2024年12月に「非常戒厳」を宣言したことが憲法などに違反しているとして尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が罷免されたことに伴う韓国の大統領選挙は、きょう6月3日に投開票されます。このコラムでは、韓国の大統領選挙の仕組みや特徴について解説します。
最初に、日本にはない「大統領」という役職の権限と役割を確認しておきましょう。
日本の内閣総理大臣が行政府(内閣)のトップであるのに対し、大統領は行政のトップとして政府を率いるだけでなく、国家元首の役割もあり、軍の統帥権も持っています。予算案の提出権、法案の拒否権、条約の締結・批准権、宣戦布告権、憲法改正提案権、戒厳令布告権、恩赦権など、強大な権限を持ちます。
行政機関や公共機関、軍、司法の主要人事(約2万人分)を掌握できるため、政権交代時には人事刷新が大規模に行われることになります。
また、日本の総理は国会議員の中から国会の議決によって指名されて決まるのに対して、韓国の大統領は国民による直接投票で選出されます。国民の直接選挙によって選ばれるため、議会とは独立した強い正統性を持つのです。
大統領は議会に対して責任を負いませんが、議会(国会)は大統領に対する弾劾訴追権を持ち、司法(憲法裁判所)が弾劾を決定するチェック機能があります。このため、今回のように議会が大統領を弾劾裁判にかけるよう要求して、裁判所が弾劾を認めれば大統領は罷免されることになります。
それでは、韓国の大統領選の仕組みを見ていきましょう。先述の通り、韓国の大統領は国民による直接選挙で選ばれます。投票権は18歳以上の国民に与えられています。
選挙に立候補できる「被選挙権」は40歳以上の国民に与えられていますが、立候補の要件として以下のいずれかを満たす必要があります。
・政党から立候補する場合は、政党による推薦
・無所属で立候補する場合は、5以上の広域自治体から各700人以上の推薦
立候補する場合は、投票日の24日前までに届け出ます。選挙運動ができる期間は22日間で、候補者はテレビ討論会や街頭演説、SNSなどを通じて政策を訴えます。「キャンプ」と呼ばれる選挙陣営を組織し、政策立案や選挙戦略を展開します。
投票日は学校や企業が休みとなる「公休日」となり、全国の投票所で投票が行われます。投票終了後、現地時間20時から開票が始まり、深夜から翌朝にかけて結果が判明します。
最多得票者がそのまま当選者となり、過半数に満たなくても決選投票は行われません。もし、複数の候補が同数の場合は国会で決定されます。今回は、大統領職が「空位」になっている状態での選挙ですので、当選者が決まった瞬間から任期が始まります
任期は5年で、再選は禁止されています。つまり、一度大統領になれば、再び大統領選に出ることはできません。
韓国の大統領選挙は、国民の直接投票によって5年ごとに国家のリーダーを選ぶ制度です。保守と革新の対立が激しく、選挙戦は非常に白熱します。
今回の選挙戦では、最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)氏、与党「国民の力」の金文洙(キム・ムンス)氏、保守系野党「改革新党」の李俊錫(イ・ジュンソク)氏が三つ巴の戦いを展開して、李氏がリードしているとの一部報道があります。
一方で、強大な権力を持つ大統領制ゆえに、収賄などの不祥事や権力乱用が発生しやすい土壌があると指摘されています。過去には、大統領が退任後に逮捕・起訴・有罪判決を受けたり、不正追及を苦に自殺したりするなど、不幸な末路をたどるケースもありました。
また、SNSを使った選挙運動は、情報拡散のプラットフォームや候補者と有権者間のコミュニケーションツールとしてその重要性を増している一方で、実際にはない発言や動画を作る「ディープフェイク」を利用した投稿が増えて社会問題となっています。韓国の公選法ではディープフェイクの使用が禁止され、違反者には懲役または罰金を科すと規定したものの、規制が追い付かず歯止めがかからないという問題が露呈しています。
韓国の大統領選挙は、その仕組みと権限の強さゆえに、常に大きな注目を集めています。今回の選挙もまた、韓国の政治や選挙のあり方、そして今後の日韓関係を考える上で重要な機会となるでしょう。今後の韓国の動向に、引き続き注目していきましょう!
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