書籍:『「子育て」という政治』
著者:猪熊弘子
出版:角川書店
発行:2014.7.10
「待機児童」という言葉が最初に登場したのは、20年近くも前だという。それから日本社会は、相も変わらず少子化が著しい。2014年の合計特殊出生率は1.42で、過去最低を記録した2005年の1.26よりは上昇しているものの、1971年〜74年の第二次ベビーブーム以降、その値は右肩下がりとなっている。子どもの数が減ってきているにもかかわらず、待機児童問題は解消されていない。その謎を詳細な数値と共にひも解くのが『「子育て」という政治』である。
著者は、長年保育や家族の問題を扱ってきたジャーナリストだ。「少子化が進んでいるのに、なぜ保育所に入れない子どもが大勢いるのか?」という問いを、頻繁に尋ねられるという。単純に考えて待機児童が発生するそもそもの原因は、保育所に入所したいと希望する子どもの数に比べて、保育所の定員数が足りないからだ。だから当然、この問題は選挙の公約にもなる。
著者によると、「待機児童の解消」を選挙公約にする候補者は少なくないという。狭義の数字上ではあるが、「待機児童ゼロ」を成し遂げた横浜市の林文子市長が選挙に立ったとき、最大の公約は「待機児童解消」だった。これが、かつては「待機児童数全国ワーストワン」の常連だった横浜市の子育て世代に受け入れられて当選し、林市長はその後も再選を果たしている。
2014年の東京都知事選挙を制した舛添要一知事しかり、先日行われたばかりの埼玉県知事選挙で4選を果たした上田知事しかり。もはや「待機児童」を前提にした保育サービスの充実を抜きにしては、子育て政策は語れない。政策が首長の公約に左右されることを考えると、著者の言うように「子育ては政治に最も近い」ところにあると言えよう。
だが、単に保育所を増やせば良いだけではない。駅の高架下に設けられたプレハブのような園舎で遊び、雨は降らないが陽もささない狭い園庭で子どもの心が豊かに育つとは、到底思えない。子どもの権利を守りながら政策を判断していくのは自治体の長であるから、そのバランス感覚をもった人を選挙で当選させるのが、私たちにできることであると著者は説く。
保育所に入所を希望する子どもは、まだ確実に存在する。これからの社会を担う子どもたちがきちんとした場所で育てられるよう、今後の選挙では子育てに関する公約も注視したい。
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