2026/8/12
【葛飾区の環境対策】森のない葛飾区が、なぜ新潟の森林を整備するの?
8月9日の日本経済新聞に、興味深い記事が掲載されていました。
テーマは「森林が秘める脱炭素力」。
東京大学などの研究チームが日本の森林を詳しく調べたところ、森林が吸収する二酸化炭素(CO₂)の量は、これまで考えられていたよりもかなり多く、従来の推計の約2倍になる可能性があるというのです。
「森林がCO₂を吸収する」という話は聞いたことがあっても、
「そんなに大きな力があったの?」
と思った方も多いのではないでしょうか。
そして実は、この話は森林の少ない葛飾区にも大いに関係があります。
葛飾区は、新潟県五泉市など森林を持つ自治体と連携して、森林整備による脱炭素の取組をすでに進めているからです。
今回は新聞記事の内容をできるだけ分かりやすく紹介しながら、
「なぜ森のない葛飾区が、新潟の森林を整備するのか?」
について考えてみたいと思います。
※画像にある森林は2023年5月に行った自民党会派視察の時のものです。
🌳① 日本の森林は、思っていた以上にCO₂を吸収している?
日本は国土のおよそ7割が森林です。
木は成長するとき、空気中のCO₂を吸収し、その中の炭素を幹や枝、根などに蓄えます。
いわば森林は、
「自然がつくった大きなCO₂吸収装置」
ともいえます。
今回、東京大学などの研究チームは、人工衛星から得られるデータやAIなどの最新技術を活用して、日本全国の森林を詳しく分析しました。
その結果、森林によるCO₂吸収量が、これまでの推計を大きく上回り、約2倍になる可能性があることが分かってきました。
つまり、これまで十分に測り切れていなかった「森林の力」が、最新のデジタル技術によって、より正確に見えるようになってきたということです。
🌲② 森林は「そのまま残しておけばいい」わけではありません
では、森林がたくさんあれば、それだけでよいのでしょうか。
そうではありません。
森林も人の手で適切に管理することが必要です。
混み合った木を間引く「間伐」をしたり、伐採した後に新しい木を植えたりする。
そして、
「育てる → 使う → また植える」
という循環をつくっていくことが大切です。
木をただ残すだけではなく、森林を守り、育て、資源として上手に使っていく。
こうした森林整備を続けることが、森林を次の世代へ引き継いでいくことにもつながります。
🏙️③ 木の成分を「道路や建物」に使う研究も
今回の記事でもう一つ興味深かったのが、森林資源をまちづくりに活用する研究です。
木には「リグニン」という成分があります。
この木由来の成分を、アスファルトやセメントなどの材料として活用する研究が進められています。
森林が吸収したCO₂の炭素を木材などに蓄え、それを道路や建物などに利用できれば、炭素をまちの中に長期間とどめておくことにもつながります。
つまり、
「森でCO₂を吸収する」
↓
「木を資源として利用する」
↓
「道路や建物などで長く使う」
という新しい循環です。
道路や公共施設など、まちづくりに関わる分野でも、森林資源の活用は今後さらに注目されそうです。
🌲では、森林のない葛飾区に何ができるのでしょうか?
ここからが、私たち葛飾区に関係する話です。
葛飾区には、大規模な森林はほとんどありません。
だからといって、
「森林がないから、森林を活用した環境対策はできない」
というわけではありません。
そこで葛飾区が進めているのが、森林を持つ自治体との連携です。
その一つが、新潟県五泉市です。
葛飾区と五泉市は以前から交流を続けており、2023年には「森林整備の実施に関する協定」を締結しました。
五泉市の森林を整備し、その森林が吸収するCO₂を葛飾区のカーボン・オフセットにつなげていく取組です。
分かりやすくすると、
「森林の少ない葛飾区」
+
「森林を持つ五泉市」
↓
「協力して森林を整備する」
↓
「健全な森林を育てる」
↓
「森林がCO₂を吸収する」
↓
「葛飾区の脱炭素にもつなげる」
という仕組みです。
都市と森林地域が、それぞれの特徴を生かして協力する環境対策ともいえます。
🌱すでに数字として成果も出ています
五泉市で行われた森林整備では、CO₂吸収量も算定されています。
2023年度
森林整備面積 2.9ヘクタール
CO₂吸収量 5.2トン/年
2024年度
森林整備面積 3.62ヘクタール
CO₂吸収量 15.8トン/年
森林整備による効果が、こうして数字として示されています。
ただし、2023年度から2024年度にCO₂吸収量が約3倍になったからといって、
「森林整備面積を増やせば、その分だけ吸収量も増える」
という単純なものではありません。
森林のCO₂吸収量は、樹種や木の年齢、森林の状態、整備内容などによって変わるからです。
また、15.8トンという数字だけで葛飾区全体のCO₂排出量を大きく減らせるわけでもありません。
大切なのは、森林の少ない葛飾区でも、森林を持つ地域と連携することで、実際の森林整備とCO₂吸収につなげられるという点だと思います。
💰私たちが負担している「森林環境税」はどう使われる?
この取組を理解するために、もう一つ知っておきたい制度があります。
「森林環境税」です。
2024年度から、国民1人あたり年間1,000円の森林環境税が国税として課税されています。
そして、その税収をもとに、国から全国の自治体へ「森林環境譲与税」として配分され、森林整備や木材利用などに活用されています。
ここで、
「森林がほとんどない葛飾区にも、このお金が配分されるの?」
と思われるかもしれません。
実は、森林環境譲与税の配分は森林の面積だけで決まるわけではなく、人口なども考慮されるため、葛飾区のような都市部にも配分されます。
しかし、葛飾区内には整備する大規模な森林がありません。
そこで、
「葛飾には森林がないから使えない」
ではなく、
「森林のある地域と協力して、実際の森林整備に生かそう」
という考え方が出てきます。
五泉市との連携も、こうした都市と森林地域との協力の一つです。
なお、ここは誤解のないようにしておきたいところです。
葛飾区民が支払った年間1,000円が、そのまま五泉市へ送られているわけではありません。
国が森林環境税を集め、一定の基準によって全国の自治体へ森林環境譲与税として配分します。
そして、葛飾区に配分された財源を森林整備や木材利用などに活用している、という仕組みです。
🌳「遠くの森林」と「葛飾の暮らし」はつながっています
今回の日本経済新聞の記事を読んで、改めて感じたのは、
「森林が持っている力を、私たちはまだ十分に把握し切れていないのかもしれない」
ということです。
最新の研究では、日本の森林によるCO₂吸収量が、これまでの推計を大きく上回る可能性が示されています。
だからこそ、森林を持つ地域だけに任せるのではなく、森林の少ない都市部も一緒になって、森を守り、育て、資源として活用していくことが、これからますます重要になってくると思います。
葛飾区では五泉市だけでなく、秋田県鹿角市や東京都の多摩地域などとも森林を通じた取組を進めています。
そして森林との関係は、CO₂を吸収することだけではありません。
森林を適切に整備する。
国産木材を利用する。
さらに将来は、木から生まれる新しい素材を道路や建物などに活用する。
こう考えていくと、
「森林政策」と「葛飾区のまちづくり」は、決して別々の話ではありません。
今回の記事をきっかけに、森林が持つ力と、葛飾区が進めているこうした取組にも関心を持っていただけたらと思います。









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