
クリントン氏に汚職疑惑が出たり、トランプ氏は自身の経営する大学を巡って提訴されたりと数々の燃料が投下され、ますますアメリカ大統領選が盛り上がっています。最近の支持率を見てみましょう。

(調査時期は9月上旬)
このように、新聞3紙の支持率を比べてみると、そんなに支持率で差があるわけではありません。「どうせクリントンの勝ちでしょ?」と思っている人も多いかと思いますが、実はかなりの接戦になっているのです。
トランプ氏のこれまでの発言を考えれば、どうしてトランプ氏がここまで支持を集めているのか分からないと言う人も多いかと思います。メキシコとの国境に壁を作ったり、イスラム教徒の入国を制限したりと、常識で考えれば「なぜそんな候補を支持するのか?」と思う人も多いことも理解できます。
しかし実は、今回の選挙では、トランプ氏への支持が強いのではなく、クリントン氏への反発が強くなっているのです。クリントン氏といえば、1993年に夫ビル・クリントン政権でファースト・レディーを務め、オバマ政権では国務長官を務めた、まさに華麗なる経歴を持つ政治家です。そして、クリントン氏が大統領になれば、女性初の大統領と話題性も十分です。なぜ、こんなにも大統領にふさわしい経歴を持っている人が嫌われるのでしょうか。そこには、3つの理由あるのです。
第一に、クリントン氏は過去の人物になっているという点が挙げられます。彼女が最初に有名になったのは、夫ビル・クリントンが大統領に就任した1993年です。彼女はファースト・レディながらも、クリントン政権の福祉改革に大きく関わり、その能力を全米に見せつけました。当時は女性の政治参加に批判的な声も強く、彼女の活躍が伝統的な家族観に反していると見られたことから、かなり叩かれました。
しかし、このエピソードもすでに今から23年前です。デビューから23年経ったアイドルと言えばいいでしょうか。スマップもデビューから25年で解散します。同じクリントンの名前で売り続けることは大変なことなのです。どうしても古臭く見えてしまいます。
しかも、今回の大統領選ではトランプ氏やサンダース氏といった、異色の候補が大きく支持を集めました。とりわけ共和党では、主流派に支持された候補が次々に予備選で敗退しました。こうした状況の中で、クリントン氏のような主流派のベテランは最も逆風を受けていると言って良いでしょう。
そして、この20年あまりの間に、女性の政治進出も珍しくなくなってしまいました。1993年には女性議員の比率は10.3%でしたが、2016年現在ではすでに19.4%と2倍近くになっています。上院・下院で104名の女性議員がいるのです。そのため、女性初の大統領がクリントン氏である必要性が最早なくなってしまいました。別にクリントン氏が大統領にならなくても、いずれ別の女性が大統領になるだろうというわけです。黒人初の大統領を目指したオバマ氏との大きな違いです。

第二に、クリントン氏自身が数々のスキャンダルを持っているということです。日本ではトランプ氏の問題発言が連日取り上げられていますが、アメリカではそれと同じくらいクリントン氏のスキャンダルについて連日取り上げられています。
大きく問題になっているものの一つが、いわゆる「メール問題」です。アメリカでは、政府高官が公務でメールする際には、全て政府が作成したアカウントを使わなければいけないことになっています。公務で使われたメールは保存され、いずれ議会や研究者によって検証の対象になります。しかし、クリントン氏は、公務中もGmailなどプライベートで用いるアカウントを使っていたことが明らかになりました。「何か隠しているのではないか」と疑念の目を向けられたわけです。この件についてはFBIが捜査しましたが、訴追は免れました。しかし、未だ多くのメールが明らかになっていないこと、メールに用いた端末が行方不明であること、クリントン氏が「知らない」「記憶にない」などの証言を繰り返していることは最近でも強く批判されています。
そして、「何か隠しているのではないか」という懸念に火をつけたのが、クリントン財団をめぐる汚職問題です。クリントン夫妻らが運営する慈善団体「クリントン財団」が、大口献金者に対して便宜を図っていたのではないかという疑惑が問題になりました。特に問題になったのが、こうした疑惑がクリントン氏のメールが公開されたことで、明らかになったという点です。つまり、クリントン氏は汚職のためにメールを隠していたのではないかという疑念が持たれています。
この問題については現在FBIが捜査しています。しかし、FBI長官がクリントン氏と関わりを持っているとされるなど、保守派からは捜査の公平性も問題視されています。この問題はしばらく尾を引きそうです。
そして、最近問題になっているのがクリントン氏の健康問題です。9.11のテロ犠牲者を追悼する式典で、クリントン氏が体調を崩して途中で退出しました。クリントン氏はすでに、9日に肺炎の診断を受けていたことを公開しています。この問題をめぐっては、トランプ氏も自らの健康診断の結果を開示する姿勢を示したほか、「(当選すれば)これまでに大統領に選ばれた候補の中でも最も健康な人物」とする医師のコメントを紹介しています。大統領はハードな仕事であり、また元首として強い大統領が求められていることから、健康問題への不安は支持者の離反へとつながりかねない問題です。しばらくは、クリントン氏は説明に追われることになるでしょう。
このように、クリントン氏は多くの爆弾を抱えています。問題発言が多すぎて逆に問題視されなくなったトランプ氏と異なり、クリントン氏はこれからのスキャンダル次第によってはまた支持率を落としかねない状況です。
11月8日の大統領選挙まで間もなくとなってきましたが、ここに来て、トランプ大統領の可能性が高まっています。安倍晋三首相はヒラリー・クリントン氏に会ったという報道もありましたが、トランプ氏が大統領になる可能性も現実的に考えておいた方が良いかもしれません。
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