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副大統領ってそもそも何? 共和党トランプ氏、インディアナ州知事のマイク・ペンス氏を副大統領に指名

2016/8/3

選挙ドットコム編集部

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共和党公認候補として指名を受けたトランプ氏は7月15日、インディアナ州知事を務めるマイク・ペンス氏を副大統領候補として指名しました。今後トランプ氏はペンス氏と共に選挙戦を戦っていくことになります。今回この記事では副大統領の役割とペンス氏の位置付けについて考えたいと思います。
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副大統領は不要? 日本では官房長官

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副大統領は大統領に次ぐ第2位の官職です。しかし、副大統領には明確な職務はありません。上院の議長として、議決が50対50で割れた時に、最後の1票を投じるという役目を負うこともありますが、その働きをするのはごく稀です。基本的には、何らかの理由で大統領が欠けた時にその任務を遂行したり、大統領に就任したりするという役割があるくらいです。かつて初代副大統領ジョン・アダムズは自分の仕事を「人類の作った最も不要な職」と称したとされるほどです。その意味でいうと、副大統領が誰か、というのは実は騒ぐほどのことではないのかもしれません。

日本では、上記の役割を「内閣官房長官」か「副総理」が担います。内閣法9条に基づいた慣行により、総理大臣が欠けた場合には通常官房長官がその責を担いますが、他の大臣に「副総理」として予め任命することで、その責を担わせることも可能です。現在は、麻生太郎財務大臣が副総理についています。このように、日本の副総理は大臣職と兼務であることが前提であり、副総理という役職には序列を意味すること以上のものはありません。
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副大統領が機能した例1 大統領が欠けた場合

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一方で、歴史的には数少ないですが、副大統領が機能した例というのもあります。まず、大統領が死亡・辞任・免職などにより欠けてしまった場合です。このようなケースは戦後2例あります。一つ目は、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された時です。日本でもその時の映像は大きなショックと共に伝えられましたが、アメリカでは当然現職の大統領が暗殺されるという大事件として大きな悲しみを生みました。その時、欠けてしまった大統領職は、憲法の規定により、リンドン・B・ジョンソン副大統領が大統領に昇格するという形で対応されました。彼はケネディ大統領の絶大な人気による後押しを受け、その後を継ぐ形で、当時差別を受けていた黒人の権利を認める公民権法を成立させたり、社会福祉の拡大を進めたりしました。
もう一つの例は、リチャード・M・ニクソン大統領が、自身が関わった事件について議会で虚偽の証言をしたとして辞職に追い込まれた時(ウォーターゲート事件)です。この時は、副大統領だったジェラルド・R・フォードが大統領に就任しました。この時は、ニクソン氏が事件で強い政治不信を生んでしまった後ということもあり、難しい舵取りを迫られました。しかも、フォード氏はニクソン氏などを恩赦するなどにより有権者の顰蹙を買ってしまい、支持率は低迷します。結局、一度も大統領選に勝てないまま、わずか2年半で大統領の職を終えてしまいます。このように、副大統領から大統領になる場合は、自分で選挙に勝たないと前大統領の評価をそのまま引き継いでしまうことになります。

 

 

副大統領が機能した例2 職務を分担する場合

大統領で欠けた場合の他に副大統領が機能する場合としてもう一つ、大統領と副大統領で職務を分担する場合が挙げられます。これは、当初大統領の役割は小さく解釈されていましたが、近年その役割が大きく拡大していることに対応したものです。この例としてビル・クリントン政権で副大統領を務めたアル・ゴアが挙げられます。もともとクリントン氏は一地方の若手州知事に過ぎず、中央政界での経験は皆無でした。そのため、幅広い政策の知識や実践に詳しいゴア氏を指名したとされています。ゴア氏は、日本でも話題になった『不都合な真実』で知られるように環境問題に精通し、それに関する政策アイデアも持っていました。また、クリントン政権が重視した自由貿易拡大については、職の流出への懸念など反発が強かったのですが、ゴア氏がテレビ討論で視聴者を説得し、反発を和らげるという活躍を見せました。このように、ゴア氏は副大統領として前面に出て活躍しました。しかし、ここまで副大統領が前面に出たのは極めて稀です。

 

 

ペンス氏はどんな副大統領になる?

では、ペンス氏は、トランプ氏が大統領になったらどのような副大統領になるのでしょうか。簡単にですが予測したいと思います。
まず、重要なのは、トランプは政治経験を全く持たない、ワシントンのアウトサイダーだということです。しかも、彼のマニフェストには具体的な政策案はほとんどなく、彼自身発言を二転三転させていることから、全く予想できませんでした。
しかし、今回副大統領候補になったペンスは、その意味で非常に予測のしやすい政治家です。下院議員を6期務め、その後インディアナ州知事として活躍したペンス氏は、トランプ氏と対照的なベテランの実務的な政治家です。トランプ氏がどの政策に大きな関心を持つかにもよりますが、関心を持たなかった分野についてはペンスがその実務能力を発揮して対応することでしょう。つまり、これまでで最も強い副大統領になるかもしれません。
この点を広げて言えば、ペンス氏はこれまでのトランプ氏への不安を和らげる役割を持つでしょう。今回、この副大統領候補人事で最も安堵したのは、これまでトランプ氏の善戦に苦しめられた共和党主流派です。ペンスは共和党主流派のリーダーであるポール・ライアン氏の盟友である他、テッド・クルーズ氏に代表される共和党保守派と理念を共有しています。そのため、トランプ氏と比べれば、ペンス氏の方がはるかに取っ付きやすい政治家と言えるでしょう。これまでは不可能と思われていた政策のすり合わせも、ペンス氏を通して可能になるかもしれません。
少なくとも、今回の副大統領選任は選挙戦略的には極めて合理的なものと言えそうです。

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2023年に年間1億PVを突破した国内最大級の政治・選挙ポータルサイト「選挙ドットコム」を運営しています。元地方議員、元選挙プランナー、大手メディアのニュースサイト制作・編集、地方選挙に関する専門紙記者など様々な経験を持つ『選挙好き』な変わった人々が、『選挙をもっとオモシロク』を合言葉に、選挙や政治家に関連するニュース、コラム、インタビューなど、様々なコンテンツを発信していきます。

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