選挙ドットコムでは参院選の比例代表に候補を擁立している各政党・政治団体(以下、各党)の代表・幹部に参院選の争点・政策や政治・選挙の意義について聞く取材依頼を行い、取材を受諾した各党の代表・幹部にインタビュー形式で取材しました。今回はNHKから国民を守る党・立花孝志代表へのインタビューの模様をお届けします。
–選挙ドットコム
今回の参院選、争点は何でしょうか?
–NHKから国民を守る党・立花孝志代表(以下、立花氏)
全体としては色々あると思いますが、NHKから国民を守る党としてはNHKのスクランブル放送を実現するのが良いかどうか、スマホやパソコンの場合にNHKの受信料を払うのがいいかどうか、ということを争点として考えています。
この問題は、スマホでNHKが映るようにするべきか、受信料を払う義務を設けるべきか、というところに最終的には行きつくんですね。
衛星放送も、最初は地上放送が映らない離島の人や山奥の人にNHKの電波を届けるために始めたはずなのに、2~3年もすると「衛星放送は別番組なので別料金」ということになってしまったので、スマホやパソコンでも同じようなことになってしまうのではと思っています。
今は「スマホ・パソコンでオリンピックを出先で観ていただけるようにする」と言ってまるで多くの人がスマホでNHKを観たがっているかのように国会で決めて流そうとしているんです。流しだしたらスマホやパソコンからも金(受信料)をくれって言いだす訳ですよね。
こういうほとんどの国民に関係する政策について国民の声を聴かず、国民投票やアンケート調査をしないような政治のやり方でいいのか、インターネット時代なのだから国民の声を折々に聴くような制度を作るべきではないか、ということが争点だと考えています。
あまりに国民の声を無視した政治が行われているんじゃないか、わかりやすく言うとNHKのスクランブル放送に賛成か反対か、というのが争点ということですね。
–選挙ドットコム
NHKから国民を守る党は今回の参院選で「令和の百姓一揆」というスローガンを掲げています。それに込めた狙いは何でしょうか?
–立花氏
本当に百姓一揆を起こすべき時期に来ているのではないかなと思っています。令和の時代のお代官様である官僚や政治家が、庶民―町民や農民の声を聴いていないとしか思えない政策が続出している訳ですよ。
NHKの受信料をテレビがあるだけで払わなくてはいけない、という昭和25年に作った法律をずっとそのままにしている訳です。全員が受信料を払う根拠として、国民の生命と財産を守るにはNHKのテレビでないとダメだ、と言っている訳ですよ。
じゃあなんでJアラートってやっているの?何のために災害情報がスマホにやってくるの?と思っています。
昔は鍬や鎌を持って打ちこわしだ、と一揆を起こしていましたが、今の時代には選挙があります。スマホやパソコンを持って、投票をするという「一揆」が起こせる訳です。
令和の時代の百姓一揆は庶民の声を無視している政治家・官僚、既成政党を投票という一揆でぶっ壊す、それ以外の政治家に投票する、ということです。
僕は元NHK職員として、「お代官様」の側にいた人間として内部告発をしていましたから、大塩平八郎の気分で庶民と一緒に、怒りを受け止めて先頭に立って一揆を起こそうとしているんです。そんな思いを込めて「令和の百姓一揆」というスローガンを掲げています。
–選挙ドットコム
つまり、NHKから国民を守る党はNHKのスクランブル放送化を政策の議論のテーブルに上げるために活動している、ということでしょうか?
