いた回答のようにも思える。寄付者に利益が返ることを適当ではない、さらにそのようなことを排除する意味、とまで政府委員が国会で発言していることから容易に解釈が変更されるとは思わない。その馬主がそのNPOに寄付行為を行い、その馬主の引退馬をそのNPOに引き取ってもらうことは寄付した金で銅像が立つ行為と変わらないのではないか。地方税法第314条の7第1項第1号に抵触すると解釈することが出来ると考える。
参議院内閣委員会調査室の回答
調査室総合案内を通じてお問合せのありましたNPO法に係る御質問に関しまして、当室より,②について回答いたします。
ご指定の要件であるNPO法第45条第1項第2号ロ及び第4号ロの解釈について、内閣府の手引きを添付いたします。
(添付の書面の内容)
特定非営利活動促進法に係る諸手続の手引き/内閣府政策統括官(経済社会システム担当)付参事官(共助社会づくり推進担当)
活動の対象について
実績判定期間における事業活動のうち、次に掲げる活動の占める割合が50%未満であること。特定の範囲の者に便益が及ぶ活動という規定が存在する。
事業活動について役員、社員、職員若しくは寄附者若しくはこれらの者の親族等に特別の利益を与えないこと及び営利を目的とした事業を行う者に寄附を行っていないこと。
その役員、社員、職員若しくは寄附者若しくはこれらの者と親族関係を有する者又はこれらの者と特殊の関係のある者に対し特別の利益を与えないことその他の特定の者と特別の関係がないものとして一定の基準を満たしていること。
一定の基準とは
a 当該役員の職務の内容、当該NPO 法人の職員に対する給与の支給の状況、当該NPO 法人とその活動内容及び事業規模が類似するものの役員に対する報酬の支給の状況等に照らして当該役員に対する報酬の支給として過大と認められる報酬の支給を行わないことその他役員、社員、職員若しくは寄附者若しくはこれらの者の配偶者若しくは三親等以内の親族又はこれらの者と特殊の関係のある者に対し報酬又は給与の支給に関して特別の利益を与えないこと。
b 役員等又は役員等が支配する法人に対しその対価の額が当該資産のその譲渡の時における価額に比して著しく過少と認められる資産の譲渡を行わないことその他これらの者と当該 NPO 法人との間の資産の譲渡等に関して特別の利益を与えないこと。
c 役員等に対し役員の選任その他当該 NPO 法人の財産の運用及び事業の運営に関して特別の利益を与えないこと。
d 営利を目的とした事業を行う者、イの①から③に掲げる活動を行う者又はイの③の特定の公職の候補者若しくは公職にある者に対し、寄附を行わないこと。
なお、御参考となり得るような類似例は、お探しした限り見当たりませんでした。
【坂本コメント】
寄せられた声の通りにNPO第45条に抵触する可能性が高いという回答と解釈した。個別の案件に対して適違を調査室が判断することはない。だが役員や寄付者への利益となる行為が50%を超えていることはNPO法人の認定基準を侵すこと現わしている。また、当該NPO法人が総務省地域循環創造事業交付金2500万円の交付を受けてホースセラピーのために整備した施設を当該NPO法人の前代表理事で現在も理事である西崎純郎氏は自身の経営する岡山乗馬倶楽部にて無償で使用している疑義もある。とすればそれは取りも直さず役員に特別の利益を提供していることとなろう。認定NPO法人サラブリトレーニングジャパンの収入の8割以上がふるさと納税を利用した寄付によるという。非営利事業には税制優遇措置もある。自身や自身の事業の資金調達や引退馬の飼養や再調教という課題の解消等に公益に関わる制度を専ら利用することは随分と身勝手な行為に映る。この際、サラブリトレーニングジャパンには疑義を完全に晴らすべく解体的出直しを求めたい。
参考
内閣府「特定非営利活動促進法に係る諸手続の手引き 」(令和3年6月)
https://www.npo-homepage.go.jp/pamphlet-tebiki
岡山県 吉備中央町 引退した競走馬のセカンドキャリア支援 総務省
そのほか、情報提供者様あり。
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