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岡本 のぶじ ブログ

兵庫・猪名川町【いながわの木喰学 第23回/いながわ木喰】

2026/7/29

7/29 東光寺の十王像群を前にすると、よく「どうして赤鬼や青鬼じゃなく、白鬼なんですか」と尋ねられます。実はその答えは、像の背中にしっかり書かれています。木喰上人自身が、鬼の背に「白鬼」と墨書しているのです。つまり木喰さんは、この鬼を公式に“白鬼”として位置づけていたわけです。
十王像の背中には琰魔大王の名は記されていますが、秦広王などの具体的な王名は書かれていません。これは木喰さんがそう記さなかったためで、後の研究者が作仏の順番に合わせて便宜的に名前を付けたものです。そして、すべての十王像の背には地蔵菩薩の種字「カ」が記されています。琰魔大王は地蔵菩薩の化身とされる思想があり、木喰さんは十王像を「地蔵の力が働く冥界の裁き」として理解していたことがうかがえます。
 
では、白鬼とは何者なのか。白鬼は、琰魔大王に仕える獄卒として亡者を取り締まる、いわば冥界の公務員のような存在です。絵解きで使われた「地獄変相十王図」には赤鬼や青鬼が登場するものもありますが、十王の裁きの場で“正式に登場する鬼”は白鬼であり、木喰さんはこの正規メンバーを忠実に採用したのでしょう。白い衣は「死」「喪」「無常」を象徴し、民間伝承の赤鬼・青鬼とはまったく系統が異なります。
 
そして重要なのは、木喰さんが白鬼を実際に造形したのは、全国でも猪名川町だけだという事実です。東光寺の十王像群は、木喰さんの思想と表現がもっとも純粋な形で現れた、唯一無二の作品なのです。
 
東光寺の十王像は、背中にこそ真実が宿しています。木喰さんが記した文字、選んだ種字、そして白鬼という設定。そのすべてが、木喰さんの世界観をそのまま形にした、非常に貴重な文化財です。猪名川町に残るこの十王像群は、町の誇りとして全国に発信すべき価値を持っています。【つづく】
 
木喰の魅力については、また次回以降。 〈いながわの木喰学〉として、これからも少しずつ丁寧にお伝えしていきます。 「いいね」で応援いただけると嬉しいです。

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著者

岡本 のぶじ

岡本 のぶじ

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肩書 猪名川町 町長
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