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【皇室典範改正】政治記者が明かす2017年退位特例法の舞台裏!総理、野党、そして世論との落としどころを見出した副総裁の政治力とは

2026/6/15

選挙ドットコム編集部

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6月12日公開の「選挙ドットコムちゃんねる」では、国会で審議が進む皇室典範改正の最新動向を取り上げます。皇室典範改正にあたっては衆議院と参議院の両院で「立法府の総意」をまとめましたが、これには前例がありました。どういう状況の中で、どのように立法府の総意を作るのか、前回取材を重ねてきた毎日新聞政治部の田中裕之記者が水面下の交渉やその着地点の見出し方について裏話を披露します!MCの山本期日前氏も舌を巻いた2人のキーマンの政治力とは?

MC期日前氏: 田中さんがもう皇室典範についてかなり取材をされていたとお聞きしているので、そちらのお話を是非お伺いできればと思います。(中略)

田中記者:衆参両議院で、立法府の総意も取りまとめられました。

今回の立法府の総意、皇室典範改正に向けた項目は三つ並んでいますが、大きく言ったら二つです。一つは「女性皇族の結婚後の身分を保持する」案、そしてもう一つは「旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎える」案でした。それに対して各党派が態度を表明しているわけですけれども、(スライドの表を)ご覧の通り結構バラけてといえばバラけてるんですよ。 今回、立法府の総意に対して各党派が「了とする」という、賛成でも反対でもない「了とする」っていう独特の言い方で、これを法制化する提言にしたわけですけれども、大きく言うと、この女性皇族の結婚後の身分保持ということに対してはほとんど丸がついてますよね。野党第一党の衆議院だったら中道、参議院なら立憲も含めて大体総意になっているだろうということです。

もう一方の旧宮家の男系男子を養子として皇室に迎える案に対しては、立憲の長浜(博行)さんが「理解不能」とまで言ってましたけれども、こちらに関しては「了」とは言わず、何も言及しないっていう形で、非常に消極的な、賛同しないような姿勢を示しました。その他、日本共産党、社民党などもこの養子案には賛成していません。日本保守党は、保守の立場から女性皇族(の結婚後の身分保持の案)の方に賛同していない状況になっています。

そして、次のグラフが、6月と5月の各社の世論調査結果です。

国民世論はどうなのかというと、こちらも温度差があります。「女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する案」に対しては、賛成7割ぐらいで、反対は2割もいかずに本当に少ない。ほぼほぼ賛成ですよね。これに対して、この「養子案」に対しては、若干賛成が多いんですけれども、ほぼ拮抗していると見えるということで、「身分保持案」と「養子案」に対しては、政党・国民世論を含めて温度差はあるというところなんですよ。 これを立法府の総意として、先日高市(早苗)総理に議長の方から渡して、これから政府がこれを基に皇室典範改正の法案を立法するわけでありますけれども、こういったスキーム、衆議院・参議院両方で立法府の総意をまとめて政府に提言し、皇室典範を改正するっていう流れは今回が初めてではありません。 実は前例があって、そのスキームを踏襲しています。その前例は何かって言うと、2019年に今の上皇陛下が退位された時です。退位されて、元号が令和に変わって、今の天皇陛下に代替わりするわけでありますけれども、2017年にこの皇室典範の前回の改正が行われ、立法府の総意というものが取りまとめられました。どういう状況の中で、どうやってこの立法府の総意を作るのか、前回退位の時にどういう舞台裏があったのかを私は深く取材をしております。当時の自民党の責任者が高村正彦副総裁だったんですね。私は番記者を務めていました。今回の自民党責任者は副総裁の麻生(太郎)さんっていうことで、副総裁が自民党を代表して責任者になるということで、高村さんに当時、退位に関する立法府の総意がまとまった時に私は直接話を聞いて、どんなやり取りが水面下であったのかっていうことを、今日、当時記事にしていない部分も含めて、1回その当時どういうことがあったのか、そこから今どういう教訓があるかということを今日はお話をできればなと思います。

MC期日前氏:多分今まで、色んな番組で皇室典範を取り上げていると思うんですけども、そうじゃない話がすごく聞けるんですね!

