2026/7/30
7月28日午後4時27分ごろ、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、熊本県内で最大震度7を観測しました。
気象庁は、今回の地震と今後の一連の地震活動について、「令和8年熊本地震」と名称を定めました。発生後も震度5弱を観測する地震が相次ぐなど、活発な地震活動が続いています。(気象庁)
今もなお、安否の確認が続けられている方がいらっしゃいます。
まず、犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表するとともに、被害に遭われたすべての皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。
救助を待っている方、避難所や車の中などで不安な時間を過ごしている方、ご家族や大切な方と連絡が取れず、眠れない夜を過ごしている方もいらっしゃることと思います。
救命・救助活動が一刻も早く進み、被災された皆様が少しでも早く安心を取り戻せるよう、心からお祈り申し上げます。
災害は、いつ葛飾区で起きてもおかしくありません
今回の地震を、遠く離れた地域で起きた災害として受け止めることはできません。
葛飾区は、荒川、江戸川、中川、綾瀬川など多くの河川に囲まれ、海抜ゼロメートル地帯を広く抱えています。
大地震だけでなく、河川の氾濫、内水氾濫、大規模な火災、液状化、長期停電、断水など、複数の災害が同時に発生することも想定しなければなりません。
私はこれまで、危機管理対策委員を6年間務め、そのうち2年間は委員長として、葛飾区の防災・減災対策に取り組んできました。
しかし、災害対策には「これで十分」という到達点はありません。
新しい災害が発生するたびに課題を検証し、過去の教訓を次の備えに反映させ続けることが重要です。
マニュアルがあるだけでは、人は動けません
先日、東京大学を中心に進められている災害対策教育や、実践的な災害対策本部訓練についてお話を伺う機会がありました。
そこで改めて感じたのは、災害時に必要なのは、単に立派な計画や分厚いマニュアルを作ることではないということです。
大規模災害が発生すると、災害対策本部には短時間のうちに膨大な情報が入ってきます。
「道路が通れない」
「避難所に水がない」
「高齢者施設から応援要請が来ている」
「どこに救援物資を運べばよいのか分からない」
「職員や応援部隊をどこに配置するのか」
こうした情報を整理し、優先順位を決め、限られた人員や物資を適切に配分しなければなりません。
災害時には、すべてを区長や災害対策本部長の判断に委ねることはできません。
それぞれの現場にいる職員や責任者が状況を把握し、自ら判断して動くことが求められます。
そのためには、平常時から繰り返し訓練を行い、判断力や対応力を身につけておく必要があります。
実際の災害に近い訓練が必要です
現在行われている防災訓練の多くは、あらかじめ決められた手順を確認するものです。
もちろん、消火器の使い方、応急救護、避難所の開設、炊き出しなどの訓練も非常に重要です。
一方で、災害対策本部を運営する職員には、より実践的な訓練が必要です。
次々に入ってくる不完全な情報の中から重要なものを選び、状況を分析し、対応方針を決め、部下や関係機関に指示を出す。
時には正解が分からない中で、決断しなければなりません。
実際の災害に近い緊張感のあるシミュレーション訓練を繰り返すことが、いざという時の対応力につながります。
災害対策を体系的に学ぶ人材を増やす
東京大学の災害対策教育では、災害対策本部の運営だけでなく、さまざまな専門分野を体系的に学ぶ仕組みが検討・実施されています。
例えば、
・避難所の運営
・被災建築物の被害確認
・マンション防災
・福祉施設の災害対応
・災害廃棄物の処理
・救援物資の物流
・道路啓開
・重機の活用
・他自治体や民間からの応援を受け入れる受援体制
などです。
災害対応は、防災担当部署だけで完結するものではありません。
福祉、医療、道路、公園、学校、清掃、住宅、情報システム、広報など、区役所のほぼすべての部署が関わります。
だからこそ、幅広い職員が災害対応の基本と、自分の担当分野で求められる役割を学ぶ必要があります。
応援を送る力と、受け入れる力
大規模災害では、被災した自治体だけで対応することは困難です。
国、東京都、他の自治体、自衛隊、消防、警察、医療機関、民間企業、NPO、ボランティアなど、多くの支援を受け入れることになります。
しかし、応援に来てくれた人たちを、どこに配置し、何をお願いするのかが決まっていなければ、貴重な人材を十分に生かせません。
また、救援物資が届いても、保管場所や配送方法、必要としている避難所の情報が整理されていなければ、必要な方に物資が届かないことがあります。
「支援に行く力」だけでなく、「支援を受け入れる力」、すなわち受援力を高めることも、葛飾区の重要な課題です。
