今こそ公選法のアップデートを!ポスターサイズ規定廃止や選挙公報義務化を盛り込んだ提言の狙いを未来政経研究所にインタビュー

2024/09/06

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選挙ドットコム編集部

今年に入り、選挙妨害やポスター、政見放送など問題が露出したことから、選挙について規定する「公職選挙法」(以下、公選法)の改正の必要性が話題に上っています。各政党も今秋の臨時国会を見据えて議論のテーブルについているところです。こうした動きに先駆けて、未来政経研究所が2024年9月6日、「選挙公営制度に関する提言」をまとめました。同提言では、ポスター掲示スペースの販売・譲渡の禁止やポスターサイズ規定の緩和、政見放送の方法の見直しなどを盛り込んでおり、対処療法にとどまらない根本的な問題解決につなげるための具体策を提案しています。

選挙ドットコム編集部は、同研究所理事長で提言作成に携わった島田光喜氏にお話を伺いました。

選挙ドットコム編集部(以下、編集部):
提言をまとめるに至った経緯は?

島田光喜氏(以下、島田氏):
今年4月の東京15区の衆院補選で起こった「選挙妨害」、そして7月の都知事選では選挙の当選を目的としない売名目的の候補者が乱立してポスター枠の「販売」や過激な政見放送などが問題になりました。これらは日本の選挙制度・民主主義の歴史からみても大きな「汚点」と言えるもので、公選法を見直す必要性を強く感じました。

そこで、研究所内に「選挙公営改革プロジェクトチーム」を立ち上げ、研究所顧問でもあり選挙制度を研究している早稲田大学の日野愛郎教授、選挙プランナーの松田馨氏らを中心に提言をまとめました。 

編集部:
今回の提言では、6項目挙げていますが、最初の1項目は「ポスター掲示場に関する改正」ですね。

 (1)   はまさに、7月の都知事選でNHKから国民を守る党が行って波紋を広げたケースを念頭に置いていると受け取られます。

立候補者本人以外の写真が複数使われていた都知事選の選挙ポスター(2024年7月、編集部撮影)

島田氏:
ポスター掲示場は公職選挙法第143条に定められている通り、当選することを目的に選挙公営制度のもと公費により補助されたスペースです。公費により補助されたスペースを販売することや他者に譲渡することを禁止すべきだと考えています。悪用を防ぐという趣旨です。 

編集部:
一方、(2)と(3) ではポスターの事前審査、電子提出とサイズ規定の廃止を求めていますね。これにはどのような狙いがありますか?

島田氏:
候補者の思想・信条の自由を尊重すべきことは言うまでもありませんが、公序良俗に反するポスターは事前に掲示を拒否できることが望ましいと考えています。現状の公選法には、政見放送と選挙公報にある「不法利用罪」と同様にポスターにも罰則規定を設けるべきです。

併せて、ポスターの掲示は選挙管理委員会が一括で貼り出すことを提案しています。現状では立候補者自身が行っているために組織力、資金力の差によってポスターを貼る数やスピードは大きく異なるのが実情だからです。一括掲示によって候補者の公開性、公平性を担保することにつなげるべきと考えます。

もう一つの電子提出・サイズ規定廃止は、都知事選でのポスター枠不足を受けて提案しています。公選法では、ポスターサイズを縦・横それぞれコンマ1桁まで厳格に決めていますが、電子化すれば拡大・縮小ができ、立候補者数に応じた柔軟な対応が可能になります。

実際に、オランダでは選挙管理委員会に該当する公的な機関が一括して掲示板サイズの大きなポスターに印字し、公営掲示板に貼っています。オランダでもデジタルサイネージと併用するなど、掲示場所に応じた柔軟な対応をしています。日本でも公的機関による一括掲示を検討してもよい時期ではないでしょうか。

都知事選ではポスター枠が不足し、クリアフィルに入れて枠外に貼ることを余儀なくされた候補者も(2024年7月、編集部撮影)

編集部:
2項目めは「選挙公報の充実」です。

選挙公報の発行の義務化という強めの規定を出していますが、この意図は?

島田氏:
選挙公報については、国政選挙と都道府県知事の選挙のみで義務化されており、都道府県議会議員選挙、市区町村長・議員選挙は任意制となっており、発行していない自治体もあります。

以前は、新聞折込で全戸配布しているケースも多かったのですが新聞購読部数の減少に伴い、自治体の負担が増えていることも選挙公報を発行しない原因の一つとなっています。

しかし、選挙公報は全ての候補者が同じサイズの枠で情報をまとめており、一覧性が高く、有権者が候補者や政党を比較考量して、投票行動を決める重要な媒体だと考えています。全ての選挙において義務化することが望ましいと思います。

編集部:
3項目と4項目では、衆院選や都知事選で問題になった政見放送とSNSでのコンテンツ収益の問題に踏み込んでいらっしゃいますね。

島田氏:
政見放送の広告換算額は非常に高額であり、供託金の額では賄いきれていません。このため、政見放送については公共の電波を使用するのをやめ、オンラインでの動画配信メディアの活用に切り替えていくべきです。

さらに、有権者の視点に立った際にも、現在の政見放送時間帯は早朝や深夜で多くの人にとって見やすい時間帯ではありません。総務省の調査では2022年以降、全年代で「テレビ(リアルタイム)視聴」より「インターネット利用」が長い傾向が出ています。YouTubeへのアップロードは十分な代替手段となり得ると考えています。

編集部:
選挙期間中のインターネット広告の収益化の無効とは可能なのでしょうか?

