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クリーン、フェア、オープンなデジタル改革法案への転換を (中谷一馬・衆議院議員)

2021/3/22

中谷 一馬

中谷 一馬

クリーン、フェア、オープンなデジタル改革及びDX施策について

平井卓也デジタル担当大臣とデジタル改革関連法案に関する質疑を続けているので、現時点における議論の状況と私の見解を記載します。

新型コロナウイルスの大流行は、私たちの生命財産を脅かすだけでなく、実体経済のあらゆる部分に大きな影響を及ぼしています。一日でも早くこの新型コロナの拡大を終息させるとともに、感染症対策を抜本的に見直し、国民の生命及び健康を守ることは日本において最優先の課題です。

またこのような有事においては、既存の発想にとらわれず、大胆な意思決定に基づき社会を変革し、国民の生命・財産を守ることが私たち政治に関わる者には強く求められます。こうした観点から新型コロナのさらなる感染拡大を防ぐことを最重要目的として、政治、行政のデジタル改革を進めていくことは大変重要なことです。

政府としてデジタル改革、DXを政府として進めていこうという姿勢は私個人的には評価していますし、今までのPCを日常的に使わない、USBがわからない不適格なデジタル担当大臣とは違って平井大臣は、デジタルに関して深い知見をお持ちの方なので、期待をしています。

しかしながら菅政権の掲げるデジタル化が仮に完璧に全てできたとしても世界のトップランナーに追いつくにはまだまだ程遠い現実があります。

こうした観点から今回のデジタル改革関連法案において、欠如している部分を中心に私からは意見提言を交えながら平井大臣などに質問をさせて頂きました。

 

台湾のオードリー・タン(唐鳳)デジタル大臣が語った3つの”F”

先日、議連の仲間達と共に台湾のオードリータン大臣と意見交換をしました。
その際、デジタル技術を用いた台湾の新型コロナ対策が成功した秘訣は、「Fast(速さ)」「Fair(公平さ)」「Fun(楽しさ)」だということを仰っておりました。

確かに台湾ほどデジタル化が進んだ国であれば、データやAPIを利活用して有事に対応したシステムの実装を速く行うこともできるでしょうし、政府への信頼もあって、ユーモアを交えながらインフォデミックに打ち勝つような広報ができたんだろうなと推察しました。

しかしながら日本においては、その前段階で国民の信頼を得るためのクリーンさや、各施策においてあらゆるステークホルダーの声に耳を傾け、双方向で意見を交わすといったオープンな国家を目指さなくてはならないと思いますし、その結果が社会のデジタル化を進めると考えております。

そこで平井大臣に、クリーン、フェア、オープンに政治・行政分野におけるデジタル改革及びDXを進めて頂くことには前向きかと伺ったところ、完全に同意しますとご答弁を頂きました。

 

デジタル改革関連法案が6法の束ね法案として提出したことの弊害

今後日本がデジタル化を進めて行くためには、安倍政権、菅政権において著しく欠如してしまったクリーン、フェア、オープンな規範と理念に基づいた施策を打ち出し、政府への信頼回復を図ることが必要不可欠であると考えています。

そこでまずクリーンな改革について、提言をさせて頂きますが、デジタル改革関連法案が6法案をまとめて「束ね法案」として提出し、一括審議・成立を目指されておりますが、この法案の審議の仕方や提出のフローには大変問題があると考えています。デジタル化を進めるには、国民がこの政府になら情報を出しても良いなと思ってもらえるように、透明性を向上させ、国民の信頼を得られなければそもそもデジタル化は進展しません。

そうした中、
「デジタル社会形成基本法案」、
「デジタル庁設置法案」、
「デジタル社会形成整備法案」、
「公金受取口座登録法案」、
「マイナンバー利用による預貯金口座管理法案」、
「地方公共団体情報システム標準化法案」
などこれら一つひとつがとても重たい法案です。