災害が発生した自治体に職員を積極的に派遣し、現場で得た経験や教訓を葛飾区の体制づくりに生かすことも必要だと考えています。
避難所生活の長期化も想定する
避難所は、開設したら終わりではありません。
災害直後は、避難者同士が協力して運営できていても、避難生活が長期化すると、さまざまな問題が生じます。
生活音、照明、温度、トイレ、ペット、プライバシー、感染症、食事、物資の配分などをめぐり、避難者同士の意見が対立することもあります。
高齢者、障害のある方、乳幼児、妊産婦、外国人、医療的な支援が必要な方など、それぞれの事情に応じた配慮も必要です。
避難所の運営訓練では、開設手順だけでなく、避難生活が長期化した場合の課題や、避難者間のトラブルへの対応まで想定する必要があります。
マンションや在宅避難への備え
葛飾区には多くのマンションがあります。
建物が倒壊していなくても、エレベーターが停止し、断水や停電が続けば、高層階での生活は非常に困難になります。
避難所に行かず、自宅で生活を続ける「在宅避難」を選ぶ方も多数いると考えられます。
指定避難所以外の場所に住民が集まり、自然発生的な避難所ができる可能性もあります。
行政が指定避難所だけを見ていては、地域全体の被災状況を把握できません。
マンション管理組合や町会・自治会と連携し、安否確認、備蓄、給水、情報伝達などの体制を整える必要があります。
町会・自治会と学校を中心とした地域防災
地域防災の基本となるのは、日頃からの顔の見える関係です。
葛飾区では、町会・自治会の役員の高齢化や、加入者の減少が進んでいます。
しかし、大規模災害が起きた直後、行政や消防がすべての地域に駆け付けることはできません。
最初に助け合うのは、家族や近隣住民です。
だからこそ、町会・自治会、学校、PTA、消防団、医療・福祉関係者、事業者などが連携した防災訓練を、より一層進める必要があります。
学校を地域防災の拠点として、子どもたちや若い世代も参加できる訓練を行うことも重要です。
子どもの頃から防災を学ぶことで、自分の命を守るだけでなく、将来、地域を支える人材の育成にもつながります。
「災害時に動ける人」を育てたい
防災に関する資格には、防災士をはじめ、さまざまな制度があります。
東京大学などが進める災害対策に関する教育では、資格を取得して終わりにするのではなく、定期的に知識を更新し、災害時に実際に活動できる人材のネットワークをつくることが重視されています。
葛飾区においても、区職員、町会・自治会、学校関係者、福祉施設職員、企業、若者などが、体系的に災害対応を学べる環境を整えるべきです。
資格取得や研修受講に対する助成、若い世代への参加支援、区職員の資格や経験を人事情報として把握する仕組みなども、今後検討する価値があります。
「誰が、どのような知識や技術を持っているのか」を平常時から把握しておくことが、発災時の迅速な人員配置につながります。
熊本の被害を、葛飾の備えにつなげる
災害が発生するたびに、「想定外だった」という言葉が繰り返されます。
しかし、過去の災害の検証報告書を読み返すと、避難所、物流、情報共有、受援体制、災害廃棄物、福祉施設への支援など、似たような課題が何度も指摘されています。
大切なのは、被災地から得られた教訓を記録として残すだけでなく、自分たちの地域の備えに具体的に反映させることです。
今回の令和8年熊本地震についても、救命・救助と被災者支援を最優先にしながら、今後明らかになる課題や教訓を、葛飾区の地域防災計画、職員研修、防災訓練、備蓄、受援体制などに生かしていかなければなりません。
私は、葛飾区の災害対策について、次の取り組みを進めるべきだと考えています。
・区職員に対する体系的な災害対応研修の充実
・実際の災害対策本部に近い実践的な訓練の実施
・受援計画と救援物資物流体制の検証
・避難所生活の長期化を想定した訓練
・マンション防災、在宅避難対策の強化
・福祉施設や要配慮者への支援体制の充実
・町会・自治会、学校、企業などが連携する地域防災
・若い世代を含む災害対応人材の育成
・被災自治体への職員派遣と経験の共有
災害そのものを防ぐことはできません。
しかし、事前の備えによって、失われる命を減らし、被害を小さくすることはできます。
一人でも多くの命を守り、災害が発生した時に迷わず動ける葛飾区をつくるため、私も区議会議員として、これまで以上に災害対策の強化に取り組んでまいります。
改めまして、令和8年熊本地震で被害に遭われた皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。
今も救助や捜索を待っている方々の一刻も早い発見と、被災された皆様が安心して生活できる日が一日も早く訪れることを、心からお祈り申し上げます。




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