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若者×インスタ×選挙は序章。「NO YOUTH NO JAPAN」は「若者の政治参加」カルチャー作りにチャレンジします(能條桃子)

2019/9/9

能條桃子

能條桃子

NO YOUTH NO JAPANの活動を始めてから、2ヶ月ほどが経過しました。
少しずつ参議院選挙(以下、参院選)が落ち着いて、今後の活動について動けるようになってきたので、振り返りつつ今後の展望を書きたいと思います。

NO YOUTH NO JAPANとは?

NO YOUTH NO JAPANとは参院選で、Instagramを中心にU30世代に投票に行くことを呼びかけた活動であり、U30世代の投票率UPを目指して始めたグループです。
あとで説明したいと思いますが、選挙が終わり、ここからは若い世代から「国民する」というカルチャーをつくることをゴールに活動していこうと思っています。
「国民する」とは、「選挙に行くだけじゃなくて、自分たちが選んだ人たちがやっている政治について日常から知ったり、考えたり、対話したりするということを普通にする」ということです。選挙に行くことはもちろん大事です。でも、選挙に行こうと選挙前に盛り上がるだけでは、わたしたちが望む社会がつくられることにはならないし、投票率も上がらないのではないかと考えています。

私は、若者の投票率が80%を超えると言われているデンマークに、大学を休学して留学しています。このNO YOUTH NO JAPANの取り組みも、全てオンラインで日本や世界にいるたくさんの人に協力してもらいながらデンマークから行いました。
日本の若い世代の投票率が低いのは、若い世代の素質の問題ではなくて、若い世代を取りまく環境や文化、制度によるものだとデンマークに来て感じました。選挙前に全然自分の生活に選挙があること、政治の情報が入ってきません。情報は分かりにくいし、学校でも習わないからどこから見ればいいのかも分からないという声もよく聞きます。そもそも選挙があることを知らないまま選挙が通り過ぎていきます。

だから私たちは今回の選挙で「NO YOUTH NO JAPAN 参院選2019(@noyouth_nojapan)」というアカウントをつくり、活動を始めました。
このアカウントでは、「#どうして投票しないといけないの」「#どうやって選ぶの」といった選挙に行く人なら当たり前すぎて考えないかもしれないことから、「選挙の教科書」と題して選挙の仕組みの説明や政党の紹介を行いました。また、質問箱を設置して質問に答えたり、「#わたしが望む2025年の日本社会」「 #わたしが投票に行く理由」などみんなの声を集めて投稿したりと、フォローしてくれた人たちとインタラクティブに選挙や政治について考える機会になりました。

今年6月にデンマークで国政選挙があった時、私はデンマークにいましたが、多くの若い人が選挙について議論しているし、大きなイベントとして捉えていました。
デンマークと日本は比べるには教育や政治の構造的な仕組み、歴史や文化などあまりにも違いすぎます。
日本の教育や政治の仕組みも変えていければと思いますが、一大学生の私がすぐには大きな枠組みを変えられません。それでも、現地の学生団体にインタビューしながら、デンマークではなぜ若い世代の政治参加が盛んで投票率が高いのかを考え、たくさんの良い取り組みを知りました。特に情報の分かりやすさと身近さは、日本の選挙では見られないものでした。今、自分ができることがあるのではないかとウズウズした思いが芽生え、勢いだけでNO YOUTH NO JAPANの活動を参院選で始めることにしました。

ありそうでなかった選挙をクールに伝えるインスタの投稿は、ありがたいことにたくさんの方にシェアしていただき、2週間という短い期間で多くの若い世代に注目して頂きました。
160名もの同世代が、SNSを通じてこのLINEグループに入って、投稿をつくったり企画を考えたりシェアをしたりメンバーになってくれたりしました。なんと投票日には400名を超えていました。フォロワー数も1.5万人を超えて、小さくはあるが少しのムーブメントになったような気さえしました

自分のSNSでシェアしたメンバー募集のiPhoneのメモ1

自分のSNSでシェアしたメンバー募集のiPhoneのメモ2

投票率48.8% 参院選の結果について思うこと

今回の参院選、結果として投票率は48.8%でした。
10代については、31.3%と前回の参院選と比較して15%以上も下がりました。

少し手応えがあっただけに、とてもショックでした。
NO YOUTH NO JAPANの活動をデンマークでやりながら、今回はもしかしたら投票率上がるかもしれないなと密かに期待していたほどです。私たちのInstagramも、たった2週間の活動で、1.5万人以上の方にフォローしてもらえたし、投稿のビュー数の合計は100万を超えていました。
それに、たくさんの「初めて投票に行った」「今まで投票に行ったことがない恋人・家族・友達と一緒に投票した」「投稿のシェアをきっかけに友達と選挙の話を初めてした」というコメントをもらいました。

