連日熱戦の続く甲子園。地元の球児たちの活躍に声援をおくり、手に汗握る時間を過ごしている人も多いのではないでしょうか。
さて、球児たちと同じ10代の若者が大きな注目を集める取組みに選挙があります。昨年の衆院選は、18歳選挙権のもとで行われる2度目の国政選挙となりました。全年代での投票率は53.68%と歴代2番目となる低投票率でしたが、10代有権者の投票状況はどうだったのでしょうか。
甲子園にならって、都道府県別に比較してみましょう。
10代有権者の投票率が最も高かったのは、山形県で47.24%でした。続くのは、愛知県46.79%、山梨県46.22%となります。
投票率下位も確認しておきましょう。最も低かったのは、徳島県で31.59%。続いて兵庫県32.08%、愛媛県32.84%となっています。
また、2016年に行われた参院選とも比較してみましょう。参院選に比べて投票率が上がった都道府県は9団体あり、増加の幅が大きい方から高知県3.10%の増加、熊本県2.71%の増加、北海道2.60%の増加となっています。一方、参院選に比べて投票率が下がった都道府県は38団体あり、低下の幅が大きい方から東京都13.57%の低下、兵庫県12.63%の低下、神奈川県11.54%の低下となっています。
参院選と衆院選の投票結果を比較してみると、都市部で10代有権者の投票率の大幅な低下が生じていることがわかります。
10代、18歳、19歳とそれぞれの区分において、東京都、兵庫県、神奈川県、千葉県、大阪府などの都市部で投票率の低下幅が大きくなっています。例えば、18歳の投票率で見てみましょう。
18歳投票率の低下幅が大きいのは、大きい方から順に東京都:13.0%の低下、兵庫県:11.4%の低下、神奈川県:10.5%の低下、大阪府:9.3%の低下、千葉県8.4%の低下の順番となっています。このなかには、東京都や神奈川県のように、参院選の投票率が全国トップクラスであったために、衆院選でも全国上位~中位の投票率を維持しており、影響が隠れてしまう自治体もあります。
また、18歳投票率では参院選よりも衆院選の投票率が高くなった都道府県が26団体ありましたが、19歳投票率はすべての都道府県で低下しています。ちなみに全年代投票率では23都道府県で参院選よりも衆院選の投票率が高くなっています。
参院選で合区となっていた4県の10代投票率も確認してみましょう。
衆院選では、鳥取県の10代投票率:38.45%(32位)、島根県の10代投票率38.50%(31位)、徳島県の10代投票率:31.59%(47位)、高知県の10代投票率:34.03%(44位)となっています。
全年代の投票率では、鳥取県と高知県が参院選に比べて投票率が上昇していますが、10代投票率が上昇したのは高知県のみとなっています。
参院選に比べて10代投票率が上昇したのは9県(北海道、岩手県、山形県、新潟県、高知県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県)でした。
また、青森県、島根県、愛媛県、長崎県、鹿児島県の5県では、10代投票率、18歳投票率の上昇率が、全年代の投票率の上昇率よりも高くなっています。
若者のより一層の投票参加を考えていく際には、これらの県でどのような取組みが行われたのか、そのポイントを抽出し、他の地域へと展開していくことが期待されます。
全年代に比べて10代投票率の低下幅が大きい都道府県から、なにが課題となってしまったのかを学ぶ方法もあります。ちなみに、全年代投票率に比べて10代投票率の低下幅が大きかったトップ5は、東京都、石川県、茨城県、千葉県、神奈川県となります。
さらに18歳投票率に注目してみましょう。参院選と比較して、全年代投票率と18歳投票率がともに上昇し、18歳投票率の上昇幅が全年代投票率の上昇幅よりも大きかったのが、長崎県と鹿児島県です。長崎県では全年代の投票率が1.4%の上昇だったのに対し、18歳投票率が8.3%上昇しています。また、鹿児島県では全年代投票率が0.23%の上昇だったのに対し、18歳投票率が6.67%上昇しています。
なお、青森県と島根県、愛媛県では、全年代の投票率が参院選に比べてマイナスとなる中、18歳投票率がプラスに転じています。
青森県では全年代の投票率は1.14%低下したのに対し、18歳投票率は5.27%上昇しています。島根県では全年代の投票率が1.56%低下し、18歳投票率は6.43%上昇しています。愛媛県では全年代の投票率が5.62%低下、18歳投票率が7.96%上昇しています。
衆院選は10月に実施されました。そのため、7月に実施された参院選よりも18歳有権者の中で高校に在学している人の割合が増加しているものと考えられます。これらの県での主権者教育や若者が投票しやすい環境づくりの取組にはどのような工夫がなされてきたのか、若者のさらなる投票参加を考えていく上で注目されます。
ここまで、投票率に着目してきましたが、もう1つ忘れてはいけない情報があります。それは、投票棄権者の数です。
衆院選における10代の有権者数は約238万人。このうち、60%弱となる約142万人が投票を棄権しています。投票棄権者数のランキングからわかるように、上位5都府県で、10代棄権者数の1/3強を占めています。そして、この割合は参院選の時よりも増加しています。
また、10代棄権者数の数は、参院選に比べて約14万人増加していますが、そのうちの7割が上位5都府県となっています。若者一人ひとりが主体的に選挙を使いこなすことができているかどうかを確認するためには、投票率だけではなく投票への参加者や棄権者の数にも注目する必要があります。
18歳投票率が上昇した地域がある一方で、都市部を中心に大幅な投票率の低下が生じています。また、18歳(投票率:47.87%)と19歳(投票率:33.25%)の投票率の差も、参院選の時よりも広がっています。特に、19歳(参院選の時は18歳有権者であった人たち)の投票率が大きく低下したことは、一度投票に行った若者が二度目の投票には参加しなかったということを意味しています。
衆院選では、参院選に比べて30代以上のほとんどの年代で投票率は上昇しています。
その中で、なぜ一度投票に参加した若者が投票に参加しなくなってしまうのか。
今後、若者と政治の関係を考えていく上で、大きなテーマとなりそうです。
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