2026/8/10
JA全農千葉では令和8年産のコシヒカリ1等米の概算金について、1俵(60kg)18,000円という価格が示さたようです。
昨年、令和7年産の千葉県産コシヒカリ1等米について、JA全農千葉が示した仮渡金は1俵23,800円でした。単純に比較すると、23,800円 → 18,000円、1俵当たり5,800円、率にして約24%の下落です。
もちろん、18,000円という金額だけを過去と比較すれば、歴史的な安値というわけではありません。数年前には1俵1万円前後という時期もありました。
しかし、今と当時では農業を取り巻く環境が大きく違います。米価は下がっても、生産コストは年々高騰しています。肥料、農薬、燃料、電気代、農業機械、資材など、米づくりに必要なさまざまな経費が上昇しています。
農林水産省の農業生産資材価格指数を見ても、令和2年を100とした場合、令和6年平均では肥料が137.1、光熱動力が130.0となっています。つまり、肥料は約37%、光熱動力は約30%高い水準です。
最終的な追加払いもあるかもしれませんが、これだけ生産コストが上昇している中で、1俵18,000円で本当に持続的な再生産が可能なのか。これは真剣に考える必要があります。
1俵5,800円の下落は経営に大きく響く仮に10アール(1反)の田んぼから8俵収穫するとします。
昨年から1俵5,800円下落すれば、5,800円×8俵=46,400円、10アール当たり約4万6千円の減収です。
1ヘクタールなら約46万円。
5ヘクタールなら約232万円。
10ヘクタールなら約464万円減収です。
もちろん収量や等級、販売方法などによって変わりますが、農業経営への影響が小さくないことは分かります。
さらに農家は、トラクター、コンバイン、田植機など数百万円、場合によっては1千万円を超える農業機械を更新しながら営農を続けなければなりません。
5年後、10年後にも機械を更新して米を作り続けられるのか。それこそが「再生産可能な価格」を考える上で重要だと思います。
そして疑問なのが「備蓄米の買戻し」です
もう一つ、今回の米価下落を考える上で気になるのが政府の備蓄米政策です。
昨年、米価が大幅に上昇した際、政府は価格高騰への対応として大量の政府備蓄米を市場に放出しました。消費者の負担を抑えるために政府が対応すること自体は必要です。
しかし一方で、現在は新米価格が大きく下落する局面に入っています。にもかかわらず、政府は放出した備蓄米の本格的な買戻しをまだ行っていません。
政府は、今年の作柄や需給状況などを見極めながら、適切なタイミングで判断するとしています。
米価が高騰した時には備蓄米を市場に放出して供給を増やしたのに、米価が急落する局面では、なぜ市場から米を買い戻すことに慎重なのでしょうか。
政府が放出した備蓄米が市場に残る一方で、これから令和8年産の新米が本格的に流通します。市場に余った備蓄米は当然、新米価格への下落圧力になります。
政府の政策によって市場に供給した米について、その後の需給や生産者への影響まで含めて責任を持つ必要があるのではないでしょうか。
もちろん、米価は高ければ高いほど良いという話ではありません。
米は日本人の主食です。価格が高騰すれば、家計を圧迫します。一方で、生産者が赤字になる価格まで下がれば、米を作る農家そのものがいなくなってしまいます。
だからこそ、「スーパーのお米はいくらなら安いのか」という議論だけではなく、「農家が来年も、その次の年も米を作り続けられる価格はいくらなのか」という議論が必要です。
消費者が安心して購入できる価格と、生産者が再生産できる価格。この二つを両立させることこそ、農業政策の役割だと思います。
私が最も心配しているのが離農です。
農業政策というと、新規就農、担い手への農地集約、規模拡大、スマート農業などが注目されます。もちろん、どれも重要です。
しかし、それと同じくらい重要なのが、「今いる農家に辞めてもらわないこと」ではないでしょうか。
「機械が壊れたら、その時に辞めよう」「この収入では子どもには継がせられない」そう考える農家が少しずつ増えていきます。
農地は、一度耕作されなくなると簡単には元に戻りません。草が生え、荒廃し、水路や農道を維持する人も減っていきます。
また、水田には米を作るだけではなく、大雨の際に水を一時的に貯める機能、地下水の涵養、生物多様性や景観の維持など、地域を守る多面的な役割があります。
世界情勢が不安定化し、食料安全保障の重要性が高まる中で、国内の生産基盤を失ってから、「やっぱり国内で米を作ろう」と言っても、農地も農業機械も、そして農業技術を持った人もすぐには戻りません。
私はこれまでも、農業の持続的な発展を考える上で、「新規就農」や「規模拡大」だけではなく、「離農防止」そのものを政策目標として明確に位置付けるべきだと考えてきました。
農家が求めているのは、一時的に高い米価ではありません。
来年も、5年後も、10年後も、「米を作り続けよう」と思える環境です。
今年の米価の大幅な下落をきっかけに、「農家を辞めさせないために何が必要なのか」を、県政の場でもしっかり議論していきたいと思います。

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