2026/6/17
※令和8年6月18日追記:
本記事の内容について、YouTube動画を公開しました。
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昨日、令和8年6月定例会の一般質問において、同会派の田中慎二議員が、八尾市の保育行政、とりわけ民間保育施設への支援、保育士確保施策、今後の保育需要への対応について質問を行われました。
私自身の質問ではありませんが、僭越ながら事前に私も一緒に執行部への確認や論点整理に関わらせて頂きました。
今回の一般質問では、少子化が進む中で、八尾市が保育現場の実態をどのように把握しているのか、また、保育士確保や民間園支援の施策がどのような成果につながっているのかが確認されました。
田中議員は、大前提として、少子化が進む中でも、子どもたちに質の高い幼児教育・保育を安定的に提供し続けることは、行政にとって重要な責務であると述べました。
八尾市の保育は、公立施設だけでなく、民間保育園や認定こども園によって支えられています。
民間保育施設が安定的かつ持続可能に運営されること、保育士の確保と定着が図られること、行政と現場が適切に連携することが重要であるという観点から、今回の質問が行われました。
具体的には、民間保育施設における保育士数、充足状況、平均勤続年数、離職や定着の状況、保育士確保施策の実績、補助制度の考え方、将来的な保育需要の見込み、八尾市こども計画における成果指標などについて、市の認識が問われました。

質問に対する一回目の市長答弁では、民間保育施設における保育士確保について、全国的な人材不足を背景に厳しい状況であり、苦労している施設も少なくない、との認識が示されました。
一方で、八尾市における平均勤続年数、離職および定着の状況については、「施設により様々であり、把握出来ていない」との答弁がありました。
また、令和7年度当初における民間保育施設の保育士数は1,549名であり、現在、すべての施設で国の基準を充足する保育士が確保されているとの説明がありました。
再質問では、この1,549名の内訳についての確認が行われました。
担当部答弁では、常勤が約7割、非常勤が約3割との説明がありましたが、常勤・非常勤別の正確な実数については、答弁の中で明確には示されませんでした。
さらに、1,549名という数字は、令和7年4月1日時点で私立施設に勤務している人数として把握したものである一方、その時点で常勤か非常勤かまでを必須の把握項目として求めているわけではないとの説明もありました。
また、市は、すべての施設で国の配置基準を充足していると答弁しましたが、保育士の配置が国基準を満たしていることは重要である一方、それだけで「質の高い保育」が十分に担保されるのかが重要です。
令和6年6月25日付で、こども家庭庁から「保育所等における勤務時間短縮保育士の定義及び取扱いについて」の通知が出されていることに関連し、市としてこの通知を把握しているのか、また、短時間勤務保育士の取扱いや勤務時間数に関する確認を行っているのかが問われました。
市は、通知について確認しており、国の基準では基本的に常勤の保育士による保育が基本であるとしつつ、多様な働き方が広がっている中で、各園が常勤・非常勤のバランスを見ながら、保育の質を下げることなく運営しているとの認識を示しました。
ただし、通知に基づく具体的な確認状況や、短時間勤務保育士の人数、勤務時間別の内訳、各施設の基準適合をどのように点検しているのかについては、質疑の中で詳細な数値までは示されませんでした。
市担当部の答弁に対しては、単に「保育士確保の国基準を総数で満たしているかどうか」だけではなく、「安定した保育提供体制をどう確保するのか」という観点から見る必要があります。
園側にとっては、常勤保育士に継続して勤務していただくことが、日々の保育体制の安定につながります。これは、子どもを預ける保護者にとっても重要です。
また、国の通知においても、基本的には常勤の保育士による保育体制の確保が前提とされています。市がその通知を把握しているのであれば、保育士総数だけでなく、常勤・非常勤の内訳や勤務実態についても、より丁寧に把握し、保育士の確保・定着支援施策につなげていく必要があります。
今回の質疑では、担当部において、施策の前提となる実態を定量的に把握し、次の施策判断に生かしていくという視点に、なお弱い部分があることが明らかになったと考えます。

保育士確保施策について、市は、保育士確保事業支援金、宿舎借上支援事業費補助金、保育士就職フェアなどにより、保育士確保を後押ししているとの認識を示しました。
公民連携で実施する保育士就職フェアについては、「来場者が39名で、そのうち3名の新規採用が実現した」との答弁がありました。
この点について、採用につながった3名が八尾市内の方なのか、常勤なのか非常勤なのか、現在も働いているのかが議論となりました。
担当部答弁では、有資格者であることは把握しているものの、その後の勤務形態や現在も就労を継続しているかについては把握できていないとの説明がありました。
田中議員は、採用したこと自体を成果とするのではなく、採用された保育士がその後も継続して働いているのかを確認する必要があると指摘しました。
これは保育士確保施策の目的が、単なる採用数の確保ではなく、安定的な保育提供体制の維持にあるのであれば、採用後の状況を把握することが必要であるという趣旨であり、仮に短期間の雇用にしかつながっていないのであれば、市内の保育ニーズを安定的に受け止める体制づくりには十分につながっていないことになります。
また、採用後の定着状況を把握することができれば、当該施策が常勤保育士の確保につながっているのかを確認する一つの目安にもなります。
就職フェアは公金を投入して実施されている事業です。だからこそ、来場者数や採用者数だけでなく、その後の就労継続状況まで含めて、投入した資源に対してどのような事業効果があったのかを測定する観点が、行政には求められます。