–立花氏
実はこの問題を前面に出しているのには戦略があります。僕たちが考えているのは「直接民主主義」なんですね。
今は「間接民主主義」「間接民主制」ですよね。選挙で人を選び、参議院であれば6年間、その人の考えで議決権を行使するという。
このように誰かに任せて、お願いするしかできなかった。でも今はインターネットが普及しているので国民の声を世論調査するように一つ一つの法案に対して賛否を問おうと思えばできる訳です。
参議院議員の任期6年の間、議員は議案に対して賛否を選びます。有権者は選挙でその議員を選び、白紙委任することになります。
6年もあれば有権者の気持ちも変わるし、当選した国会議員の気持ちも変わってしまう。6年前に選んだ議員が勝手に有権者と違うことを選んでしまうかもしれません。原発再稼働反対なのに賛成されたり、憲法改正賛成なのに反対されたり、とか。
全てのテーマで100%リンクする政治家は選べないですよね。でも直接民主主義であれば一つ一つの議案に対して有権者がそのときの気分で賛成・反対・棄権を選べます。
これまでは制度上、インフラ上できなかったから選挙で議員を選び、議員が議案を選ぶという仕組みになっていましたが今はインターネットが普及しているので直接民意を聴くことができるんです。
ただ、直接民主主義を前面に掲げると斬新すぎて有権者に受け止めてもらえないんですよ。間接民主主義が当たり前だと思っている有権者に「直接民主主義っていうのがあります」「インターネットを使えばできる」と言うと訳わからないことを言っている政党になってしまう。
だから今回はあえて「NHKのスクランブル放送」をするかしないか、というのをイシューにしています。それを直接民主主義のテーブルに乗せて、NHKにお金を払わない人にはスクランブル放送をする、ということに賛成・反対・どちらでもない、という国民投票をしたいんです。
現在、自民、公明、共産、維新、立憲、国民、社民、7つの政党は全会一致でNHKの予算を承認しているのでスクランブル放送に反対していることになります。
それだと国民の声との乖離が出てきてしまいます。国民の声に従ったことをしていない、という。そうすると国会議員と国民との温度差が明らかになってくるんです。そうすると「そうだ、直接民主主義が今は一番いいんだ」「ベストではなくとも今の日本にはそればベターなんだ」とゆっくりわかっていっていただきたいですね。
今はメディアも政治家も一緒になって国民をだましているから、あえてワンイシューにしてNHKも新聞社も「NHKから国民を守る党の公約は『NHKのスクランブル放送化』だ」という報道しかできないようにしているんです。
政治家が発言を切り取られた、編集された、本意ではない、ということがよくありますが、それは政治家が悪いと思っています。メディアには切り取る権利があると憲法で書いてあるから切り取られるようなことを言わなければいいんです。切られても大丈夫なように、ワンイシューでやればいいんです。
我々は政治とは「言う」ではなく「やる」だと思っています。約束したことを実行しないと意味がないですよね。
だから我々はNHKにお金を払わない人を応援する「実行」をしていますし、スクランブル放送の実現を目指していますが直ちにできるとは言っていません。
でも払わない人にNHK撃退シールを配ったり、集金訪問を止めるためのコールセンターを開設したり具体的なことをやってきましたし、これからもやっていきます。
なので有権者にとっては一票を入れる価値があると思ってもらえる。1票が240円、2票入れると480円分の税金をこの党に使ってほしい、という思いを込めて投票してもらえるんですね。
大手メディアと既成政党の政治家は当たり前のようにくっついています。大手メディアを敵に回したら政治家なんて木っ端みじんだぞとメディアは思っているから、我々のような新興政党が出てきて既成政党を脅かそうとしたらその時点で攻撃してくる。僕はそちら側にいたのでよく知っています。
最初から「泡沫候補、泡沫政党だ」と、選挙が始まる前に投票する価値がないと国民を洗脳してしまって「貴重な一票は当選するかしないかギリギリの人に投じたほうがいいよ」と世論を誘導してきた訳です。なのでそんなメディアと戦うには上回る戦略を持っていないと負けてしまう、という深い意味があります。
–選挙ドットコム
NHKから国民を守る党の立ち上げのいきさつを教えてください。
–立花氏
14年前にNHKの不正経理の内部告発をしました。そのとき私は視聴者に「NHKの職員、NHKが悪いことをしました、ごめんなさい」と謝ってくれることを期待したんですがそうではなく嘘をついたり隠したりして延命措置を取ろうとしたんです。
同じくして受信料の支払い率が低下していった中NHKは「受信料を払わないほうが悪いんだ」と民事裁判をするようになったのが11年ほど前になります。私はこの問題は法廷・裁判では勝てると思っていましたし、もし判決で負けても政治で勝てるはず、その時から思っていました。でも法廷では負けてしまったんですね。
裁判所の判断は、国会が全会一致、全ての政党がNHKの受信料を払えと言っている以上は憲法違反とは言えない、というものでした。立花さんが不満なら政治の世界で変えたらどうですか、という意味のことを判決文で書いてくれています。
なるほど、と思ったので当時の民主党を一生懸命応援しました。その後民主党政権が誕生したのでスクランブル放送を実現してくれるんだろうと期待していましたが、まったく違いました。その上ケーブルテレビでも受信料払え、という法改正を実は民主党がしたんです。民主党はNHKも引っ付くのか、自民党も民主党もそうなんだ、と思いました。
そして2012年に民主党政権が崩壊し、2013年には橋下徹さんが力を持っていたので大阪市役所のほうに行ったら「いまのところNHKのスクランブル放送をするつもりはない」と仰ったので自分でしなきゃ仕方ないなと。
そうして2013年6月、仕方なく作ったのがNHKから国民を守る党です。そういう順番で、今回の参院選に向けてやっていこうとした訳です。
–選挙ドットコム
ではここで政治や選挙の意義について伺う質問をサイコロを振って選んで答えていただきたいと思います。
–立花氏
ああ、いいですよ、はい。3番だ。
–選挙ドットコム
若い人が政治に関心がない、政治も若い人の方を向いていない、という声がありますが、これに対してどう考えていますか?
