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選挙公報を消さないで!!|署名運動に込められた思いとは

2019/7/15

宮原ジェフリー

宮原ジェフリー

参院選公示が目前に迫った2019年7月1日、「選挙が終わっても選挙公報を消さないでください!」という呼びかけに対して、インターネット署名サイトChange.orgを通じて、呼びかけから署名提出までの73日間で集まった17,600筆のデータを、私と共に「選挙公報を活かす会」として署名を呼びかけたフリーランスライターの畠山理仁氏が総務省の担当官に提出しました。

選挙で選ばれた政治家たちが選挙の時になにを訴えていたのか、有権者と何を約束したのか、逆に有権者はどんなことを言っている人を選挙で選んだのか、あるいは選ばなかったのか、それを振り返る手段って実はあんまりないってご存知でしたか?

「政治家のみなさん、選挙の時に言ってたこと守ってますか?」と言うために

選挙に当たって自分のWebサイトで政策や公約を発表する候補者も少なくありませんが、任期中に削除したり、改変したりされない保証はどこにもありません。多くの政治家は、選挙が終わるとWebサイトの更新をすることなく放置しています。レンタルサーバーの契約を切らしてデッドリンクにしてしまっている様子もよく見ます。
選挙中に配布するビラについても、これを保管・収集している機関はありませんので、個人的に集めてとっておかない限り振り返って見ることはできません。そもそもビラを作らない候補者もいますし、(今年4月の統一地方選挙までは地方議会の選挙ではビラを配ることができませんでした)全ての候補者のビラを手に入れることは至難の技です。実際、現在行われている参議院議員選挙にあたってほぼ毎日街頭演説を見に行っている私でも、東京選挙区から立候補した20候補者のうち、10候補しか姿を見ることができていません。(7月15日現在)40人前後が立候補する市議会議員選挙などでこれをやろうとするのはほとんど不可能と言っていいでしょう。
過去の新聞報道を図書館で振り返ることはできますが、選挙公報は候補者本人による直接的な発信である分重みがあります。また、新聞などのメディアは「主要候補」とされている一部候補者しか取り上げられないので、立候補届け出の際に全ての候補者に同じスペースが割り当てられる選挙公報の方が公平性が高いと言えます。

署名運動で訴えたこと

元々、新聞サイズの紙に印刷された選挙公報が各家庭に配布されていましたが、2011年の東日本大震災を契機に選挙管理委員会のWebサイトで選挙公報のpdf版を公開する流れが広まりました。しかし、その多くは投票期間が終了するのと同時に閲覧できない状態になってしまいます。全ての候補者(選挙公報の原稿を提出しなかった候補者は除く)が、選挙に立候補するにあたって有権者に向かって訴えた政策です。選挙が終わって、政治家になってからこそ、その約束に忠実に働いて欲しい、あるいは方向転換をせざるを得なかったのなら、きちんと説明して欲しい。そのために、いつでも過去の選挙公報を閲覧できる状態にしておいてもらいたい、という思いからこの署名活動はスタートしました。

この署名運動で訴えたのは以下の4項目です。

一、選挙期間中にアップロードした選挙公報は、少なくとも政治家の任期中は各選挙管理委員会のサーバーから削除しないでください。
一、選挙公報を発行していてもインターネット上で公開していない自治体は、有権者の利便性向上のために公開に向けた取り組みを進めてください。
一、無投票となった選挙でも、立候補時の意気込みや提言に責任をもった仕事をしてもらうため、選挙公報を公開してください。
一、選挙公報を発行していない自治体は条例を制定して、次の選挙から選挙公報を発行するようにしてください。

選挙後のWeb公開だけでなく、そもそも選挙公報を作っていない自治体への対応の呼びかけ、作っていてもWebで公開していない自治体への公開の呼びかけ、無投票となった選挙の選挙公報の公開といった、これまであまり問題にされていなかったものの、選挙制度や民主主義を考えるにあたって非常に大事な観点だ、ということに多くの方に気づいていただけたことで、最初は、選挙好き100人くらいが署名してくれたらいいかな、と思っていたのですが、反響がどんどんと広まってゆき、J-CASTニュース、毎日新聞といったメディアに取り上げられて、署名提出の前日には17,600筆を集めることができたと思っています。

また、署名提出の前に私たち「選挙公報を活かす会」では署名活動で訴えたことに関するアンケートを各政党に送ったところ、返信をいただいたほとんどの政党から全ての項目に「賛成」という回答をもらいました。

「選挙公報の保存・公開」に関する政党アンケート調査結果

ですが、選挙制度の変更というのは理論上とても難しいのです。なぜなら、選挙制度を変える法律を作るのは議員なのですが、議員は現行の選挙制度で選ばれて議員の身分を得ているわけです。つまり、多くの議員にとって、現行の選挙制度は「自分が選ばれやすい」制度となっているので、それが仮に矛盾に満ちたものであっても、一般的に改正の方向にことが運びにくい構造なのです。ですが、多くの政党のみなさんから「賛成」というご返答をいただきましたので、4項目の実現まで呼びかけを続けてゆこうと思っています。

候補者情報のアーカイブ化のこれから

ここからは「選挙公報を活かす会」としてではなく、宮原ジェフリー個人としての見解となりますが、これからの展開について触れておきたいと思います。
今後、選挙公報を過去のものも含めて一元管理して残してゆけるデータベースを構築したいと考えています。過去、pdfとして発行された選挙公報や、紙媒体で発行されたものをスキャンしてデータとして管理してゆくことを、図書館や博物館、大学などの研究機関と連携して進められれば選挙公報の学術的な利用にも道が開けるのではないでしょうか。そこに政見放送などの映像や音声の記録を加えることができればより充実したデータベースになることと思います。ご興味のある研究機関の方はぜひご連絡ください。

署名は引き続きChange.orgで呼びかけています。 ご賛同いただければ、今後の進捗についてご報告いたしますので、ぜひチェックをして見てください。

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宮原ジェフリー

宮原ジェフリー

選挙ライター、キュレーター(現代美術)。 1983年東京都出身。中学生時代から衆参の選挙の度に全選挙区の当落予想を続ける。ポスターデザイン、インディーズ候補、政見放送、選挙公報、街頭演説など選挙に関わること一切が関心領域。著書に『沖縄〈泡沫候補〉バトルロイヤル』(ボーダーインク)がある。

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