質疑では、保育士確保支援事業の評価についても取り上げられました。
市は、就職した人に対して3年間、1年あたり10万円ずつ支給する仕組みがあり、支援を受けた人のうち一定程度、8割を超える人が定着していると説明しました。
そのうえで、まず支援期間中3年間の定着状況を確認しているとの答弁がありました。
しかし、3年間の支援期間中に状況を確認することと、支援が終了した後に保育士が引き続き市内の保育現場で働いているかを確認することは別です。
3年間支援した後、4年目、5年目、さらにその先で保育士が定着しているのか。
補助が終わった後に離職しているのであれば、その施策が本当に保育士の定着につながったと評価できるのか、こうした観点から「後追い調査」の必要性が議論されました。これが事業・施策に対する「行政評価」という考え方です。
八尾市こども計画について、市は、「将来的な保育需要について、国の基本指針等を踏まえ、人口推計から算出される児童数に、各認定区分の利用希望率等を乗じることで、令和11年度までの保育の給付量を見込んでいる」と説明しました。
また、市全体で供給体制を整えるという考え方のもと、区域の状況も考慮しながら量の見込みを確保していくとの答弁がありました。
一方で、八尾市こども計画における幼児教育・保育分野の成果指標については、「設定していない」との答弁がありました。
第3期子ども・子育て支援事業計画において、サービス量とその確保方策は記載されているものの、成果指標は設定されておらず、保育士確保、民間園支援、保育需要への対応などを進めるうえで、どのような指標に基づいて市が成果を確認していくのかは、今後の論点として残りました。
民間保育施設との連携について、市は、施設訪問や意見交換を通じて、施設の実態や課題を丁寧に把握していると説明しました。
また、入所計画に関する協議、園への説明、実地指導、保育サポートを必要とする児童の確認、各種会議など、民間園との接点が多数あるとの答弁もありました。
しかし重要なのは接点の回数ではなく、中身であり、民間園は、補助金を受けながら事業を行っている立場でもあり、行政に対して本音を伝えにくい場合も考えられます。
そのため、行政側から能動的に園を訪問し、「困っていることはありませんか」と丁寧に聞き取ることが必要ではないか、という観点から議論が行われました。
市は、民間園にも規模や状況の異なる多くの園があるため、それぞれの園から丁寧に意見を聞きながら進めていくことが重要であるとの認識を示しました。
今回の議論は、保育士確保施策や民間園支援について、単に「事業を実施しているか」を確認するものではなく、むしろ、「限られた予算と人員を投入している以上、その施策が実際にどのような効果を生んでいるのか、定量的に測定し、次の施策判断につなげる必要がある」という問題意識に基づくものでした。
これまで我々は、八尾市執行部に対し、投入する予算や人的資源の効果を定量的に測定し、その結果に基づいて施策判断を行うことを繰り返し求めてきました。
これは、保育分野に限った話ではありません。
単に民間園を助けるという視点ではなく、市域の保育需要に対して、必要な保育を安定的に提供できる体制をどう確保するのか。事業実施の前提となる軸をしっかり持つことが行政の役割であると考えています。
そのためには、公立園と民間園の役割分担、保育士確保施策の効果、補助制度の実効性、現場の声の把握、将来の保育需要の見込みを、できる限り客観的なデータに基づいて整理する必要があります。
また、公民のベストミックスは、保育の政策領域だけにとどまるものではありません。
今後の行政の持続可能性を考えれば、福祉、教育、まちづくり、公共施設、地域サービスなど、あらゆる分野で、公が担うべき部分と民間の力を活用すべき部分を整理していく必要があります。
その整理がないまま、行き当たりばったりで方針や施策が変われば、行政と連携や受託する民間側も混乱します。
行政は、現場の実態を把握し、施策の効果を測定し、将来を見据えた方針を示す必要があります。
我々は引き続き同様の観点で、八尾市の各事業の精査を行って参りたいと思います。
今回のような議会での質問の内容や、八尾市政・大阪府政、地方自治の仕組みについて、YouTubeでも解説しています。
元自治体職員・現職市議会議員の立場から、統計データや公的資料、議会活動の現場で得た視点をもとに、できるだけ分かりやすく発信していくチャンネルです。
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ホーム>政党・政治家>稲森 洋樹 (イナモリ ヒロキ)>保育士確保施策に必要なのは“やった感”ではなく事業・施策効果の測定 同僚議員の一般質問から