私の周りは盛り上がっているように見えたし、私たちの活動を抜きにしても、海外から覗いていた分には著名人の発言などがSNSで注目されているように見えていました。

だから、今回の参院選を通じて、どれだけ自分の見ているSNSが狭い世界であるかを思い知ったし、投票率を上げる難しさを実感しました。

投票率が半分を切る。これは、民主主義の危機なのではないでしょうか。既存のアプローチではどうにもならないし、システムとして欠陥があるように思います。

私たちの親の世代が若者であったであろう平成の初期、20代の投票率は50%前後。
私たちの親の親の世代が若者であったであろう1960年代、20代の投票率は60%前後。
今の20代の投票率が30%台という数値は異常であるし、歴史的に確実に下がっているとも言えます。
これは、公教育や社会で十分に投票に行く文化をつくれていないから、家庭環境に左右されている結果ではないでしょうか。また、制度が社会の変化にそぐわず、またそれ以上に私たちから離れていくものになっているとさえ感じます。

でも、文句や不満を言っていても仕方がない。
この仕組みすら、つくってきたのは人であるし、民主主義である以上私たちの手の中にあるはずです。
それに、投票率を上げるのは難しいと感じたものの、今回の選挙を通じて、私たちは無力でもないしできないことが全くない訳ではないとも知りました。
動いてみたら、もっとたくさんのできそうなことを見つけましたし、一緒の想いを持った人たちがいることに気づきました。
まだ諦めるのには早いですし、そもそもこの仕組みを使って社会が動いているのだから無関係にもなれません。何もせずに私たちから民主主義を手放すこともできないと思っています。

これから何をしよう。どうしたら投票率は上がるのか。
デンマークで受けた衝撃「若者に社会を前進させる力がある」

どうしたら若い世代の投票率が上がるのか?
その答えを求めて留学したデンマークでは、確実に若者が社会を変えていると感じました。現地で活動していて感動した話をひとつ紹介したいと思います。

今年の6月、デンマークでは国政選挙があったばかりですが、この選挙では全ての政党が環境に関する政策を掲げていたし、大きな論点の1つが気候変動に対しての環境政策でした。
正直なところ私は国をあげてここまで地球の気候変動について真剣に考えていることに、異常だとさえ感じました。確かに、環境問題が深刻なことも知っているし、もちろん重要な問題です。
だけど、信じられないほど老若男女みんなが「気候変動」を問題として、どの政党に投票するべきかを考えており、日本でずっと暮らしてきた私にとってこの状況があまりにも新鮮でした。

どうしてここまで政党が環境政策について熱心に話し、メディアが取り上げ、食卓で学校で議論するのだろうか。この国で何があったかをデンマーク人の友達に聞くと、こんな話をしてくれました。

「デンマークは、去年の夏が暑すぎた。夏の間ほとんど雨が降らず、芝生が枯れて、デンマークが航空写真で見ると茶色になった。エアコンが各家庭にほとんど設置されていないデンマークは、夏の暑さをみんなが実感した。そしてこれは『気候変動」のせいだと報じられた。」
日本だと「異常気象」と報じられそうだが、「気候変動」についてみんなが知ることになり、自分ごとになったそうです。

そしてもう一つの理由は、「若者の投票行動」です。
「今年の選挙の前の選挙、つまり4年前の選挙(2015年)の時点で、すでに気候変動に対するアクションの必要性は十分訴えられていた。
この4年前の選挙で、ウェルフェベック氏が率いるオルタナティブという新しい政党が誕生した。このオルタナティブは環境政党であり、左右のイデオロギーによる対立を否定し、環境政策を全面に打ち出した。初めての選挙で4.8%もの得票(9議席)を得たのだが、これを支持したのは、環境意識への意識が高い多くの若者だった。そして、この結果に焦った他の政党は今回の選挙で、環境政策を掲げることになった。」
確実に若者の投票行動が、政治家の政策にインパクトを与えているのだと知って、若い世代の意思ある投票の数は、本当に重要だと思いました。
ちなみに今回は5議席と、全ての政党が環境政策を掲げたことで4議席減らしましたが、デンマーク全体としては環境政策が前進したから良い結果だという声も聞こえました。なんて前向きなのでしょう。保身ばかり考えている政党だったら、こんなこと言えないだろうなと思いました。

