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カネの優遇ハンパない!政治家の世襲制度の2つの巨大メリット

2016/9/9

山本洋一

山本洋一

20160909

先月発足した「第3次安倍第2次改造内閣」。安倍晋三首相が首相に返り咲いてから5度目の「組閣」でしたが、今回も目立ったのは世襲議員でした。閣僚以外でも安倍首相をはじめとして石破茂前地方創生相や小泉進次郎氏ら、自民党内で注目されるのは2世、3世ばかり。なぜ、世襲議員ばかりが活躍するのでしょうか。
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大臣の4割は世襲

改造内閣の19人の閣僚のうち、親や祖父母など近い親族に政治家がいる、いわゆる世襲議員は8人。全体の4割強を占めています。
首相や麻生太郎財務相は有名ですが、初入閣した山本公一環境相(愛媛4区)の父親は衆院議員や宇和島市長を務めた故友一氏。世耕弘成経済産業相(和歌山選挙区)は亡くなった叔父の後を継ぎ、1998年の参院和歌山選挙区補選で初当選しました。
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同じく初入閣組の加藤勝信一億総活躍担当相(岡山5区)は大蔵省に勤めていましたが、農林水産相などを務めた加藤六月氏の娘に婿入りし、苗字を加藤に改姓。退官して六月氏の秘書を務めた後、政治家に転身しました。
山本幸三地方創生相も大蔵省出身ですが、叔父が元参院議員で、義父は蔵相等を歴任した元衆院議員。1990年に退官して衆院選に立候補し、落選を経て1993年の衆院選で初当選しています。
このほか留任組では岸田文雄外相や塩崎恭久厚生労働相がいわゆる世襲議員。石原伸晃経済再生相の父親はあの有名な石原慎太郎元都知事です。

 

 

総理大臣は8割が世襲

歴代首相を見ても世襲の多さは目を引きます。過去10人の総理大臣の経歴を見ると、8人がいわゆる世襲政治家なのです。
橋本龍太郎氏は衆議院議員だった父親の急死を受け、若干25歳で初当選。小渕恵三氏の父親も元衆院議員で、亡くなった時には選挙権がなかったものの、後継者が落選したことで結果的にその次の選挙に出馬。橋本氏と同じ選挙で26歳にして初当選しました。
森喜朗氏の父と祖父は地元の首長を長年務めた有力者。小泉純一郎氏は祖父の又次郎氏が横須賀市長や逓信大臣を歴任し、父の純也氏は防衛庁長官を務めました。純一郎氏の次男である進次郎氏は4世議員です。
安倍現首相は父の晋太郎氏が元外相、祖父の岸信介氏が元首相。弟の岸信夫氏は今回の改造で外務副大臣に就任しました。第一次安倍政権の後を受けた福田康夫氏の父赳夫氏も元首相。その後の麻生氏の祖父は吉田茂元首相で、実業家だった父親も衆院議員を3期務めています。
民主党政権で最初に首相に就いた鳩山由紀夫氏は父が元衆議院議員、祖父が元首相という政治家一族。6月に亡くなった弟の邦夫氏も総務相等を歴任しました。市民運動家出身の菅直人氏、松下政経塾一期生の野田佳彦氏を除く全員が世襲政治家なのです。

 

 

世襲のメリットは、組織と「お金」

有力議員に世襲が多いのは、選挙を気にせず、政策や政局に没頭できるからです。国会議員の行動パターンは「金帰火来」(きんき・からい)。平日は国会で活動し、週末になると地元に戻って政治(選挙)活動するというのが一般的です。
しかし、地盤が強固であれば頻繁に地元に帰る必要はないため、世襲議員の多くは週末も東京に残って政策を勉強したり、政界材のパイプ作りに励んだりします。橋本龍太郎元首相が地元にほとんど戻らず、東京で勉強を重ねて永田町きっての政策通になったというのは有名な話です。

世襲議員が活躍するもう一つの理由は政治資金を引き継ぐことができるから。政治家が引退して身内に継がせる場合、一般的には後援会などの政治団体を資金ごとそっくりそのまま引き渡します。
政治資金問題で閣僚を辞任した小渕優子元経済産業相は、父親である故小渕恵三元首相から1億円以上の資金を引き継いだことが判明しています。しかも、相続と違って税金は一切なし。普通の若手議員は資金不足に苦しむことが多いですが、議員活動をスタートさせた時点で1億円以上のお金があれば、苦労して金集めをすることもなく、議員活動に専念することができます。

 

 

世襲が優秀とは限らない

ただ、問題なのは優秀な政治家の子息が、必ずしも優秀とは限らないということ。そして、競争することもなく身内に代々、政治家職が引き継がれていけば、政治家としての能力は次第に劣化していく可能性があります。
現在の小選挙区制の場合、一つの選挙区で一つの政党から立候補できるのは1人だけ。仮に小渕氏の地盤である群馬5区にもっと優秀な人材がいたとしても、小渕家が譲らない限り、自民党からは立候補できません。群馬のような保守王国で野党から立候補し、当選するのも困難。地元と関係ない地域に「落下傘」として飛び降りるしか道はありません。
自民党は世論の批判を受けて2009年の衆院選でマニフェストに「世襲の原則禁止」を盛り込みましたが、選挙で大敗して野党に転落するとすかさず撤回。「公募」や「予備選」の実施を条件に世襲を認め、実質的には世襲の制限を骨抜きとしました。結果的に今も身内に継がせる例が後を絶ちません。
当たり前すぎてか、最近では議論されることすらなくなりましたが、政界の人材不足を解消するためにも、今一度世襲についてスポットを当ててもいいのかもしれません。
 
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山本洋一

元日本経済新聞記者 1978年名古屋市出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社。政治部、経済部の記者として首相官邸や自民党、外務省、日銀、金融機関などを取材した。2012年に退職し、衆議院議員公設秘書を経て会社役員。地方議会ニュース解説委員なども務める。

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