選挙ドットコム

機動戦闘車が陸自を弱体化させる。

2016/9/5

清谷 信一

清谷 信一

機動戦闘車は16式機動戦闘車と命名され、本年度の36輌の調達に続き、来年度概算要求でも33車輌という大量の要求がなされています。
ですが、機動戦闘車は無用の長物です。無用どころか有害であり、予算と人間を喰って自衛隊を弱体化させます。
本来現防衛大綱では戦車を300車輌まで減らし、浮いた予算や人員を他に振り向けるとの趣旨のはずでした。

ところがゲリコマ対処や島嶼防衛に必要だということで、10式戦車に続いて16式機動戦闘車まで導入されました。本来戦車を減らしたカネや人を他の分野に突っ込むことができたのが、それができません。陸自は国防よりも各兵科の組織防衛と天下り先の確保を優先しました。
それでいて、オスプレイは導入するAAV7も入れる、兵站も強化する、無人機やネットワーク、情報化も強化するといいます。どこにそのような予算と人員がいるのでしょうか。しかも兵隊さんの充足率は今も低いままです。

機動戦闘車が陸自を弱体化させる

陸自は、機動戦闘車は戦車ではないといいます
なのに過大な105ミリ砲を搭載しています。人口の7割が都市部に集中する「我が国固有の環境」を鑑みれば76ミリあるいは90ミリ砲など、より小さな砲が望ましい。そうであれば、もっと軽い車体、例えばC-130輸送機で空輸可能なにまったはずです。28トンではC-2でもギリギリか危ない重量であり、離島への空輸は殆ど不可能です。
しかもゲリコマ用としては防御が弱い。ゲリコマ用に必要なのは敵の攻撃に耐えられる動くトーチカです。既存の戦車を強化してIEDやタンデム弾頭の対戦車ロケットなどに対処できるようにしたものが適しています。

ところが機動戦闘車では携行型の対戦車兵器で簡単に撃破されます。
他国では市街戦用のドーザーや増加装甲キットを装備した車輌もありますが、機動戦闘車にはありません。
しかも市街戦で必要とされる多目的榴弾も開発されておりません。
実際問題として機動戦闘車は装甲がペラペラな戦車に過ぎません。つまり機動戦闘車は早く走れるだけの、劣化した旧式戦車にすぎません。74式を近代化した方がはるかにマシでした。

とどのつまり、陸自には戦車の運用能力がありません。また戦闘組織として何が必要で、何を諦めるかの決断もできません。
大変失礼かと思いますが、陸自に戦車を与えるのはサルにPCや自動車を与えるようなものです。戦車というバナナさえあればハッピーなおサルさんです。

昔から戦車だけを偏愛し、他の装甲車両や弾薬の調達、兵站には無関心で、北海道にしか敵は上陸してこないなどといって戦車を北海道に集めていました。
それは願望でしかなく、前の戦争もその願望を元に作戦を立ててボロ負けしました。のみならず多くの「陛下の赤子」が敵弾ではなく、飢餓や病気で命を落としました。
その戦訓をまったく理解しないおサルさんに、戦車という火の出る玩具を税金で買ってあげる必要はありません。適切に機甲戦力を保持できないのであれば、陸自の機甲科は潰したほうが宜しい。戦車という玩具を取り上げれば悪さはしないでしょう。
ぼくは基本的に小規模でも適正な機甲戦力、戦車は維持するべきとの意見ですが、何しろおサルさんにそれを要求するのは無理というものです。
おサルさんを追放し、歩兵用装甲車両、C4ISR、衛生、兵站などにアセットを分配するほうがよほど陸自の能力は強化されるはずです。いや、おさるさんの方がまだましです。おサルさんが食べるのはバナナであって、税金を貪り食ったりしませんから。戦車や戦車もどきにカネをすてるならば、奨学金や片親家庭の支援に税金を使うべきです。

※本記事は「清谷信一公式ブログ 清谷防衛経済研究所」の9月4日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。

この記事をシェアする

清谷 信一

清谷 信一

軍事ジャーナリスト、作家。 1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003~08年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。 著書:『国防の死角』(PHP)、『専守防衛』(祥伝社新書)『防衛破綻──「ガラパゴス化」する自衛隊装備』(中公新書ラクレ)、『自衛隊、そして日本の非常識』(河出書房新社)、『弱者のための喧嘩術』(幻冬舎アウトロー文庫)、『こんな自衛隊に誰がした!--戦えない「軍隊」を徹底解剖』(廣済堂)、『不思議の国の自衛隊--─誰がための自衛隊なのか!?』KKベストセラーズ)、『ル・オタク--フランスおたく物語』(講談社文庫)、『軍事を知らずして平和を語るな 』(石破 茂氏との共著 KKベストセラーズ)、『アメリカの落日──「戦争と正義』の正体』(日下公人氏との共著 廣済堂)などがある。 朝日新聞のWEBRONZA+、日経BPの日経ビジネスオンラインなどネットメディアにも寄稿。

選挙ドットコムの最新記事をお届けします

採用情報

記事ランキング

ホーム記事・コラム機動戦闘車が陸自を弱体化させる。

icon_arrow_b_whiteicon_arrow_r_whiteicon_arrow_t_whiteicon_calender_grayicon_email_blueicon_fbicon_fb_whiteicon_googleicon_google_whiteicon_homeicon_homepageicon_lineicon_loginicon_login2icon_password_blueicon_posticon_rankingicon_searchicon_searchicon_searchicon_searchicon_staricon_twitter_whiteicon_youtubeicon_postcode