にも関わらず、背景が異なる複数の法案を一緒に扱うことを進めた結果として、デジタル改革関連法案に45箇所の誤記が発生するという前代未聞の事態が発生しています。

平井大臣は、法案を束ねたこと自体が原因ではないと答弁されていましたが、今回のミスに関しては、束ね法案として提出したことにより起こった問題や弊害は何もなかったと考えられているのなら甘過ぎると指摘をせざるを得ないと思いますが、多分理解していないのではなく政局的なご発言だと個人的には理解をしております。

求められるガバナンス改革とトップのマネジメント能力

私も企業経営に携わっていたことがありますが、日本の頭脳とも言える優秀な官僚の皆様がこんな凡ミスを45箇所も見逃すなどということは通常考えにくいと思います。

即ち属人的な理由であるというよりも菅政権発足後数ヶ月での膨大な量の法案作成業務を行うための作業スケジュールは適切であったのか、使っているソフトウェアやデバイスなどの作業環境は整っていたのかなど、そもそも指示を出すトップが適切なマネジメントができていたのかといった本質的な問題点があると感じています。

先日の毎日新聞で、「デジタル改革関連法案」に関してこんな報道が出ていました。

「通常国会では例年、翌年度の当初予算案を3月下旬に成立させた後に法案審議に入る。しかし今回、予算案の参院審議中に関連法案を衆院で審議入りさせた。政府・与党は4月中に法案を成立させたい考えだ。自民党中堅は「実現した政策を並べて解散というのが首相の頭の中にあるのではないか」と指摘する。」という内容です。

緊急事態宣言の延長時にも囁かれましたが、仮に束ね法案がEBPMに基づいた判断というよりもトップが政局的な自己の都合を現場に押し付けた結果、こうしたミスが発生しているのであれば、それは政権の成果どころか日本国の国益に反すると思います。

 

社会のデジタル化は「スピード」と「精度」バランスが求められる

政府は、二度とこうしたミスを起こさないために再発防止チームを立ち上げ、国会への報告をされるということですが、また束ね法案の作業行程などスケジュール感やガバナンス的な問題や官僚の皆様の働く作業環境が適切であったのかなどについてはしっかりと検証をして頂きたいと思います。

また、「急がば回れ」という諺がありますが、真に日本のデジタル化を進展させたいと政府が考えているのであれば、さまざまなステークホルダーと丁寧な対話を交えながらデジタル化を進めた方が、結果として進展すると考えます。

私たち審議する側も問題点が多岐にわたっているにも関わらず、束ねられることによって内容を深めにくく、生煮えのまま審議が打ち切られる懸念は拭えませんので、そもそも論として各法案ごとに丁寧な審議をすることが不可欠であると考えております。

こうした観点からも今後は束ね法案を提出されることは極力控え、各法案ごとに丁寧な審議・審査を行う機会をフェアに確保すると同時に、準備などに関してもスピード感だけではなく、精度との両立を図れる適切なスケジュールでの法案作成を行って頂きたいと思います。

 

コロナ禍における参政権の保障とインターネット投票について

菅政権の掲げるデジタル化が仮に完璧に全てできたとしても世界のトップランナーに追いつくにはまだまだ程遠い現実があることは前述の通りです。

例えば、内閣官房IT室が主催するデジタル改革アイデアボックスの本日時点における人気ランキング1位である「インターネット投票」は、多くの国民がインターネット投票の実現に対して期待を寄せているところであり、エストニアなどではすでに実装されております。

新型コロナの感染が日本中に広がる中においても、様々なレイヤーでの選挙は実施をされ続けています。選挙が実施されることとなれば、当然、日本国憲法15条において定められた「参政権」を保障することが求められます。つまり全ての有権者が投票する権利を確保することが極めて重要です。

新型コロナの陽性者や濃厚接触者が、不在者投票指定施設に指定されていない病院や宿泊施設、自宅などで隔離療養をされている場合、投票する意思があったとしても、現実的には投票所に赴くことはできず、投票することができないことが想定されます。

新型コロナウイルス感染症患者が、入院先から逃げた時には、50万円以下の過料を科せられるなど外出は極めて困難な状態です。そして新型コロナは、誰もが、突然、「濃厚接触者」「陽性者」となる可能性があり、隔離されることの予測は不可能で投票日直前にかかる状況が生じる可能性があります。