田中記者:前回の皇室典範改正の際は、上皇陛下の退位の気持ちをにじませるお言葉から始まります、その時、立法府では立法府の総意がどういう風にまとめられたのか。今回みたいに、衆参両院の議長と副議長の下に各党の責任者が集まって話し合うっていう全体会議を当時もやっていました。表の会議で色々やることは新聞とかテレビで出てくるんですが、やっぱり裏の動きがあるんですよ。水面下でどうやってやってたかという部分なんですけれども、当時全体会議をやっている裏で高村副総裁はまず何をしたかと言うと、内閣官房の中に「皇室典範改正準備室」っていう組織があるんですよ。ここが皇室典範に関わる政府の作業をするところです。

高村さんはまず、その皇室典範改正準備室の事務方の役人の方を呼んで、「退位を実現させる皇室典範の改正には、こんなイメージでやったらいいんじゃないか」っていうのをその事務方に喋るんですよ。で、「まず条文案作ってくれ」と、「俺はこういう風に考えてるから、これだったら多分与野党いけるだろうから」っていう

MC期日前氏:ある程度のライン、着地点みたいなところを先に伝えて、それに合うような法律の条文案を作ってきてくれと言ったんですね。

田中記者:それで、今度はその事務方の人が高村さんに持ってきた案が、最初に二つありました。一つは「天皇の退位」ということに関して、高村さんは「天皇陛下」ではなくて、位としての「天皇」(なぜ天皇陛下って言わないかというと、そういうことなんですけど)の退位についてというイメージをしたんだけれども、事務方が持ってきたもう1案は「今上天皇について」と書いてあったんです。現在の陛下のことを今上天皇、今上陛下と言います。高村さんがその条文案に「今上天皇」と書いてあった理由を聞いたら、その事務方の人は当時の安倍晋三総理の安倍政権では「総理周辺には、例外であることをはっきり示すために『今上天皇の退位』とすべきだという人が多いんです」と言ったんですよ。

当時の天皇の退位の議論っていうのは、保守派の方々からは「もう一代限りにすべきだ」と。天皇陛下が退位するっていうのは過去に例はあるんですけれども、明治時代以降は基本的には終身在位であるべきだというのがあって、やっぱりその天皇の位の安定性のためにも一代限りということを明確にするために、法律には「今上天皇」と書くべきだっていう論があった。

それは皇室典範改正準備室の人は「総理周辺の言い方」として高村さんに持ち込んだんですけど、高村さんはその事務方の人に「周辺は分かった。周辺の考えはそうだけれども、総理はどう考えてるんだ?」って言ったら、その事務方は「それは分かりません」て言うから、高村さんが「じゃあ安倍さんと話すよ」っていう風に安倍さんと話しに行くんですね。これが2017年2月9日に高村さんは総理と会ったと言ってるんですけど、高村さん的には今上天皇ではなくて「天皇」(の方の意見だった)。退位の特例法はそうなったんですけれども。高村さんは当時の世論調査では「一代限りより恒久的にすべきだ」という意見がずっと多い、「多いから一代限りというのは強調しすぎない方がいい」という意見だったんだよね。それに対して、当時の安倍総理に「今上天皇にするかどうか」と聞いたら、「私の周辺にはね、そう考える人が多いので、ちょっと考えさせてください」って引き取ったんですよ。

MC期日前氏: そうなんですか。

田中記者:それで、この後2月17日にもう1回、高村さんは安倍さんと面会しに行くんですけれども、その時安倍総理は「分かりました。もう『今上天皇』と入れなくても結構です。ただし、退位は例外であるということはっきりするようにしてください」というようなことを言ったんですよ。「それは分かりました」ということで、だから「今上天皇」とは書かれないことになったんだけれども、高村さんは譲歩が不可欠だと腹を決めたんですよ。世論も恒久的なものを求めてるんだけども、事実上はそれは例外であるということ、つまり特例だから「特例法」っていうことにするんだけれども、それは保守派と世論、あとは当時は民進党も恒久的な制度を求めていたから、それといかに調整するかかっていうことに高村さんはそれに腐心したんだよね。

立法府の総意を作るためには、その世論と野党第一党、そして自民党、総理大臣、すべての意見を合わせた落としどころはどこかっていうことを高村さんは腐心するんですよ。だからそれに高村さんが最終的に見出した案っていうのは、「今上」とは書き込まないんだけれども、これは「特例」法であるということにした。さらに、特例法と皇室典範が一体であるっていうことをわざわざ条文に盛り込むことによって、これは恒久的なものでもありますよっていうことでも読めるようにしたんだよね。野党対策、世論対策として。

MC期日前氏: どっちでもいけるように!なるほどなぁ!

