松本市議会議員を6年半務めた青木たかし(あおき・たかし)さん。松本地域の県政課題に取り組むために、2021年10月に県議会議員補欠選挙に挑戦しましたが、次点で落選。その後、会社員や子育て、地域活動の経験を通して、改めて初心に立ち返り、松本平の政治を変えていきたいと、再度、県議会議員への挑戦を決意しました。
今回は、政治への思いや今後実現したい政策などについてご本人にお話を伺いました。
選挙ドットコム編集部(以下、編集部):
2015年に25歳の若さで県内初の平成生まれ議員として松本市の市議会議員選挙に当選されました。政治家を目指した経緯について教えていただけますか?
青木たかし氏(以下、青木氏):
子どもの頃から、社会問題の解決に関心がありました。23歳の時に、松本で若者地域おこしの団体代表を務め、公民館活動などに取り組みました。地域の課題を相談したいと思っても、当時、顔が思い浮かぶ人はいませんでした。SNSで発信している人もなかなかいなくて、誰に相談すればいいかわからないと感じていました。
その頃、自分も含む若い世代は、将来に希望を持てないで生活しているのに、若者の声を拾ってくれる場所もシステムもない。
この状況を変えるためには、自分が代弁者になり、地域や同世代が抱えている課題を政治に届けたいと思い、2015年に松本市議選に立候補したのが、政治家になったきっかけです。
編集部:
若い世代には、どのような声がありますか。
青木氏:
今の日本で将来みんな幸せになれるのかという切実な声が上がっています。
同年代の友人には、低賃金でいわゆるブラック企業で働かされているような精神的にも経済的にも厳しい生活の人もいます。賃金が上がらない状態で、仕事をせざるを得ない、そもそも結婚とか考えられないし、子育てに到達できないという声も聞きます。
若い世代の政治不信は、若い世代のリアルな声が政治へ届いていないのが問題だと感じました。
編集部:
2021年10月の県議会議員の補欠選挙で落選した後、浪人中はどのような活動をされていましたか。
青木氏:
2022年は会社員として働きながら、2児の父として子育てをし、地域の課題を聞いて歩きました。学校法人理事、ボーイスカウト育成会長、地区育成会長、保護司を務めたり、ライオンズクラブで子ども食堂の運営やフードドライブの企画など、地域の子どもの学びや安全、育ちの環境の整備に積極的に取り組んでいます。
大学生などの若者が集まるイベントにも参加して、話を聞いていますが、将来に対して悲観的な部分があることが気になっています。
未来に責任と覚悟を持って、地域や同世代の声を政治に届けるために政治活動に取り組もうと改めて決意しました。
編集部:
一番力を入れたい政策について、教えてください。
青木氏:
一番力を入れたいのは、子育て支援です。
0歳と1歳の子育て中の親として、当事者だからわかる視点で政策を出していきたいと考えています。
子育てに関する経済的負担の軽減は必要です。
東京・大阪を含む他県では、
・教育の無償化
・給食費の無償化
・オムツ代の補助
・現金給付
などに取り組んでいます。
そのような良い事例は、積極的に取り入れるべきだと考えます。
一時的な負担軽減策で満足することなく、信州の子育て環境を根本から良くしていきたいと本気で考えています。
そのために、若い世代や子育て世代の代表者として、生の意見を代弁し、政策に取り入れていきたいです。
編集部:
市議会議員時代から、情報発信に力をいれていると伺いました。詳しく教えていただけますか?
