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国会なんて、ねじれてなかったら意味がない!?(小池みきの下から選挙入門 .18)

2015/10/18

小池みき

小池みき

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選挙研究の情報集約と、研究者の相互協力の推進に努める日本選挙学会理事長・岩渕美克(いわぶちよしかづ)先生インタビュー第二回。どうも、ただ漠然と「選挙は選挙だろ」と思っているだけでは見えてこないナニかがあるようで……。

【小池】
「選挙によって選ぶ相手は違う、どういう代表を選ぶべきなのかについての議論が足りていない……ってどういう意味なんでしょうか?」

【岩渕先生】
「とりあえず、国政選挙の話をしましょうか。衆議院と参議院は、選挙方法が違いますよね。衆議院は小選挙区制と比例代表制、参議院選挙は選挙区制と比例代表制です。なんでそれぞれの選挙方法が違うのかわかりますか?」

【小池】
「えーと……二院制だから? 違う院だから、違う方法で選ばれなきゃいけない、ということでしょうか」

【岩渕先生】
「それ自体は合ってます。じゃ、衆議院と参議院はそれぞれこういう院で、だからこういう選挙制度がとられているんですよ、ってことはわかります?」

【小池】
「えーーー……」

【岩渕先生】
「わからないですよね。衆議院と参議院がそれぞれどんな院であるかということは、実は憲法にも規定されていないんです。日本国憲法第43条1項には、『両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを構成する』としか書いてない。こういう目的があって二院制がとられていて、それぞれの議員はこういう役割をもっている人だから、有権者はこういう風に選挙の時に代表を選んでくださいよ、という啓発というのがまだまだ全然足りていないんです。

ものすごく簡単に説明すると、衆議院と参議院の違いはこんなところだ。

衆議院:定員475人。任期は4年だが、解散選挙があるので実質任期は平均2年半。しょっちゅう選挙で選び直されるため民意が反映されやすい(ということになっている)。「一般大衆の代表が議論する院」だから衆議院。

参議院:定員242人。任期は6年。ただし、6年ごとに全員を一斉に入れ替えるのではなく、3年ごとに半数を改選する。解散選挙がないのでじっくりコトコト審議ができる(ということになっている)。民意が強く反映される衆議院の方が優位にあるため、参議院は「衆議院の議論に参画する院」という位置づけ。

そういえば社会科の授業で習ったなあ、と思う方も多いだろう。しかし私、上記のような説明を読んだり書いたりしてさえ、この二つの違いがあんまり実感できていなかったりする。

【岩渕先生】
「そりゃあ今のニュースとか見ていたら、衆議院と参議院なんて似たようなものにしか思えませんよ。だって今、二院制がちゃんと機能しているかといったらねえ(苦笑)」

【マツダ参謀長】
「まあ……(苦笑)」

【小池】
「お二人だけ苦笑いで通じ合っているわけですが、この記事はとにかく『下から』を重んじている連載なので詳しく説明していただきたいですお願いします」

【岩渕先生】
「そもそも二院制というのは、異なる代表で二回審議するから慎重な議論になるわけですよね。たとえば他国の二院制を見てみると、アメリカには上院・下院があります。下院は連邦の国民の代表。上院は州の代表。イギリスは貴族院と庶民院。もちろんどの国も課題は抱えていますが、まったく違う院が成立しているからこそ、二院制として機能する」

二院制。これも政経の授業で散々覚えさせられる言葉だ。「立法府」の中に、違う選挙制度で選ばれ、独立して活動する二つの「議会」もしくは「議院」が存在する構造のことをいう。

【岩渕先生】
「日本でも、衆参で違う政治理念を持った代表が出て、それぞれが違う視点で議論するのが理想といえば理想なんですよ。だけど今は、同じ政党が衆参両方の選挙に議員を出してるし、どっちもが似通った案を出している。しかも、日本の政治には党議拘束というものがあって、政党が決めたことに党員は逆らえません。その上で衆参ともに与党が多数派なのであれば、もう国会なんて一日で終わらせていただいて結構なんです(笑)。多数決で決まるってだけの話なんだから」

【マツダ参謀長】
「選挙が終わった時点でゲームセットですよね」

【小池】
「あ、そうか、そっくりな院が二つあってもしょうがないんですね……。あれ、でも、衆参で第一党(一番議席を持っている政党)が違っていることを『ねじれ国会』って言いますよね? あれはなんとなく駄目なことなんだと思っていたんですけど」

【岩渕先生】
「ねじれてなかったら二院制なんて何の意味もないよねえ(笑)。というか、二院制ってそもそも何のためのものだっけ、っていう議論なしに、ねじれじゃないほうがいいとか悪いとか言ってもしょうがない」

【小池】
「確かに……そういう風に考えたことがありませんでした」

【岩渕先生】
「衆参の各選挙制度も、両院の存在意義に沿ったものであるべきなんです。この夏に参議院選挙制度が変わって、人口の少ない都道府県がいくつか『合区』されることになりましたけど、これも単に人数合わせで合わせるってだけで、選挙制度の根本的な改革にはまったくなっていない。その辺り、我々選挙研究者からすると忸怩たる想いがありますね。根本の議論を進めるためにも、『こういう人を選ぶための選挙だからこういう選挙制度なんですよ』、ということは、もっと多くの人に知ってもらわなきゃいけないと思っています。それを理解して政治に参加できるかどうかって、結局有権者の身にも影響してくるわけですからね。制度への理解を深めるというのは、そういうことだと思うんですよ」

 

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小池みき

ラ イター・漫画家。1987年生まれ。郷土史本編集、金融会社勤めなどを経てフリー。書籍制作を中心に、文筆とマンガの両方で活動中。手がけた書籍に『百合 のリアル』(牧村朝子著)、『萌えを立体に!』(ミカタン著)など。著書としては、エッセイコミック『同居人の美少女がレズビアンだった件。』がある。名前の通りのラーメン好き。

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