※本記事は「政治・政策を考えるヒント! 政策コンサルタント 室伏謙一 (公式ブログ)」の転載となります。記事内容は執筆者個人の知見によるものです。
1月22日に投開票が行われた山形県議会議員補欠選挙、自民党の新人で前朝日町議の阿部候補と無所属の新人で前大江町議の松田候補の一騎打ちの末、松田候補が当選した。投票率は55.14%で票差は1345票。接戦の末といったところだろう。
さて、そもそも結果が出るまでその存在を認識していなかったような地方選の補選について、なぜ感想めいたことを書こうかと思ったのかと言えば、この選挙、昨年の参院選で自民党候補が野党統一候補に惨敗した山形県での選挙であり、今回も同様の構図が持ち込まれたからである。
しかも、山形県と言えば、先の県知事選では自民党が独自候補を立てられず、現職の吉村知事が無投票で再選されるという、自民党にとっては非常に厳しい環境にある地域。
今回の補選では、昨年当選した舟山参議院議員に加え、民進党の近藤衆議院議員(比例復活)、さらに吉村知事まで松田候補の支援に回った。まさに「野党統一候補」そのものである。
舟山参議院議員にしてみれば昨年当選した野党統一の基盤を磐石なものにしたいという思惑、近藤衆議院議員にしみれば次回の衆院選での選挙区当選を目指して足場固めをしたいという思惑、知事選で当初から民進、社民及び共産の支持を受けていた吉村知事からすれば支援は当然という事情、そうした交錯する思惑や事情が背景にあってのことだろう。地方選で「野党統一」とは違和感を覚えるが、絶好の機会として三者三様利活用したかったということだろう。
さて、その「野党統一候補」の松田氏はと言えば、74歳というご高齢。高齢だから悪いとか、ダメというわけではないし、元町議会議員であり、町長なりに立候補というのならば話は分かるが、県議会議員に新人として立候補する歳としては少々高め。県政のため、選挙区のため、実際に具体的に何ができるのだろうか?
加えて、松田氏、実は元々社民党なのだが、今回の選挙で「県民党」に看板を架け替えたと言うべきか、カムフラージュに使ったというべきか、即席のイメチェンで選挙に勝利した。しかもこの「県民党」、吉村知事を支える立場の地方政党というのであるから、どっかで聞いたことがあるような話だ。
地方政治とは地に足がついたものでなければならず、その積み上げが国政であると言っていい。その点で国会議員と地方議員は持ちつ持たれつの関係であるのだが、それは地方が良くなり、国全体が良くなるためのある種のインフラとして十全に機能すればの話。十全に機能するためにはそれなりの時間や地道な活動が必要で、即席の急揃えで機能するわけがない。今回の補選ではその即席の急揃えを、有権者は即席のイメチェンにメクラマシされて選んでしまったように思えてならない。
また、落選した阿部候補を支援していたのは、自民党というより、TPPの衆院採決において、果敢にも棄権造反した鈴木憲和衆議院議員である。鈴木議員はTPP反対を掲げて選挙戦を闘い、二度小選挙区で勝利を収めてきた。つまり、地元有権者との約束を守ったわけであり、鈴木議員の地元選挙区の町議であった阿部候補とは、地方が良くなり、国全体が良くなるためのインフラとして機能しうる関係にあったと言っていいだろう。(ちなみに、鈴木議員の行動については自由党の山本太郎参議院議員が絶賛し、共産党も賞賛していたようだ。TPP交渉参加を言い出し、選挙では賛成を主張していた民進党はさぞかしバツの悪いことだったろう。)
さてさて、山形県議会議員補欠選挙の有権者諸氏は、選挙が終わって冷静になって考えた時に、「選択を間違えた!」となっていないと願いたいところであるが・・・
以上、地方議会議員選挙の補選を考えるヒントとして。
※本記事は「政治・政策を考えるヒント! 政策コンサルタント 室伏謙一 (公式ブログ)」の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。
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