青木氏:
若い世代に政治の情報を届けるために、SNSの発信に力をいれています。
Twitter、Instagram、Facebook、YouTube、公式LINEなど、あらゆる媒体を通して、みなさんに必要な情報を伝えられるように最大限努力をしています。
公式LINEは、チャットで相談ができる便利なツールなので、意見や困りごとの受け皿にしたいと考えています。
アナログな手法ですが、街頭演説にも力を入れています。有権者と顔を合わせて一人一人と話ができる貴重な機会です。冬は目立つように赤いジャケットを着て演説をしています。普段から顔を覚えてもらい、何か困ったときに相談できる「顔の見える身近な政治家」でありたいと思っています。
編集部:
市議会議員時代に、SNSに届いたメッセージを政策につなげたと伺いました。詳しく教えていただけますか。
青木氏:
ある時SNSに「保育園に入れなくて、仕事を辞めなくてはいけない」という悲鳴のようなメッセージが2人から届きました。
当時「保育園落ちた日本死ね」というブログがマスコミで話題になっていましたが、松本市は待機児童がいないから大丈夫という認識だったので、議会でもまだ活発な議論がされていませんでした。
私は、2016年9月議会の一般質問で「隠れ待機児童(希望園に入れない子ども)の実態」について質問をしたところ、約40人がそのような状況にあることがわかりました。
その後、原因の一つである保育士不足の解消のために、嘱託保育士の給与アップと正規保育士の採用を増やすことを提案し、実施された実績があります。
市民の声から隠れていた課題が発覚し改善につながりました。その経験から、小さな声も見逃してはいけないと感じました。
編集部:
青木さんが市民の声を聞くために工夫していることはありますか。
青木氏:
相談のハードルを低くすることは、意識しています。
若い世代には、間違ったことを言ってはいけないという雰囲気を感じます。わざわざ議員に相談するほど問題はないと。
「じゃあ、車を運転してたり、自転車に乗っている時に困ることはない?」と具体的に聞くといろいろな話がでてくることがあります。
ある時は、車椅子利用者の大学生から「松本駅前の大通りからバスターミナルまでの道のりに段差があり怖い」という話を聞きました。市の管轄する部署と連携し、今ではスムーズに通れるように改修されました。
他にも、市と福祉団体と協力して、車椅子利用者が安全にバスに乗れるかという検証実験も行いました。松本市は、道が狭い場所が多く、安全に待機するスペースが確保されていない停留所は安全に乗降できる場所に移動しました。
まだ表に出ていない課題だけど、現場に行くことで初めてわかる問題点も多いです。一人一人の声をしっかり聞いて、行動に移すことはとても大切だと思っています。
編集部:
困っている人の話にはしっかりと耳を傾けたいという青木さんの姿勢が伝わってきました。相談を受けたら、すぐ行動に移すフットワークの軽さに驚きました。
青木氏:
私は、問題があると聞いたら、実際に現地に行くことを最優先にしています。
特に、政治は自分に何もしてくれないと思っている、若い世代の政治への不信感を変えたいです。
松本市総合体育館に公共のスケートボード場があります。スケートボードをやっている若者達から、利用者が増えてきたから、拡張してほしいという話があがりました。
自分たちの意見を届けるために、署名活動をして陳情する方法があるとアドバイスをしたところ、約800人分ものパーク拡張要望の署名を集め、市長に直接要望することに繋がりました。その結果、初心者向けのゾーンを新たに設置し、多くの人が利用しやすい施設になったこともあります。
そのように「声をあげると社会や政治が変わる」という経験を一つ一つ積み重ねて、政治への信頼を築いていきたいと思っています。
編集部:
他に、取り組みたい課題や政策はありますか。
青木氏:
信州を、若者や女性に選ばれる地域にしていきたいです。
若い世代を支援するには、経済対策、具体的には賃上げは必須だと思います。
ただ、中小企業が賃上げに対応するには、経済支援が必要です。
国には賃金の全国一律化や補助金の確保を要望し、県は中小企業が賃上げするための経済的な支援策や生産性を上げるための体制への支援策を行っていきたいです。
働き方改革や不妊治療への助成、産前産後ケアの充実も必要だと思います。
また、子ども達の未来に向けて教育の選択肢を増やしたいと思っています。移住を検討するポイントの一つが、「充実した教育環境があること」だと聞きます。この松本平ならではの環境を活かして、幼児教育、自然保育、国際教育など、都会に劣らない教育環境を実現したいと考えています。
編集部:
青木さんは、プライベートな時間はどのように過ごされていますか。
青木氏:
子どもと遊ぶ時間が一番楽しいですが、一人の時は、YouTubeを観るのが好きです。
移動中や寝る前の隙間時間に見るので、最近はショート動画を見る機会も増えました。ヒカルやMEGWINは昔から見ていて、エンタメ、ドッキリ、ゲーム実況などいろいろなジャンルを見ます。両学長は面白くて勉強になりますよね。
実は、私自身もYouTubeでの情報発信も考えています。社会問題や政治のことなどを解説して、視聴者が「面白そうだから見てたら、政治がわかってきた」となるような発信をしたいなと考えています。
編集部:
最後に、どのような長野県にしたいですか。
青木氏:
深刻な少子化に対して、兵庫県明石市や東京都のように、手厚い子育て支援策を打ち出す自治体が話題になっています。それらの自治体の一つとして、信州・松本平を「日本の子育て支援をリードするトップランナー」にまで引き上げるのが、私の政治家としての使命だと考えています。
今の時代にあった価値観を県政に反映することで、県政をアップデートしたいです。松本・東筑の住民の声を聴いて、行政と協力して、一つ一つの課題に取り組んでいきたいと思っています。
【青木たかし氏のプロフィールページはこちら】
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