9月15日実施の民進党代表選挙で優勢を保つ蓮舫参議院議員。女性団体「愛国女性のつどい花時計」が公職選挙法違反などの疑いがあるとして、東京地検に告発状を届けることを表明しました。
仮に二重国籍であったなら、立候補は問題なかったのか、国籍についての詐称は当選無効に値するのではないか、という声も上がっています。果たして蓮舫議員の疑惑は、公選法違反に問われるものなのか、選挙ドットコムの過去の記事をここで今掲載し、検証してみました。
公式HPより蓮舫議員
蓮舫氏は17歳だった1985年1月に日本国籍を取得しており、国籍法に基づき、22歳になった1989年11月28日までに日本国籍か台湾籍のいずれかを選択する義務がありました。しかし、選択の宣言をした今月7日までその対応を怠ったとして、告発を受けています。
国籍について明確にしてなかったことで、選挙で虚偽の事実を公表し、国籍法違反と公職選挙法違反の2つに該当すると、告発状を届けるとしている団体は主張しています。
それでは果たして、二重国籍はどの程度問題なのでしょうか?
日本の国籍法は「国籍唯一の原則」を掲げる一方、重国籍者への罰則はなく外国籍の離脱は努力義務としています。実際、重国籍者は多数存在しており、選挙においては重国籍者であっても日本国籍があり、所定の年齢に達していれば、選挙権・被選挙権は有することになるので、有権者・候補者としてすでに多数関わっていると思われます。このことは、昭和37年11月15日の法務省入国管理局宛の自治省選挙部の回答でも是認されています。
例えば二重国籍の候補者の例として、2007年参院選に日本とペルーの二重国籍を持つ元ペルー大統領のアルベルト・フジモリ氏が国民新党から全国比例で立候補した件が挙げられます。上記論文でも次のように明言しています。
被選挙権と重国籍との関係については、公職選挙法上は重国籍者を排除する規定はなく、これまでのところ、重国籍者の選挙権行使、選挙による選出、公職への就任により何らかの障害が生じた事例はない 。(同上論文より抜粋)
このことから、仮に蓮舫議員が二重国籍状態であったとしても参院選への立候補は公選法違反にはあたらないことになります。
ただし、もし事実に反して経歴詐称を行っていた場合は公選法第235条の「虚偽事項の公表罪」に当たる可能性があります。
(虚偽事項の公表罪)
第235条 当選を得又は得させる目的をもつて公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者の身分、職業若しくは経歴、その者の政党その他の団体への所属、その者に係る候補者届出政党の候補者の届出、その者に係る参議院名簿届出政党等の届出又はその者に対する人若しくは政党その他の団体の推薦若しくは支持に関し虚偽の事項を公にした者は、2年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処する。
分かりやすく言うと、当選するために身分、経歴、所属などを偽ると罰せられる、ということです。過去の選挙では主に学歴詐称でこの罪が問われた例が2件あります。
(1)1992年参院選で当選した民社党の新間正次議員(当時)が、学歴詐称の嫌疑で在宅起訴され、その後有罪判決が確定したため当選無効となった。
(2)2003年衆院選で当選した民主党の古賀潤一郎議員(当時)が、選挙に際して公表した学歴の詐称疑惑により刑事告発され自ら議員辞職した。
では、蓮舫議員の一連の疑惑から「虚偽事項の公表罪」の可能性はあるのでしょうか。選挙ドットコム顧問で選挙管理アドバイザーの小島勇人氏に聞くと、次の答えが返ってきました。
過去の参院選挙において、蓮舫氏が配布したビラや選挙公報、ポスター等にどのような記載があったのか。公開討論会や質問状、取材等で、国籍問題について聞かれていた場合、そこでどのような回答をしていたのかによる。当選しようとするために事実と異なる記載や回答をしていたのであれば、虚偽事項の公表にあたる恐れがないとは言い切れないであろう。最終的には司法の判断に委ねられる。(選挙管理アドバイザー/小島勇人氏)
つまり、選挙時において国籍をどのように説明していたのかがポイントになるということです。この点、今夏参院選時の選挙公報には何も表記されていませんでした。
ネット上では、初当選の2004年時の公報に「1985年、台湾籍から帰化。」と明記されていることが話題になっています。
今朝(9月9日)YAHOO!ニュースに掲載された「国籍放棄問題の渦中にある蓮舫氏、単独インタビュー」において、蓮舫議員は「自分がいわゆる『二重国籍』であるという認識はありませんでした」と明言し、この「帰化」という表現については以下のように答えています。
――過去の選挙広報で「帰化」という言葉を使っていたこともありましたが、厳密に言うと、帰化は成人の場合にのみ使うので、正しくは国籍取得ですね。
広い意味で国籍取得も帰化も同じように日本人になったことを指すと思って使っていたのであり、他意はありません。
インタビュー記事内には、1985年に蓮舫議員が日本国籍を取得したことを証明する書類も公開されていますので、「1985年、日本国籍を取得」と書いておけば公選法上の問題はなかったと思われます。
ネット上では、「台湾籍から帰化」と記載したことが、「台湾国籍を放棄した」という印象を与えるため、仮に二重国籍であった場合には虚偽事項の公表にあたるのではないかという指摘があります。この点については、学歴詐称とは異なり、過去に判例がありませんので小島氏の発言にもあるよう、最終的には司法の判断に委ねられると考えられます。
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