2026/8/3
能登半島地震から約2年半が経過した2026年4月。石川県穴水町社会福祉協議会(社協)の現場を訪ね、発災直後から現在に至るまでの災害対応体制や在宅・仮設支援の統合運用についてお話を伺いました。
現場で見たのは、「作業支援」と「生活支援」を一体化させ、外部NPOや地域ネットワークを巧みに巻き込みながら住民に寄り添い続ける社協の姿です。
他自治体の防災・福祉担当者にとっても極めて示唆に富む事例を、ブログ記事として分かりやすくまとめました。
2024年1月1日の発災直後、穴水町社協の拠点施設「プルート」(指定避難所兼ボランティアセンター)には、翌朝までに約400名が殺到し、廊下にまで避難者が溢れかえる雑居状態となりました。
町が提携していた既存の福祉避難所3施設が機能不全に陥る中、社協は役場の混乱を待つことなく主導的に動きました。
即時の空間確保:隣接スペースを「福祉避難スペース」へ即座に転用。
入口の可視化:ピンク色の紙に「福祉的支援が必要な方専用」と掲示し、車椅子利用者、認知症の方、障害当事者などを円滑に誘導・ゾーニング。
夜間ケアの継続:派遣チームの体制が整うまでの間、民間スタッフや看護経験者が徹夜でトイレ介助や服薬支援、移動配慮を現場で支え抜きました。
所感「マニュアル通りにいかない発災初期」において、現場の状況判断で柔軟にスペースを再定義し、
最も脆弱な人々を守る初動対応の重要性が示されました。
穴水町社協の大きな特徴は、ボランティアセンター(技術・作業系)と支え合いセンター(生活支援系)を分離させず、同時並行・一体運用した点にあります。
社協自らがすべての業務を抱え込むのではなく、「ハブ・橋渡し・統括」に専念し、専門性を持つ外部団体へ果敢に委任・分業を行いました。
| 連携団体 | 担った役割・成果 |
| 専門NPO「ADRA」 | 2024年2月から常駐。重機・水道など「準業者レベル」の技術系ニーズの窓口・判定を一括処理。仮設全532世帯への家電一式配布も手掛ける。 |
| レスキューストックヤード | 避難所・生活支援・在宅巡回を広範にサポート。最大規模の仮設「夕日ヶ丘団地」内に民間拠点「ボラマチ邸」を設置し、2026年現在も常駐支援を継続。 |
| 三者連携会議 | 行政・社協・民間(NPO等)が対等に情報を共有する会議体を2024年1月16日から開始。現場の声を素早く行政業務に反映させ、行政の過負荷を軽減。 |
震災から時間が経つにつれ、「表面上は元気に見える被災者」への支援漏れが課題となりました。
そこで社協は、仮設住宅と在宅の全世帯を対象とした大規模な総当たり訪問(全戸再訪)を決断します。
対象:在宅約300世帯 + 仮設約530世帯 = 合計約830世帯
体制:地域の福祉推進員 + 外部支援者のペアによる戸別訪問
聞き取り内容:
未取得の補助金はないか
体調悪化や介護化、医療・看護ニーズの有無
ボランティア要請の有無
この泥臭いアウトリーチにより、これまで声を発していなかった住民の潜在ニーズを掘り起こし、社協の専門チームや医療・看護機関、ボランティアへと即座に繋げています。
復旧・復興が進む一方で、平時からの地域課題が浮き彫りになる局面もありました。
権利擁護の空白:震災直後、町内の司法書士が実質ゼロ状態になり、独居高齢者や身寄りのない方の権利擁護に空白が生じるリスクが発生。司法書士会の斡旋により、2026年春からようやく文化センターに1名が常駐化しました。
帰還の壁:仮設住宅の入居数はピーク時の約532世帯から約415世帯(2026年5月時点)へ減少したものの、子の元へ身を寄せた高齢者の帰還決断は難しく、帰還促進策(「ふるさとバス」の運行等)の継続的支援が求められています。
穴水町での教訓をもとに、他の自治体や社協が今すぐ取り組むべき5つのアクションが考えられます。
「三者連携会議」の事前協定化
有事に「行政・社協・民間」の連携会議を立ち上げることを平時から明文化し、対策本部にボランティア席を公式設置する。
権利擁護(後見・法制度)の広域バックアップ
地域外の司法書士・弁護士ネットワークと非常時派遣協定を結び、災害初期の権利擁護の空白を防ぐ。
平時からの見守り網の標準化
一人暮らし世帯ごとに「地域福祉推進員」等を事前指定し、要配慮者台帳を活用した安否確認訓練を行っておく。
技術系NPOとの事前マッチング
重機運用や特殊支援ができる専門NPOとあらかじめ連携ルートを構築し、窓口を一元化できる体制を整える。
「元気層」も含めたアウトリーチの仕組み化
発災後時間が経っても「助けて」と言えない層がいる前提で、全戸訪問などのアウトリーチ計画を標準プロセスにしておく。
穴水町社協の事例が教えてくれるのは、「社協がすべてを抱え込むのではなく、外部のプロフェッショナルやボランティアを束ねるハブとして機能すること」の大切さです。
「作業支援」と「生活支援」をひとつにまとめ、住民一人の声に耳を傾け続ける統合運用モデルは、今後の日本の地域防災・被災者支援における重要なスタンダードになっていくはずです。
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ニヘイ フミタカ/68歳/男
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