日本では、7月に都議選、10月に衆院選…と、国内の選挙が話題になっていましたが、この間にドイツとフランスでは、大きな選挙がありました。それは、9月24日に行われたフランス上院選と同じく9月24日に行われたドイツ連邦議会(下院)選挙の2つ。この選挙結果をめぐり、11月に入った現在も、ドイツとフランスでは政局の行く末が注目されています。この記事では、フランス上院選の選挙結果と、現在も続く影響について解説します。
今年3月に大統領に就任したマクロン氏。39歳という若さでの大統領就任に、全世界から注目を集めました。しかし、それから約半年。9月24日に行われたフランス上院選では、マクロン大統領が率いる政党「共和国前進」は当初の29議席から28議席に減らし、野党に敗北。4、5月に行われた大統領選直後の6月の下院選では「共和国前進」が圧勝しただけに、今回の選挙はマクロン人気の失速を裏付ける形となりました。
フランスには、それぞれ別の選挙で選ばれる「下院」と「上院」があります。今回選挙が行われた「上院」は、下院と比べて権限が限られています。例えば、立法については最終的な議決権は「下院」が担っています。
今回の上院選挙で敗北したマクロン氏率いる与党である「共和国前進」は、今年6月に行われた下院選で577議席中300議席超を占める大勝利を果し、議会多数派、首相ポストを全てマクロン与党が独占することに成功しています。いわば内政から外交まで一手にマクロン大統領が担う形となっています。
そのため、今回のマクロン与党敗北によってフランス政治の不安定化に必ずしも即座につながる訳ではありません。また、上院選は、日本のように有権者が直接議員を選ぶ直接選挙ではなく、地方議員らが投票する間接選挙を採用しています。そのため、伝統的な政党である共和党や社会党の二大政党系の声が強く反映されるため、当初から議席の積み増しは期待されていませんでした。
外交上では華々しく活躍しているマクロン大統領ですが、内政においては大きな反発を受けていました。そのため、当初から上院選では苦戦することが予想されていました。
内政で大きな反発を生んでいるのは、「財政支出を極端に削る緊縮財政」と「労働規制の緩和」です。緊縮財政のためにマクロン大統領は地方への交付金を減らすことを表明しており、こうした対応に上院選挙を担う地方議員は反発しました。また、労働規制の緩和に対しては、伝統的に強い労働組合が強く反発し、反対デモやストライキが頻発し、9月12日に起きたデモは22万人が参加したと言われています。その結果、マクロン政権の支持率は大きく低迷していました。
先述の通りマクロン与党は下院で過半数の議席を有しているので、今回の上院選がマクロン政権に致命的なダメージを与えるわけではありません。そもそも、上院選の選挙制度上の問題から、マクロン与党は議席の積み増しを期待していませんでした。
しかし、政権運営上の影響は即座にはないとは言え、予想通り議席を減らしてしまったマクロン政権は、批判的な世論をより確実なものとしてしまいました。マクロン政権は今後、これまで掲げてきた公約の方向修正を迫られるかもしれません。
日本では衆院選が終わり、しばらくは自民党・公明党による政権運営が続くものと思われますが、フランス政治は今後も大きく動く可能性が続いています。
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