田中記者: 特例法の特例だから一代限りでしょ。

MC期日前氏:テクニックみたいな。

田中記者:高村さんは弁護士だったからね。それに安倍さんと直接対話できる状態で、かつ野党の意見、世論の意見も踏まえながら「着地点はここだ」っていうことでやった。けどね、まだ当時クリアすべき課題があって、もう一人キーマンがいたんですよ。当時の大島理森衆院議長です。

MC期日前氏: ああ、「悪代官」でしたっけ?

田中記者: そうそうそう(苦笑)。大島理森衆院議長のもとでこの会議は開かれたんですけれども、大島理森議長と高村正彦副総裁は同じ派閥だったんですね。高村派の後に大島派になるんだけれども、2人の間ではパイプがあって、大島議長から高村さんに何て言われてたかって言うと、「『女性宮家等』っていう文言を入れてくれ」と。これは法律っていうより立法府の総意の中なんだけれども、 それと「女性宮家等の検討を1年以内の国会報告を入れてくれ」と。それはなぜかって言うと、大島さんからは「これをやらないと野田佳彦さんが民進党をまとめられない」って「『女性宮家等』だからいいだろう」と、「女性宮家」という言葉が入ることによって女性宮家創設を主張していた民進党の顔を立てる。「等」ってついてるからさ、よく分かんないじゃん。けど、文言があるということを立法府の総意に盛り込むことによって着地できないかっていうことを、大島さんから高村さんに言った。高村さんはそれを聞いて、また安倍さんのとこに行くんだけれども、安倍さんは「さすがにそれは勘弁してくれ」と。それを議長に伝えたら、結局ね、その時の立法府の総意っていうのは両論併記みたいな感じになったんですよ。「女性宮家等で1年以内に期限を明示するという意見もあり」みたいな。「それは難しいけれども」っていうような、そういう両論併記みたいなボワーっとした立法府の総意が生まれたんですよね。

MC期日前氏: だから、総意であるけど、とにかく断定せずにも色んな角度から解釈できるように……。

田中記者:安倍さんの意見も入れるし、議長から聞いた野党側の意見も入れるんだけど、全体的にボワーっとしたようなものは作ってたんですよね。高村さんもあえてその時、「野田佳彦さんと話してない」と言ってました。大島さんを通じていました。

MC期日前氏: あ、話してないですね。直でやると、例えばお願いされちゃったりしますもんね。

田中記者: 直で会ったこと自体でかえってお互いの党でハレーションが生まれるっていうことです。そこは空中戦でやってんですよ。

MC期日前氏: そういうことなんですね。

田中記者: そう。だから、関係者全員が安倍さんも含めて完全に納得したわけじゃないんですけど、それぞれが一定譲歩して、当時の立法府の総意っていうのは作られていた。曖昧な部分も結構あるじゃない。けど、それによってどうだったかって言うと、前回の退位の特例法っていうのは自由党を除く全政党が賛成してできたんですよ。さっき、野党の今回の立法府の総意は、参議院の野党第一党の立憲が反対ではないんだけど、特に養子案に対してはちょっと消極的な感じじゃないですか。当時は民進党も含めて、もうほぼ全政党が納得できる立法府の総意、特例法が出来上がった。

MC期日前氏: ああ、じゃあ当時反対してるところっていうのは基本ない。

田中記者: そう。民意も退位は陛下のお気持ちもあるからすごく賛成していたというような背景があった。

それで、今回との違いで言うと、その時の退位ほどの立法府の合意は作れなかったんですけれども、政治だけでは整いきれなかった曖昧な部分が残ったんですよね。特に養子案の部分で世論が割れていたり、立憲が反対したりっていうことがあって。この立法府の総意がまとまった後に、昨日(6月11日)天皇陛下の記者会見があったんですけれども、「国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」と。国民の総意、国民の理解によって支えられてる皇室であるので、今後、政府が皇室典範の法律を作る時に、法技術的にマニアックなんだけれども、皇室典範の本則にするのか附則にするのか、それとも退位みたいな特例法、例外的なものにするのか。その養子案と身分保持案それぞれをどういう風に法律の中に位置づけるのかっていうのが、前回の退位みたく、特例法だけど一体となるっていうのを附則につけてみたりとかさ。どういう法律にするのかっていう細かな制度設計がまた今度出てくんですね。

MC期日前氏:より細かい。達人の技みたいな。

田中記者:多方面に配慮したね。 それがどこまでできるのかっていうのは、今後の焦点です。

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