私は、デンマークで政治活動をしている政党の青年部の活動に参加させてもらったりしていますが、確実に彼らの手によって、イデオロギーや考え方を超えて他の若い世代を巻き込んで、社会を前進させています。
もちろん完璧な国なんてないのだから、デンマークだってたくさんの問題があります。
だけど、こんなにも一生懸命に国のことや自分たちが生きている社会のことを考えて動き、実際にインパクトを与えている人たちがいる国の未来は明るいなとも思います。
早い子は10歳の時から政党の青年部に所属し、10代・20代が真剣に議論しアクションを取る基盤があります。政党の青年部は、若者の声を形成して政治に届ける役割だけでなく、議論できる政治家を育てている場所でもあるのです。
そして、デンマークには政党青年部に入らずとも、それに呼応する同世代がたくさんいます。花火大会に行くようにデモに参加し、好きなYouTubeについて話すように政治的なトピックの話をします。

デンマークだって、全員が政治好きな訳でも、毎日政治について考えている訳でもありません。
だけど、政治的・社会的ムーブメントに対するノリが全体的に良い。
そして、それが確実に政治を動かし、身の回りの生活を変えていると感じます。

NO YOUTH NO JAPANのこれから

デンマークと日本は色々と違います。社会的な構造も違えば、歴史も違うし、教育も違います。だけど、人間がつくっているということは同じだし、民主主義国家であるということも同じです。

私たちの社会には、どんな民主主義の形が合っているのでしょうか。
日本は何があれば日本と言えて、何がないと日本だとは言えないのでしょうか。
そういう根幹の理念や軸を見つめ直し、共有するところから始める必要があると思います。

この問いに対する的確な答えは分からないし、誰か一人が考えるものでもないでしょう。
ただひとつ私が言えるのは、私はひとりひとりが声を上げて協力すれば、自分の生きている国が良い方向に変えられると思える社会に生きたいです。だから、「NO YOUTH NO JAPAN」となるように、この活動を色々な人と一緒に続けていきたいと思っています。

政治参加の理由をデンマーク人の友達に聞いた時、「Because it works.」と答えていました。政治参加が意味あるものであるとみんなが認識すれば、自然と政治への意識も高くなるだろうし投票率も上がるのではないかと思っています。

参院選のプロジェクトはInstagramを利用し、できるだけ多くの同世代に選挙があること、投票に行く必要性、行くための知識を分かりやすく伝えました。

では、これからは何をしよう?
デンマークから帰国する10月から本格始動しようと思っていますが、最初に触れたように、活動のコンセプトは「国民する」というカルチャーを若い世代から日本でつくることです。

残念ながら今の日本は、若者の声が社会にあまり反映されていないし、されにくいシステムでもあると思います。「若者ひとりひとりが声を上げて協力すれば、自分の生きている国が良い方向に変えられると思える社会」にしていくためには、まずひとりひとりの意思を持った人たちが集まることも大切だし、増えることも重要です。

普段の生活から政治や社会について知って、考えて、対話して伝える機会。そして選挙の時は、自分が生きていく社会の未来を考えた上で投票に行く。そんな環境を作っていきたいです。

参院選プロジェクトをきっかけに集まった100名以上の10代・20代とともに、NO YOUTH NO JAPANがこのためにできることをしていこうと計画中です。

ぜひ、ご注目ください!
NO YOUTH NO JAPANに参加したいU30世代の方、メンバーになってください。
一緒に動いてくださる地方自治体・団体・企業の方、ぜひご連絡ください!

NO YOUTH NO JAPAN
連絡先(メール) noyouth.nojapan(a)gmail.com ((a)を@に)

Instagram noyouth_nojapan
Twitter @noyouth_nojapan

代表・能條桃子
Twitter @momoko.nojo
FB https://facebook.com/momoko.nojo

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能條桃子

21歳、大学生。NO YOUTH NO JAPAN代表。デンマーク留学中にあった2019年参議院選挙で、インスタを利用して投票に行こうキャンペーンを行い、NO YOUTH NO JAPANを創設。デンマークでは、現地の政党青年部や青年活動支援組織、政治参加イベントで若者の政治参加について学ぶ。若い世代の政治参加が関心テーマ。

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