–立花氏
それはニワトリとタマゴみたいなもんですよ。でも僕はそこに目を向けているんです。
若い人の方が人口が少ない。一方僕ら50・60代は一学年に200万人くらいいます。若い世代は一学年100万人くらいしかいない。さらに上の世代のほうが投票に行き、下の世代があまり投票に行かないとなってくるともっと違ってくるんですよね。
どうしても上の世代が投票するから高齢者向けの政策ばかりするし、政治家も高齢者が集まるところに入りスキンシップを図り票を取るということを繰り返している。
若い世代の言うことを聞いていても当選できない、ということで若者に目を向ける政治家が少ない。少ない一方で若者は福祉や政治の助け、サービスをあまり実感しないですよね。
なので選挙に行ってくれと言っても行く訳がないし、政治に関心を持ってくれと言っても持つ訳ないんですよね。
でもどこかで気づく訳です、今の高齢者の人たちも若者だったんですから。
どこからか選挙に行き、一度選挙に行けば基本行き続けるんですよね。そのきっかけをどうやって作っていくのか。やはり面白いこと、インタレスト、笑わせること、その上でためになること、ここが大事なんですよ。
まず全然政治に関係ない話題を振っていくことで関心を引き付ける。そして受信料払うかどうか決めるのはNHKじゃなく政治家なんだ、スマホでお金払わないといけないのってNHKじゃなく国会議員が決めているんだ、というように政治に関係ないところから持って行かないといけないんですよ。
でも多くの真面目な政治家たちはおじいちゃんおばあちゃんに叱られるんですよ。だからやらない。でも僕はそっち捨てています。理由は簡単で、死ぬからです。自動的に世代が入れ替わっていく。これを恐れていると無理ですね。
これまでの保守的なことだけであれば年金とか福祉のことをやっていればいいんでしょうけど、変えようとするなら若者の世界に飛び込んでいくこと。
彼らが一体何を考え、何を不満に感じ、何を求めているのか積極的に体感して一緒になって彼らも選挙に、政治に参加できる環境を作る。それは楽しいことなんです。
難しいことを言っている人の集まりじゃなく、楽しいことや冗談を言っている中で気が付いたら知識が向上している、そんな場を作りたいんです。
若者の評価というのは30年40年続く訳ですよね。高齢者は亡くなっていくので。だから我々NHKから国民を守る党は時間が経てば経つほど選挙に強くなっていく。だから焦らない。政治に必要なのは焦らないことです。
結果が直ちに出なくても正しいことを続けていれば必ず結果がついてくるということを信じて政治をしないと、目先の利益・結果にこだわっていたらとんでもない政治になってしまうのでそういう分析をしています。
大人たち、おじいちゃんおばあちゃんが考えているような真面目だったらいい、という考えは一切ありません。人生楽しめ!、人に迷惑をかけなければ何をしてもいいというポリシーです。
多種多様な今の若者のニーズに応えていくにはそういう考えじゃないと。どうしても政治って国民を画一化しよう、一方方向に持っていこうとするでしょ。
少数派の声をしっかりと拾っていけば若者はある程度はついてきてくれるか、評価してくれるんじゃないかな、と思っています。
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