次の参議院議員選挙に向けて、続々と各政党が公約を発表しています。経済政策や憲法の問題など、前回(2014年)の総選挙とあまり変わり映えのない政策が並んでいる印象を受けますが、その中でも特に「給付型奨学金の創設」に関する記述が目立つことは、学生としてもチェックしておきたいところ。年初から若者向けの政策に力を入れることを明言していた民進党は給付型奨学金の創設を公約に明記。一方であまり創設に前向き画ではなかった自民党も、創設に向けて検討を進める旨を明記しました。このように各政党が創設に前向きなのはどのような背景があるのでしょうか。
同奨学金の創設が進んだ社会的背景として、何よりも若者の貧困率が上昇していることがあげられます。日本学生支援機構が運用する貸与型奨学金を受給している学生は、2016年時点で全体の51.3%に上りました。しかもその平均額は288万円。完済までには平均して14年間かかるとされます。単純計算をしても22歳で大学を卒業した人は36歳まで毎年20万円の「借金」の返済に追われることになります。1ヶ月で割れば約1万7000円。毎月これだけお金があれば、映画館で10本も映画を見ることができ、ポールスミスのネクタイなら月に2本新調できます。
しかし、この問題は今に始まったことではなく10年以上前から広く起こっていた問題でした。2004年にも奨学金受給者は4割を超え、10年前の2006年時点では40.9%の受給率を記録していました。しかし、なかなかこの問題に対して政府が本格的に取り組むことはなく、現在まで問題が先送りにされてしまっていたのです。なぜでしょうか。
それは、ひとつには若者向けの政策が、政治家にとっては「票にならなかった」からです。そもそも投票率が低い20代(前回の総選挙では32.4%でした)、しかも大学1・2年生の多くにあたる18,19歳は選挙権すらない。そのような状況下では、やはり政治家は選挙にも積極的で、かつ投票率も高い高齢者向けの政策に重視することがもっぱらだったのです。しかし今年、18歳選挙権の施行を受けて、政治家も若者向けの政策に力を入れるようになりました。今回の動きもそのあらわれのひとつといえるでしょう。
そのような状況の下、給付型奨学金の創設をはじめとする若者向けの奨学金増枠の実現には、若者の政治参加が必要条件となってきます。政治家が今後も若い人向けの政策を推し進めることの必要性を実感する必要があるからです。
若者の間では、どうしても選挙に行くことの無力感を感じることが多いかもしれません。筆者も一票の力に過信することはやはり厳しいと割り切っています。しかし、若者たちが政治に対し関心を持っていることを表明することは、大きな影響力があるものです(アメリカ大統領選挙では、若者の貧困の解決を訴えた候補者が絶大な支持を集めた結果、もう一方の候補者の施策に大きな影響を与えました)。今すぐに、問題が解決することはなく、一票が社会を変えることはなくても、小さな積み重ねが少しずつ政治を前に進めていくのかもしれません。
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