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稲森 洋樹 ブログ

【環境省案】イエネコが「防除推進外来種」に?地域猫への影響と緊急一時保護―動物愛護法改正の論点

2026/7/21

先日、大阪ねこの会主催の串田誠一参議院議員の講演を拝聴しました。会場は大阪市旭区の城北公園内にある大阪市動物愛護体験学習センター。非常に示唆に富む内容でしたので、講演で紹介された事例と制度を整理します。

「イエネコ」が防除推進外来種の候補に

2026年4月、環境省と農林水産省は「生態系被害防止外来種リスト」の改定案を公表しました。

動物編の候補表では、哺乳類のNo.33に**「イエネコ」**が掲載され、区分は「防除推進外来種」とされています。分布は全国、利用環境は市街地、草地、農地、公園、森林です。

ただし、これは外来生物法に基づく「特定外来生物」への指定ではありません。

改定案の冒頭にも、

「飼養等されているものは基本的に防除等の対象とはならない」

と明記されています。飼い猫が直ちに捕獲、駆除の対象になるという制度ではありません。

「イエネコ」の項目でも、対策として挙げられているのは、屋内飼養、逸走や遺棄の防止、希少種が生息する地域での捕獲、TNRなどを組み合わせる方法です。

また、イエネコは種として人との関わり方や生息環境が多様であるため、地域の自然環境を踏まえ、関係者の理解を得ながら総合的に対策を行う必要があるとされています。

問題は「イエネコ」という言葉の広さ

それでも、今回示されている案には慎重な検討が求められます。

従来、希少種を捕食するなど、生態系への影響が問題とされてきたのは、主に人の管理から離れて山野で野生化した「ノネコ」です。

ところが、改定案では種全体を示す「イエネコ」という名称が前面に出ました。

家庭で適正に飼育されている飼い猫と、住民が給餌、清掃、不妊去勢、個体管理を行っている地域猫。

山野で野生化し、希少種を捕食しているノネコ。

同じ猫でも、生活している場所、人による管理の有無、自然環境への影響は異なります。当然、必要な対策も違います。

実際、改定案の法制度欄でも、鳥獣保護管理法上の狩猟鳥獣とされているのは「ノネコ」のみです。法律上も、全ての猫が同じ扱いではありません。

講演では、串田議員が政府へ対象範囲を確認し、環境省側から説明不足への謝罪と、表現や運用を見直す意向が示された経緯も紹介されました。

必要なのは、「猫を守るか、自然を守るか」という二者択一ではありません。

希少種の保全が必要な地域では、捕獲を含む対策が必要になる。一方、市街地で行政と住民が管理している地域猫については、不妊去勢と環境管理によって、増やさず、一代限りの命を見守る。

行政文書では、名称と定義の曖昧さが、現場の誤った運用につながります。

対象となる猫の状態と、対策を行う地域を明確に分けなければなりません。

大阪で積み上げられてきたTNRの成果

大阪では長年、TNR活動が続けられてきました。

TNRとは、

  • Trap:猫を捕獲する
  • Neuter:不妊去勢手術を行う
  • Return:元の生活場所へ戻す

という取組です。

手術済みの猫は、再び捕獲して麻酔や手術を行わないよう、耳先をV字にカットして識別します。

講演では、協力病院での手術費が1匹3,850円であることや、48匹いた多頭現場の猫を、保護、譲渡、TNR、日々の管理によって11匹まで減らした事例が紹介されました。

大阪市の猫の殺処分数は、2006年度の5,320匹から、2025年度には107匹まで約98%減少しています。この107匹には、治療の甲斐なく死亡した37匹も含まれています。

また、講演では、大阪府内で年間約7,000匹の不妊去勢が約10年間続けられてきたとの説明もありました。

TNRは、猫を捕まえて戻せば終わりではありません。

繁殖を止め、給餌場所を管理し、食べ残しやふん尿を清掃する。個体数の変化を記録し、猫と地域の生活環境を一体として管理する取組です。

八尾市でも、八尾ねこの会さくらの皆さんによるTNRや毎月の譲渡会が続けられています。行政、ボランティア団体、大松市長や市保健所のご協力により、市の施設を利用した行政主体の保護猫譲渡会も一昨年より開催頂いています。

