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令和6年度決算を振り返る――黒字でも「使えない」理由と、備える財政へ

2025/10/10

令和6年度の芦屋市決算は、全体として黒字で着地しました。市税収入が増加し、数字上は安定した財政運営を維持しています。実質収支も引き続き黒字を確保しており、財政運営は健全な範囲にあります。ただし、この黒字は「余裕がある」という意味ではなく、結果的に黒字になったと受け止めています。

歳入増の実態 ― 一時的な増収に注意

歳入の増加には、株式等譲渡所得の増加による個人市民税の上振れが大きく影響しています。市民税は結果的には4年連続増加ときわめて好調ですが、株式等譲渡所得は本来不安定なものです。いつ逆転現象に陥るかわからない状況でもあり、当初予算編成時に見込んでおくこともできないし、楽観視もできないと感じています。

また、こうした収入は、年度途中にならないと分からない一時的なものです。つまりは予算編成の段階で見込むことはできず、「たまたま結果として増えた」ものです。

予算編成時に見込んでいる歳入ではないため、増収といっても、毎年安定的に使えるお金が増えたとは言いにくいです。地方財政では、単年度主義の原則により、歳計剰余金の使い方が明確に定められています。

単年度主義と黒字処理 ― 黒字は「備え」に回す仕組み

地方自治体の会計は「単年度主義」が原則です。年度ごとに収支を完結させる必要があり、原則として翌年度にお金を持ち越すことはできません。

ただし、実際の行政運営では年度をまたぐ支出も多く、そのために「繰越金」や「繰越明許費」といった仕組みが設けられています。これにより単年度主義を保ちつつ、年度間の調整弁が働くようになっています。

黒字が出た場合、歳計剰余金のうち2分の1以上を財政調整基金に積み立て、残りを翌年度の繰越金として活用するのが芦屋市のルールです(芦屋市財政基金条例第2条)この“以上”という規定がポイントで、余裕がある年にはさらに多く積み増すことができる仕組みになっています。

翌年度の当初予算に繰り入れたとしても、翌年また剰余金が出れば、その一部が再び基金へ回り、結果的に基金が少しずつ積み上がる構造になります。繰り越した分も使い切られずに再び剰余となることが多く、制度的に“安定を重ねていく”循環ができています。

基金を積む・使うのバランス ― 「1/2ルール」はちょうどいい設計

将来への備えのため、「全部を基金に積めばいい」と思う人もいるかもしれませんが、それは一概にベストとも言い切れないものがあります。というのも、将来への備えは大切ですが、いまの市民生活を支える事業も同じくらい大事だからです。だからこそ、歳計剰余金の2分の1以上を財調基金に積み立てるという仕組みは、その両立を図る“ちょうどいいバランス”を取った制度設計だと思います。

芦屋市のように「以上」と定めているのは、財政に余裕があるときには、もう一歩備えを厚くできるという、柔軟で堅実な考え方の表れだと受け止めています。

実質黒字と基金残高 ― 体力を測る本当の指標

芦屋市はここ数年、実質収支の黒字を維持し、あわせて財政調整基金の残高も堅調に増やしています。つまり、黒字で、かつ貯金を増やしている状況。これは自治体財政としてきわめて健全な状態です。

個人的には、単年度の収支よりもむしろ基金残高の推移を重視しています。黒字でも基金を取り崩していれば、それは体力を削っているのと同じ。逆に、黒字を積み増しに回して基金を維持できていれば、それは“備えが強化されている”ということです。

経常収支比率92% ― 攻めに転じにくい構造

芦屋市の経常収支比率は92%。全国的には良好な水準ですが、逆に言えば政策的に自由に使えるのは残りの8%。人件費や扶助費、公債費といった固定費が財政を圧迫しており、積極的な「攻めの予算編成」は難しいのが現状です。

よって、政策的経費を広げようと思うと、どこかを削っていく必要がある。最終的に使えるお金は変わらないので、こっちを上げたらあっちが下がる。行政は、このバランスの部分が難しいんです。よく、子育て支援を言います。高齢者の人たちはよく「自分たちはいいから、未来の世代にお金を使ってあげてくれ」と言ってくれます。「わかりました!」というわけにはいかんのですね行政は。

じゃあ稼いだら良いじゃんか!っていうところなんですが、結局、歳入のほとんどは税金なんですね。基幹的なサービスはもちろん、それ以外の公共事業も「利益追求型」ではありませんから。だからこそ、サービス合戦が行われている訳なんですが、割引戦争の行きつく先は市場の疲弊なので。人口を増やすなら、自然増を図らないと意味がないんですね。

人口構造のアンバランスと“耐え忍ぶ時期”

いまの日本は、人口ピラミッドがいびつです。団塊世代と団塊ジュニアの二つの山のあと、人口の山はありません。団塊世代は後期高齢者に突入しました。社会でこの層を支えるフェーズに入りました。現役世代が減り、社会保障費が増える。この構造が続く限り、地方財政はしばらく厳しい時期を迎えます。

いまはまさに耐え忍ぶ時期。何とか基金を食いつぶすことなく、安定的な財政運営を継続することが求められています。

まとめ

黒字は「余裕」ではなく「備え」。芦屋市は、増収分をすぐに使うのではなく、財政調整基金への積立や市債の繰上償還に回すという堅実な運営を続けています。

人口減は固い推計として言われています。なるべく人口増を図るというプランも大事ですが、人口減少社会においても行政を破綻させることがないような運営も必要になってくると考えています。攻めと守りの両立が求められると思います。

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