島田氏:
実際に、カナダでは2018年末に政治的広告を制限する法律が成立し、オンライン事業者に登録を義務付けました。その結果、グーグル・カナダは、翌年の総選挙の選挙期間中に同国の政党、党首、議会の現職議会議員、議員候補者に触れている広告や上記に関連づけられている社会問題を扱った広告を受け付けないことを発表しました。また、TikTokは政治的なコンテンツをもとに収益化することを制限しており、Government, Politician, and Political Party Account (GPPPA)のカテゴリーに該当する候補者は収益化できない仕組みを採り入れています。

もちろん、選挙活動は制限しないに越したことはありませんが、営利目的で本来健全であるべき選挙空間をかき乱す候補者が増えるようでは、有効な対応策を考えざるを得ません。とりわけ、日本は選挙活動が公的に補助されている国ですので、インターネット選挙を通じた収益を諦めさせることは正当化されるはずだと考えます。

編集部:
今年に続々と発生した選挙を巡る問題に対する解決提案について、よく理解できました。公選法は制定後、70年間もの間根本的には改正されていません。議論は尽きなかったのでは?

島田氏:
そうですね、なので一旦は臨時国会の開会を前にめどに提言をまとめようとゴール設定し、早急に取り組むべき施策に絞って提案をまとめました。自由民主党の総裁選や立憲民主党代表選があり、その後には解散総選挙も噂されるなど政治界隈の動きがあわただしい時期ですが、今から次の改善へと繋げていってもらえるよう研究所からも訴えていきたいです。

編集部:
本日はありがとうございました。

【未来政経研究所がまとめた「選挙公営制度に関する提言」の概要】

1.ポスター掲示場に関する改正
(1)ポスター掲示場スペースの販売・譲渡禁止
ポスター掲示場のスペースを寄付行為含め実質的に販売・譲渡することを禁止すべきである。
(2)選挙管理委員会(選管)によるポスターの事前審査・一括掲示
候補者や政党が特定される内容が記載されているか、選挙の当選を目的とする内容であるかを選管が事前審査において確認したうえでポスターを一括掲示すべきである(公職選挙法第235条の3の適用)。
(3)ポスターの電子提出とサイズ規定の削除
ポスター枠不足の問題を解消するためには、ポスターを電子的に提出することを求め、立候補者数に応じてポスターのサイズを縮小・拡大できる運用にするべきである。そのためにポスターサイズの規定を無くすべきである。
(4)立候補届出期間の前倒し
告示・公示より前に、事前審査と合わせて公営ポスター掲示板に掲載を希望する候補予定者のポスターを回収する期限を設定し、選管による一律でのポスター貼り付けが行われるように変更するべきである。
(5)ポスター掲示場設置場所の見直し
現状では公職選挙法144条の2の2項において、投票区につきポスター掲示場は5ヵ所以上10ヵ所以内と定められているが、投票所や役所などの公共施設、人が集まる駅周辺などに限定し費用対効果を高めるべきである。
2.選挙公報の充実
(1)選挙公報発行の義務化
地方自治体の首長選挙、議会議員選挙では、公職選挙法上、選挙公報の発行は必須でなく、各自治体の条例に委ねている。有権者が候補者を比較検討するという観点から選挙公報の役割は極めて重要であり、ポスター掲示場と同様に選挙公報の発行を公職選挙法において明記し、地方選挙においても義務化すべきである。
(2)寸法の統一
前述の地方選挙における選挙公報の寸法は自治体ごとに定められる条例に委ねているため、寸法にばらつきが生じている。選挙公報における各候補者の寸法を統一し、十分なスペースを確保するべきである。
3.政見放送の見直し
政見放送は、オンラインの特設サイトでの配信を基本として、インターネット環境がない有権者や不慣れな有権者には代替措置を講じるなど、そのあり方を見直すべきである。
4.選挙期間中におけるインターネット上収益の無効化
当選を目的とせずに、SNSやプラットフォームから得られる収益を目的に立候補する候補者が増えていることを踏まえ、選挙期間中に行われた選挙活動に関わるインターネット上の収益を無効化するべきである。
5.選挙運動用ビラ(証紙ビラ)・選挙運動用通常葉書(公選はがき)枚数の人口比例化
証紙ビラおよび公選はがきの枚数は、各級選挙ごとに一律に定めれているが、有権者数に応じて比例的に決めるべきである。
6.若年層の政治参画の促進
(1)被選挙権年齢について
被選挙権年齢について、選挙権年齢と同じく18歳への引き下げを検討するべきである。
(2)供託金の額の弾力化
供託金の額を一律ではなく、候補者の年齢に応じて弾力的に設定するべきである。


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選挙ドットコム編集部

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