【今時の女子大生が考える】ラップと選挙。何の関係があるのか(後編)

2016/06/16

18歳選挙権・若者と政治

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コラム

寒川倫

前半はこちら:【今時の女子大生が考える】ラップと選挙。何の関係があるのか(前半)

続くMCバトルでは、SALVADORとフィメールラッパーのCHARLESが戦うことに。正直内容的には選挙も政治も全く関係なく、洋服のセンスをdisるSALVADORにCHARLESが「服がダセェだけで殺せると思うなよ!」「気持ちわりぃな、こっち向けよ!」などと掴みかかる勢いある試合が楽しめた。重ねていうが、選挙は全く関係なかった

バチバチのバトルで大盛り上がり

 

「未来の会話を想像してほしい」

そして、先ほどもサイファーやバトルで活躍したPONYのステージ。パワフルで見応えあるものになっていた。
18歳選挙権に関しては、「未来の会話を想像してほしい」「まず一歩自己主張して、投票してだめだったらまた考えればいい」と話す。

サイファーでも大活躍だったPONY

 

次に登場したのは、TSUGUMIとLUNAによる2人組フィメールラッパーユニット・Mary Jane。ちなみにLUNAはMr.マリックの娘である。「選挙に行かなきゃ、ダメ、ゼッタイ!」というキャッチーなフレーズで、客席を沸かせた。

 

LUNA(手前)とTSUGUMI(奥)

舛添都知事もdisられる

そして、度肝を抜かれた「サイプレス上野とロベルト吉野」のライブが始まった! この二人、とにかく盛り上げ方がうまい。「ホテル三日月」のCMソングを流しながら現れ、しょっぱなから「ホテル三日月に行きたいやつ!」と叫んで声を上げさせる。あまりにも面白い。
サイプレス上野は選挙権について、「使うも使わないも自分の自由」「こんなやつに選挙行けって言われても行かねえだろ!」とはっきり言った上で、「何か変わるって信じてるなら、信じてる方向へ行きましょう」と伝えた。自分でどうしたいか考えろと促す彼の姿勢は、その日一番説得力があったと思う。

 

アルタに向かって「サ上とロ吉!」コールをさせるサ上

サ上とロ吉の圧巻のステージの後は、熱狂的ファンの多い鎮座DOPENESSが登場した。DJまで自分でこなす彼は、今回のイベントについて、突然フリースタイルを始める。
ラップと選挙 何の関係があるのか 探す
killより生きる
選挙なんて興味ないよな 誰に入れても一緒って 思い込まされてるかもな

つぶやくように繰り出されるパンチラインが、頭の中に今も残っている。伝えたいことがあるようなないような、奇妙な言葉の並びが気持ちいいライブだった。
また、鎮座DOPENESSは音楽家であり政治家の三宅洋平と友人らしい。ステージの去り際に口にしていたことだが、意外な繋がりである。

 

最後のライブは、二日間の司会進行を務めたUZIがステージに立った。
おなじみの「うぇいよー!」を連発し、フリースタイルダンジョンでも披露していた曲「韻」など、熱のこもったライブであった。その一方で
<血筋 すなわち道筋>
<俺たちの国は俺たちで守るしかない>
など、若干「今言うことではないのでは?」と思う言葉が度々飛び出していたのが引っかかる……。
締めはサイファーだ。登壇したのは、MC☆ニガリa.k.a.赤い稲妻、ACE、輪入道、サイプレス上野、そして鎮座DOPENESS、UZIの6人。この時流されたビートはKEN THE 390「真っ向勝負」で、もう観客は盛り上がるしかなかった!

「ヒーロー」のお題でラップをしたサイプレス上野

 

「メガネ」を引いた鎮座DOPENESS

 

カウンターカルチャーが税金をもらう違和感

今回のイベントを通して、私なりに政治と文化について考えた。
正直、今回の企画は、日本語ラップという文化について深く考えられておらず、「フリースタイルダンジョン」という番組が若者に人気であるというだけで立案されたとしか思えない。ヒップホップはカウンターカルチャーであり、国から税金をもらってラップを披露することに抵抗を示す人が出てくるであろうことを、選挙管理委員会は予測できていなかったのではないだろうか。

ただ、ライブを見ていて実感したのは、ラッパーたちの多くは「昼間の新宿の駅前でラップイベントができる」ことに大きな価値を見出していたことだ。サイプレス上野は、それを「異様な光景」と呼んだ。これまでほとんど世間の話題に上らなかったヒップホップが、今もてはやされているということは、長く最前線に立っていた人ほど新鮮に映ることだろう。

 

政治が文化を利用している時、文化もまた政治を利用するべき

MCバトル人気が出ても、そこから日本語ラップ音源を聴くようになる人が増えなければ、ジャンルの人口はやせ細ってしまう。その点に関しては、多くのラッパーが危機感を示してきた。
今回のTOHYO CYPHERは、まさにMCバトルに興味のある若者に、無料ライブという形で音源を聴かせるまたとない機会であった。こういう言い方が適切かは分からないが、ある種、選挙管理委員会と登場したラッパーたちとの間では、ある程度利害関係の一致に合意があったのではないだろうか。
「政治が文化を利用している時、文化もまた政治を利用するべきなのだ。」
その一方で、メッセージ性、つまり初めに挙げた疑問のうち、後者の「18歳選挙権の広報として効果はあるのか」という点については、正直首をかしげる。ラップの人気が出ているからといって、まだ世間でラップを聴く若者というのはマジョリティーではない。今回のイベントは、ラップに興味がある人は絶対に来るだろうがラップに興味のない人は絶対に来ないイベントだったからだ。日本語ラップがどのようなジャンルで、どのような人がどのように受容しているのかをもっと調べるべきだったと思う。もしそれを全て承知の上でこの企画を実行していたのなら、もうどうしようもないが……。
鎮座DOPENESSが言った通り、ラップと選挙の関係は探しても見つからない。なんというか、「選挙に行こう」とラッパーが言う時、どうしても「言わされてる感」がぬぐえないのだ。(だからこそ「俺は20歳ぐらいになったら選挙に行く」と言い切った17歳のSALVADORに好感を持ったのだが)

何かを伝えたい時、どのような手段を取るか。もっとよく考えてから実行してほしいと心から思う。若者も日本語ラップも、政治に舐められるためにあるわけではないから。

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寒川倫

1995年生まれの大学3年生。イラク戦争の頃にデモに初参加し、現在も一人でデモに出ている。「正しい倫理子」名義でねとらぼなどで執筆中。

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