
7月に行われる都議選に向けて注目される東京都議会が23日、スタートしました。これまでなら「小池百合子知事VS都議会自民党」のバトルに注目が集まりそうなものですが、もはやそんなバトルは見られません。都議会自民党は小池氏に全面追従しているのが現状で、事実上の「オール知事与党」体制になっているとも思われるからです。
都議会の制圧に成功した小池氏は、いよいよ都庁を完全掌握するための総仕上げに入ります。その舞台も整いました。23日に設置された豊洲市場移転に関する百条委員会です。
22日、都議会は全会一致で豊洲市場移転問題の経緯を検証する百条委員会を設置しました。百条委員会は地方自治法100条に基づいた強力な権限を有する委員会です。証言や資料提出を拒否したり、虚偽の証言をすれば、罰金や禁錮刑が科せられます。
平成元年以降、都道府県で設置された百条委員会は計16例ありますが、17例目となる今回の百条委員会は、都政史上、いや、日本の地方自治史上、最も刺激的で衝撃的な展開となることが予想されます。
ポイントはいくつもあります。
まず、証人喚問の対象者として、石原慎太郎元知事が登場します。3月18日から20日に都議会に呼ばれる予定です。
1999年から2012年まで都政のトップとして君臨した石原氏が、豊洲市場移転をめぐる経緯について一体何を語るのか。石原氏しか知り得ない秘密や背景が白日の下にさらされるようなことになれば、多くの関係者がこの問題に巻き込まれる可能性もあり、それだけでもインパクトは大きいです。
今の豊洲市場が建っている土地取得の経緯、背景もポイントです。
豊洲市場が建っている土地は、東京ガスの工場跡地です。土壌には、ガス工場から排出された有害物質が大量にしみ込んでおり、常識的には魚介類を扱う市場に適した土地ではありません。
しかしながら、築地市場から近距離である点や環境・安全対策が十分に行われるメドがついたことから、石原氏の時代に豊洲移転が最終決定しました。もちろん、移転は都議会の議決をもって決定しており、石原氏だけに責任があるわけではありません。
ただ、どういう経緯で東京ガスと話がついたのか、その詳細は明らかになっておらず、都と東京ガスとの交渉経緯は依然として不明な点が多いです。
実は、小池知事はこの交渉経緯にピンポイントで着目しており、23日の百条委員会の設置後、記者団に「豊洲移転の責任より、瑕疵(かし)担保責任の部分だ。ここがきちんとどのような形で進んだのか、議会の審議を見守りたい」と述べています。
瑕疵担保責任とは難しい言葉ですが、簡単にいうと、事前に見つからなかった「欠陥」や「故障」があった場合、売る側が責任を取るという意味です。
2011年、当時の石原都知事と東京ガスが交わした売買契約書などでは、土地を売る側の東京ガスが、土壌汚染の対策費用を負担しないことになっています。これは「瑕疵担保責任の放棄」ですが、小池氏はまさにこの部分の検証が必要だとの認識のようです。これは推測でしかありませんが、小池知事は交渉の中で、不正や不作為、正当ではない、合理的ではない判断があったと踏んでいるはずです。
別の角度からも、今回の百条委員会には注目すべき要素があります。それは、自治体のトップの政治決断の是非が「事件含み」で徹底検証されることです。
これは全国の首長にとっても、ひとごとでありません。民意を得て、賛否が拮抗する中、勇気をもって決断した重要案件やプロジェクトも、後になって大きな問題が生じた場合、その決断をしたトップの責任が追及される。しかも、当時はまったく予測できなかったことであっても、責任を取らなければならない。首長にとっては、まさに戦々恐々の事態です。
一方、小池知事の視点でこの問題をみてみますと、豊洲市場問題に終止符を打つには最高の舞台といえそうです。
世論の熱烈な支持を武器に、わずか半年でオール与党体制を築いた小池氏にとって、豊洲市場問題は数少ないマイナス要因を抱えた案件です。
ただ、この難しい案件さえも、小池氏は過去のトップの責任追及に切り替えることに成功しました。
今後、百条委員会でさまざまな事実が明らかになれば、小池知事の手腕に対し、都民が高い評価を与えるのは間違いありません。当事者は都議会ですが、その手柄を小池知事がもっていくことも容易に想像できます。
7月の都議選に向け、小池知事の快進撃はまだまだ止まりそうにありません。
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