また、選挙管理委員会などの職員や他の有権者の安心安全も確保することも考えなくてはなりません。

現行の制度による投開票作業における感染リスクを鑑みると、新型コロナに感染した場合、今までの投票方法と制度では、有権者と選挙管理者双方が「安心安全」な投票環境を確保することは困難であり、これは、民主主義の根本を揺るがすべき問題であり、早急に解決すべき課題と考えます。

そこで、私は、コロナ禍においても投票する権利の保障することを目指し、「新型コロナウイルス陽性者及び隔離者に対し、オンラインによる投票を認めること」を対案として提言します。これは日本IT団体連盟が提案しており、投票所以外の特定の場所において、専用回線やVPN基準に適合する端末等を用いたオンライン投票を実装するというもので、技術的にも容易に進めることができます。

もちろん「誰もが個人所有のスマートフォンやパソコンから投票することができる」いわゆる「インターネット投票」が実装できればそれが一番の理想ですが、まだそこまでのシステム整備が日本政府として追いついていない現状を鑑みれば、限定的なアクセスによってセキュリティが高く、導入も容易な「オンライン投票」という手法は現実的な手段としては最適解であると考えます。

また、総務省が在外投票において、「在外選挙インターネット投票の実証事業」を実施しており、順調に実証が進められている現状を鑑みればこのシステムの転用を行うことも現実的にはできると考えております。

こうした観点から、投票開票を迅速に行うことができ、接触機会が限りなくゼロにすることができる「専用回線等を用いたオンライン投票」並びに、「在外選挙インターネット投票システムを転用したインターネット投票」をコロナ禍における投票手法として私は実装して頂きたいと提言致しました。

 

デジタル改革関連法案で欠如した論点と今後の議論

その他にも、
「全ての行政文書を電子データとして長期間保存の義務化」
「誰がいつどのような個人情報を利用したのか、国民が知る権利と具体的な知るシステム」
「オンライン議会を開催するための環境整備」
「陳情・請願権のデジタル化」
「リコールや住民投票など直接請求におけるデジタル化」
などあげればキリがありませんが、これらの問題についても折を見て、今後記事にまとめて寄稿させて頂きたいと考えております。

引き続き、国会ではデジタル改革関連法案についての質疑を行って参りますので、ご注目を頂けましたら幸いです。

衆議院インターネット中継
https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=51707&media_type=

 

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中谷 一馬

中谷 一馬

1983年生。B型。貧しい母子家庭で育つ。厳しい経済環境で育ったことから、経済的な自立に焦り、日吉中学卒業後、社会に出る。だがうまく行かず、同じような想いを持った仲間たちとグループを形成し、代表格となる。しかし「何か違う」思い直し、横浜平沼高校に復学。その後も社会人として働きながら、呉竹鍼灸柔整専門学校にて柔道整復師の資格を取得し、慶應義塾大学に進学。デジタルハリウッド大学大学院にてMVPを受賞し首席で修了。DCM(デジタルコンテンツマネジメント)修士号の学位を取得。その傍ら、東証一部に上場したIT企業(株)gumiの創業に役員として参画。こうした過程において、社会を変革する必要性を感じ、人の役に立つ人生を歩みたいと政界進出を決意。その後、第94代内閣総理大臣 菅直人の秘書を務め、27歳で神奈川県議会における県政史上最年少議員として当選。在職中、世界経済フォーラム(通称:ダボス会議)のGlobal Shapersに地方議員として史上初選出され33歳以下の日本代表メンバーとして活動。また第7回マニフェスト大賞にて、その年に一番優れた政策を提言した議員に贈られる最優秀政策提言賞を受賞。さらに著書の『セイジカ新世代』(幻冬舎)が「憲政の神様」尾崎行雄記念財団が選ぶ「今年の一冊」咢堂ブックオブザイヤー2020にて大賞を受賞。現在は、立憲民主党 神奈川7区(横浜市港北区・都筑区) 衆議院議員、立憲民主党デジタル政策PT & 科学技術イノベーション議員連盟の事務局長としてデジタル政策を中心に活動中。趣味は、"ラーメン"の食べ歩き。

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