【狛江市長選挙(東京)】 かつて長期政権を敷いた“聖地”で共産党は本当に強いのか?
2016/06/15
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そのような中、若者と政治を結びつける取組みとして、「主権者教育」に注目が集まっています。前回の記事に引き続き、今日は主権者教育の具体的な取り組みの1つである模擬選挙について、事例をレポートします。
2015年9月15日。この日も2ヶ月前の模擬選挙の日と同じようによく晴れた日でした。違うのは、秋も近づき、いくぶん過ごしやすい気温となっている事でしょうか。とはいえ、快晴の日が多いとされる埼玉県。やっぱり、よく晴れる印象を持ちました。
さて、この日は、7月に模擬選挙を行ったクラーク記念国際高等学校さいたまキャンパスにおいて、知事選挙の開票結果を踏まえた振り返りの授業が行われました。様々な方の努力もあり、「政策の比較→投票」を行うスタイルの模擬選挙はだいぶ定着してきました。しかし、選挙後の取り組みについては、まだまだ取り組み事例が限られてしまう状況です。本実践のような実践事例および実践モデルの開発が期待される分野です。
今回の授業の流れを紹介します。本授業は以下のように、模擬選挙の振り返りを通して、選挙を利用した「主権者としての政治への参加方法」を学ぶ取組みとなりました。
1.模擬選挙の結果と実際の選挙結果を比較し、なぜ大きな違いが生じたのかを考える
※模擬投票では、知事選挙において当選した上田知事の得票率に大きな差が生じていました。
2.マニフェストだけでなく、公開討論会の様子や、インターネット上の候補者の演説動画を視聴。それぞれの媒体において、候補者に抱くイメージを検討しました。その結果、媒体ごとに各候補者に抱く印象・評価が異なることを確認し、多面的に情報を集めることの重要性と有効な情報源を伝える。
また、授業の最後には、世代ごとの推定投票者数を伝え、生徒たちの主権者としての政治参加意識を高める取組みを行っていたのも印象的でした。これは、模擬選挙において、生徒たちから「高齢者に向けた政策が多く、自分たちの世代や子育て前世代への政策がなく、選択ができない」との意見が出ていたことに答えた取り組みです。
具体的には、「世代別有権者数×世代別投票率(前回県知事選挙の数値を使用)=世代別推定投票者数」として、世代ごとの推定投票者数を算出するものです。その結果、今回の県知事選挙では、20代の推定投票者数が約97,000人であるのに対し、60代の推定投票者数は約36万人、70代以上の世代の推定投票者数は約44万人と、若者世代に比べて圧倒的な差が生じていることがわかります。加えて、問題提起をした10代後半の世代は投票権すらありません。このような状況において、政治をする側が誰を向いた政策を強く訴えると思う、と問いかけられた時、生徒たちが一様にうなずいていたのが印象的でした。
さて、これらの取組みを通して生徒たちからはどのような反応があったのか。模擬選挙実施直後に生徒たちに行ったアンケート結果を基にご紹介したいと思います。
※アンケート結果を含む模擬選挙の詳しい振り返りはこちらを参照ください。
1つ目の観点は、マニフェストに対する反応です。
・マニフェストの内容が分からないところがいくつかあったが、仕組みや選挙の大切さが分かった。模擬選挙の時は思ったより緊張したが、自分で選べたことがうれしかった。今日のことを生かして選挙当日は(投票に)ぜったいに行きたい。
・昨年度の(衆議院議員選挙での)模擬選挙では、「政策を読んでおいて」と言われても、自分でマニフェストを理解することは難しかったです。今回は周りの人と意見を交換する時間があったためマニフェストを理解したうえで投票できました。
・マニフェストの意味など理解できなかったり、内容が自分の年代と遠くて、選ぶのにとても苦労しました。
2つめは、18歳の投票権に関連したコメントです。
・昨年度の時より、「来年は投票だ」という意識があって、まじめにできた。
・やっぱりマニフェストが分からなかったです。でも、若い人に向けたマニフェストがないということは、若い人の投票率が低いということがわかりました。私はもう18才で投票権をもてるようになったので、もっと政治の勉強もしたいと思いました。
これらの生徒たちの声からは、いくつかの教訓を得ることができます。1つ目は、社会的経験の少ない若年層に向けては、マニフェストなどの政策の内容を解説し、自分たちの生活とのかかわりを伝えるような社会的支援が必要になるであろうことです。そして、その前提として、各候補者を比較するための情報が必要となります。これらの取組みは、一見すると若年層だけに向けたものと捉えられがちですが、他の世代にとっても有効な情報源となりえます。だれにとっても使いやすい「ユニバーサルデザイン」と同じ発想ですね。
2つ目は、模擬選挙の取組みは、少しずつ内容を深めながら繰り返すことで、生徒たちの理解、参加意識が高まるということです。意見としては1つしか紹介していませんが、今回の事例であるクラーク記念国際高等学校では、昨年度の衆議院議員選挙の際にも模擬投票を行っています。その時と比べて、今回の授業ではより積極的に、理由を明確にして投票先を選ぶことができた、といった声が多数みられました。
国政選挙、地方自治体での選挙と、実施対象を限らずに確認していくと、選挙が相応の頻度で行われていることがわかります。ぜひ、無理のない形で、様々な経験の場が生徒たちに提供されていけばと期待されます。
日本の人口構成などを見ても、これからは成果ではなく負担の分配という、より難しい政治的選択が迫られるようになります。これらの難しい選択を前に、無気力や無関心といった逃避的態度となってしまうのではなく、主体的に参画、問題解決に取り組んでいくことができる主権者が増えていくこと期待し、これからも主権者教育の活動を見守り、支援していきたいと思います。
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