日本では、7月に都議選、10月に衆院選…と、国内の選挙が話題になっていましたが、この間にドイツとフランスでは、大きな選挙がありました。それは、9月24日に行われたドイツ連邦議会(下院)選挙と同じく9月24日に行われたフランス上院選の2つ。この選挙結果をめぐり、11月に入った現在も、ドイツとフランスでは政局の行く末が注目されています。この記事では、ドイツ連邦議会(下院)選挙の結果と、現在も続く影響について解説します。
ドイツ連邦議会(下院)選挙は、オランダ下院選、フランス大統領選、イギリス下院選に続く、2017年の主要選挙の1つで、「ヨーロッパの盟主であるメルケル政権がどうなるか」「極右政党は国政に進出するのか」といった関心から、世界的に注目を集めていたものでした。
今回の選挙では、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が第一党となり、メルケル首相が続投することとなりました。しかし、今回メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟の得票は33%にとどまり、第一党の座を守ったものの、過去2番目の低水準に落ち込みました。
政権を発足させるためには他の政党と協力する「連立」が欠かせませんが、これまでメルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と連立関係にあったドイツ社会民主党(SPD)は得票率が20.5%と歴史的大敗を喫し、連立離脱を表明しました。そこで、メルケル氏はこれまで連立の相手ではなかった自由民主党(FDP)や緑の党との連立を探っていくことを表明しました。
しかし、これらの政党はいずれも、メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と気候変動や移民、EU問題などの主要な課題で隔たりが大きく、連立交渉がどうなるか先行きは見えません。11月8日現在でも、交渉は続いています。
仮に無事、連立政権が誕生したとしても、メルケル首相の求心力低下は否めないでしょう。特にEU政策はいずれの政党とも違いが大きいため、EU交渉の前に連立内の交渉に時間がかかるからです。少なくとも3党連立が見込まれていますが、その分政策調整に時間がかかることになるでしょう。既にメルケル政権で中心的役割を果たしてきたジョイブレ財務大臣が辞任する見込みであることが伝えられています。財務相ポストを連立交渉に用いるためだと考えられていますが、既にメルケル政権への影響が出ている表れと言われています。
また、今回の選挙では初めて極右政党である「ドイツのための選択肢(AfD)」が12.6%得票して国政に進出し、一躍CDU・CSU、SPDに次ぐ第三党に躍り出ました。これまでは阻止条項と呼ばれる、比例代表で5%以上得票できなければ議席を得られないとするルールにより国政進出が阻まれてきましたが、今回初めてこのラインを突破しました。
このことは、フランス大統領選で極右政党「国民戦線」が決選投票に残ったことや、オランダ下院選で極右自由党が第二党に伸長するなど、ヨーロッパで広がる極右ブームがドイツに着実に広がったものとして衝撃を与えました。
しかし、必ずしも極右路線が受け入れられたわけではありません。今回「ドイツのための選択肢(AfD)」が議席を獲得した背景として、経済への不満や反移民ではなく、他党への失望が挙げられます。他党へ失望から「ドイツのための選択肢(AfD)」に投票した人が60%にも昇るのです。CDU・CSUやSPDといった既存政党はそうした不満にどうこたえていくかが問われています。
日本では衆院選が終わり、しばらくは自民党・公明党による政権運営が続くものと思われますが、ドイツ政治は今後も大きく動く可能性が続いています。
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