2026/5/30
ブティック 池井戸潤
池井戸潤作品は、半沢直樹シリーズをはじめ、結構読んでいます。
水戸黄門や寅さんシリーズのように結末がなんとなく予想できて、読んでみると、まあ、やっぱりという感じで、安心して(?)読めるエンタメ小説として、出張の飛行機や新幹線での読み物としてはLee Childか池井戸潤かという感じですね。
今回の「ブティック」というタイトルの新作を、半沢直樹シリーズの新しいのが出たのかと勘違いして買ってしまいましたが、M&Aをテーマにした別作品でした。
しかし、今回、ここで取り上げるのは、この本が、まさに私がこれまで主張してきたことをドラマ仕立てにしてくれているからです。
私はこれまで、M&Aの「アドバイザー」あるいは仲介業者が、売り手と買い手の双方から手数料を取っている現状は、利益相反であり、禁止すべきだと訴えてきました。
M&Aの多くの場合、特に中小企業の場合、売り手は自分の会社を売ってしまえばそれで終わりです。
しかし、買い手の側は、その後も中小企業を買う可能性があります。
つまり、売り手のアドバイザーはその一回限りですが、買い手のアドバイザーはその後もアドバイザー契約を結んでくれる可能性があります。
もし、一つの業者が、売り手と買い手の双方のアドバイザーを同時に務めたら、今回限りのビジネスになる可能性が大きい売り手よりも、今後もビジネスになる可能性がある買い手を重視することになります。
売り手にとって、フェアなアドバイスを受けられなくなるわけです。
だから売り手または買い手のどちらかのアドバイザーにしかなれないというルールを確立するべきだし、売り手は、双方から手数料を貰っているような企業とアドバイザー契約を結ぶべきではないのです。
また、金融機関がアドバイザーとしてM&Aに絡む場合があります。
買い手のアドバイザーに金融機関の関連企業がついた場合、そして、その買収資金をその金融機関が用立てましょうという場合、買収価格が高くなるほど金融機関は大きな融資をすることができます。
もちろん、融資して大丈夫なのかというリスクの判断は必要ですが、買収価格が高くなるほど手数料だけでなく、その後の融資にもつながる金融機関関係の企業をアドバイザーにつけるというのが買い手にとってよいことなのか、という疑問もこの小説は投げかけています。
もちろん、金融機関がバックにいるからこそ買収資金が出せるということもあるかもしれません。
中小企業のM&Aが私の周りでも、比較的たくさん起こるようになりました。
だからこそ、注意を促したいと思います。
そういう意味でのおすすめの一冊です。
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