6月26日公開の「選挙ドットコムちゃんねる」では、今国会で議論となっている「国旗損壊罪」の条文案と処罰対象を徹底解剖。罰則対象の線引きや、立法事実上の問題点など、法案のポイントと課題についてMCの毎日新聞政治部・田中裕之記者と政治ジャーナリスト・今野忍記者がわかりやすく解説します。

MC田中記者:今回、自民党の中でプロジェクトチームを組んで、この「国旗損壊罪法案」というのを作ってきて、そして日本維新の会、国民民主党と参政党で共同提出しているわけですけれども、この条文がじゃあ一体何を処罰するものなのかっていうことが、みんな関心あるし、国会でもそれが中心になって今審議されているんですよ。どんな法案なのか、まずちょっとスライドで皆さん見ていただきたいんですが、こういう条文になっています。

ちょっと曖昧で分かりにくいんですけど、「人に著しく不快、又は嫌悪の情を催させるような方法により、公然と国旗を損壊し、除去し、又は汚損した者は、二年以下の拘禁刑又は二十万円以下の罰金に処する」(と規定しており)、「人に著しく不快、又は嫌悪の情を催させるようなことを公然と行うこと」が処罰に当たるということです。これに該当するかどうかの判断は、「行為の外形、周囲の状況、その他の客観的な事情を総合的に勘案」となっていて、これまた分かりにくいんだけれども、この条文を読んだだけだと、何が罰せられるかって具体的によくわからないじゃないですか。

その上で、この国旗損壊罪法案の第三条ですけど、わざわざ「表現の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に侵害しないように留意しなければならない」という条文を入れているんですよね。これはなぜかって言うと、憲法に「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」「一切の表現の自由は、これを保障する」という規定があって、憲法違反になっちゃいけないから法律としてわざわざこの第三条にも盛り込んでいる。ポイントは、憲法違反にならない範囲でどうやって処罰していくかというところ。自民党のプロジェクトチームは非常に腐心して、さっきのような条文にしたんですけれども、その結果どうなったかって言うと、代表例として分かりやすいんですが、「国旗にバツ印をつけて、それを持ち込んで振る」っていうのは結構話題になったじゃない。

今野記者:ああ、参政党の神谷(宗幣)さんが怒ってるやつだろ。(中略)

MC田中記者:今回の法案では、これは罰せられない。参政党的な立法事実はこれだったけど。今回の自民党と共同提出した法案とは別に、参政党は法案を出していました。参政党はどういう法案を出していたかと言うと、この条文とは違って日本を侮辱する目的で損壊したものを罰するという趣旨の条文なんですよ。少し条文の書き方は違うんですけど、これは昔、高市(早苗)さんが自民党が野党時代の2012年に出した法律とほぼほぼ同じ条文です。(中略)

今野記者:基本的には日本国家を侮辱するもりでやってるかどうかの判定ができないってことでしょ。参政党のデモに行って参政党を攻撃するつもりで日本国旗にバツ印をつけてやっても、それは日本国家を侮辱してるかどうかわからないもんね。(中略)どうしたら処罰できるの?

MC田中記者:処罰はね、おそらくできないと思いますよ。憲法は重いので。(中略)じゃあ、一体何が処罰できるんだいっていうとこで、国会審議が進んでいるんですよ。このリストは、法案提出者の国民民主党が24日にざっと10個ぐらい挙げたものです。

例えば処罰対象は「駅前広場で持参した国旗を引き裂いたり、燃やしたり、切り刻んだりする」。

今野記者:これは器物損壊じゃないの?燃やしたりしたら危ないだろ。

MC田中記者:器物損壊ですよ。ただ、器物損壊罪は他人の所有物なんですよ。自分の所有物に対しては器物損壊罪は適用できないから、自分が持っている国旗を駅前広場で引き裂いたりしたら国旗損壊罪で処罰できる。(中略)

今野記者:基本的には他人のものだったら器物損壊罪で、自分の旗だった時に器物損壊罪が適用されないから今回の国旗損壊罪が使えますよということですね。

MC田中記者: 最後は、YouTubeとかSNS配信なんですけど、「自宅で国旗を切り刻み、燃やしている状況をスマホで動画撮影し、ライブ配信する」。これは「ライブ配信」が重要なんです。「公然と」の部分はライブ配信になって、録画したものを事後的に配信することは処罰できないんですよ。(中略)

今野記者:元々、SNSの画像とか動画でやっていたら処罰対象だけど、国民主党に言われて外したんだっけ?

MC田中記者: そうです。外した結果、事後的なものも外れました。(中略)これの一つポイントは、共同提出でも、国民主党と参政党でちょっと方向性が違うんですよ。国民民主党はできるだけ限定しようっていう立場で入っている。一方、参政党はできるだけ広げたい。適用しやすくしたい。(中略)限界事例みたいなのがたくさん出てきているんですけど、ちょっとこれを国会で大真面目にやっているのは、なんというか、ちょっとくすっとしちゃうところはあるんですよね。やっぱり、国旗損壊罪を作るっていう時にこういう議論になっちゃうんですよね。だから結局は、国民民主党の幹部も言っていましたけれども、その結果、右の人から見ても満足いかない内容だし、左からしても「そんなのやめろ」っていうので、右からも左からも「こんなのいらない」みたいな意見が今出てきてしまっている。

今野記者:外国国旗の規定はあるから日本国旗の規定がないのはおかしいという気持ちはわかるんだけどね。ただ、自民党が示した立法事実が厳しくなっちゃったんだよ。田中さんの記事にもあったけど、1987年に沖縄県で開かれた国体の競技会場に掲揚されていた国旗が、引きずり下ろされてライターで焼かれた事件。1991年には、大学生が大学の正門に掲揚されていた国旗を引きずり下ろした。1996年には、旧海軍殉職者の記念碑近くのポールに掲揚されていた国旗が焼かれた。2008年に靖国神社の境内で参拝客が所持していた国旗が足で踏みつけられ、さおが折られた。いずれも器物損壊で立件されているんだよね。(中略)結局さ、今のところ、自民党はこの法案における立法事実としては答えられなかったんだよね。つまり、自分で持ってきた国旗をやった事例は、ひょっとしたらあるのかもしれないけど、今のところないんだよね。

MC田中記者:刑事事件になるぐらいのレベルじゃないと、詳細にはわからないじゃないですか。その中から持ってくる事例は現行法の刑法で処罰できるような器物損壊の事例になっちゃうっていうのは、致し方ないところではあるんだけれどもね。

今野記者:だから、それの代わりと言っちゃあれだけど、日本会議の百地(章)さんはそういう問題じゃないんだと。「国旗に象徴される国の威信と名誉こそ、本当の保護法益」だからさ、立法事実がどうこうっていう細かい話じゃないんだと。

MC田中記者:参政党に代表されるような、国旗損壊罪が必要だと本当に思っていた人たちは、百地さんと同じ意見ですよね。けど、そこは自民党の中の議論で、憲法との兼ね合いでできなかったという整理になってます。

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