この様に現場で積み上げてきた取組を、行政の曖昧な名称や定義変更によって後退させてはなりません。

動物救護を「善意」だけに任せないイスタンブールの取り組み

ご講演では、串田議員が2026年4月に視察した、トルコ・イスタンブール市の動物保護政策も紹介されました。

イスタンブール市には複数の動物保護施設、自然生活区域、ワクチン・治療拠点があり、犬と猫の区域を分け、24時間対応する施設もあります。

捕獲した犬や猫には、不妊去勢、ワクチン、個体識別、登録、必要な治療を行う。譲渡できる個体には家庭を探し、猫は処置後、譲渡されなければ元の地域へ戻す。

特に印象的だったのは、負傷した猫を24時間対応の救護車が迎えに行き、公費で治療した後、元の地域へ戻す仕組みです。

動物救護を、ボランティアや個人の善意だけに任せず、施設、人員、獣医療、搬送、夜間対応まで、自治体の仕事として予算化している点が、日本との大きな違いです。

窓の向こうに21匹の猫――24日間救出できず:緊急一時保護の重要性

次期動物愛護法改正においては、愛護動物の緊急一時保護の定義が課題となります。

これを象徴するのが、2021年に東京都武蔵村山市で発生した事案です。

一人暮らしの高齢女性が亡くなり、警察が遺体を搬出した後、住宅は再び施錠されましたが、家の中には21匹の猫が残されました。

窓から猫の姿は確認できる。飼い主は亡くなり、餌や水も十分ではない。しかし、家屋や猫を相続する者が確定していない。

行政や保護団体が無断で入れば、住居侵入や窃盗を問われる可能性があるとして、救出できない状態が続きました。

猫たちは24日間取り残され、最終的に2匹が死亡しました。

これは、助けようとする人がいなかった事件ではありません。

誰が危険を判断し、誰の権限で鍵を開けるのか。

猫をどこへ運び、保護費や治療費を誰が負担するのか。

その最初の一歩が制度化されていないため、現行法の壁に阻まれ、発生してしまった悲劇です。

動物愛護管理法35条3項で何ができるのか

動物愛護管理法35条3項は、都道府県などが、

「所有者の判明しない犬又は猫」

の引取りを求められた場合について、犬猫の引取り制度を準用すると定めています。

2021年5月28日の衆議院環境委員会でも、環境省は、基礎自治体などの関係者から求められた場合、都道府県などが同項に基づいて引取りを行える場合があると答弁しました。

さらに、飼い主がいる動物であっても、差し迫った危険がある場合の行政職員による保護は、

「現行でも必ずしも否定されていない」

と説明しています。

ただし、同法第35条3項は、あくまで犬や猫の引取りに関する規定です。家屋へ立ち入る権限や、鍵を開ける権限を直接与える条文ではありません。

つまり、保護後の受皿となる規定はあっても、鍵の掛かった家から、誰が、どの根拠で動物を救出するのかという入口の権限が明確ではありません。

現行法の解釈でも、施錠された車に立ち入れる場合がある

一方、現行法によって救出できる可能性が国会答弁で明確になった事例もあります。

2022年6月、名古屋市内のコインパーキングで、強い日差しの当たる車内に犬2匹が放置されました。

通報を受けた警察官が現場へ到着しましたが、救出まで約4時間を要しました。

この問題について、2023年4月25日の参議院環境委員会で、警察の対応根拠が議論されました。

根拠として示されたのが、警察官職務執行法4条1項と6条1項です。

同法第4条1項は、生命や身体への危険、財産への重大な損害が生じるおそれのある危険な事態について、警察官が、

「危害防止のため通常必要と認められる措置」

を命じ、または自ら行うことを認めています。

同法第6条1項は、危害が切迫し、救助などのためやむを得ない場合に、

「合理的に必要と判断される限度」

で、他人の土地、建物、車両などへ立ち入ることができると定めています。

さらに2024年6月4日の参議院環境委員会で警察庁は、まず車や犬の所有者への連絡を優先し、連絡が取れない場合には動物愛護センターなどと連携したうえで、実際の状況に応じ、同法4条1項、6条1項に基づき、車内へ立ち入り、犬への危害を防ぐため必要な措置を取る場合があり得ると答弁しています。

しかし、この国会答弁や法解釈が通信指令、最初に現場へ到着する地域警察官、当直責任者まで共有されていなければ、実際の現場では使えません。

私は、大阪府警、特に地元の八尾警察署において、この法解釈と対応手順がどこまで周知されているのか、猛暑が続く昨今の天候も踏まえ、確認すべきと考えています。

「動物が衰弱するまで待つ」法律でよいのか

現行の動物愛護管理法44条2項は、愛護動物に対する虐待を処罰しています。

例えば、給餌や給水をやめる、酷使する、健康や安全を保つことが困難な場所に拘束する、著しく不適正な密度で飼育する行為については、

「飼養し若しくは保管することにより衰弱させること」

が処罰対象として規定されています。

この類型では、明らかに危険な環境であっても、まだ「衰弱」という結果が明確に現れていない段階では、構成要件に該当するか判断が難しくなる場合があります。

今後の法改正で求められるのは、動物が倒れたり、重篤化したりしてから処罰するだけの制度ではありません。

温度、湿度、換気、給水、飼養密度、排せつ物、けがや病気の未治療など、客観的に測定できる危険を基準として、衰弱する前に改善命令や一時保護へつなげる仕組みです。

動物が死んだ後に責任を問うだけではなく、死なせない、悲劇を生まないために動ける様にする。「衰弱してから」ではなく、「危険な環境を確認した段階」で介入する。

現行法の解釈を現場へ周知し、同時に、緊急一時保護を制度として整える。鍵の向こうに命があるなら、その日のうちに救える社会にしなければならない。

今回の講演を通じて、私は改めてそう強く感じました。

YouTubeでも市政・地方自治について発信しています

今回のような法律や地方行政、身近なテーマに関する議論の紹介、大阪府政、地方自治の仕組みについて、YouTubeでも解説しています。

統計データや公的資料、法律・条例・行政運用など、議会活動の現場で得た視点をもとに、できるだけ分かりやすく発信していきます。

是非ご覧下さい。

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著者

稲森 洋樹

稲森 洋樹

選挙 八尾市議会議員選挙 (2023/04/23) [当選] 3,462 票
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肩書 八尾市議会議員
党派・会派 無所属
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